第五十話 東方辺境伯の不可解な断罪2
王城前広場には、多くの観衆が集まっていた。
先日に続いての辺境伯の断罪、そして猟奇的な連続殺人事件。
辺境を蔑む声は、今回もそこかしこで聞こえる。
「辺境の人間はどれだけ残忍なんだ」「野蛮人め。もはや同じ人とも思えん」「辺境など、王国から切り離すべきだ」
俺は複雑な想いでその罵詈雑言を聞いていた。俺も王都の人間として、辺境の人々への差別感情があることは否定できない。彼らが粗野で暴力的な性向があるとも思っている。
しかし、それが誤解であったとしたら? 今回の件も冤罪であったとしたら?
今回の俺は、単純に断罪を楽しみ、罪人を罵ることができない。
そんなことより任務に集中しなければならない。
辺境伯であれ、そのほかの人物であれ、真犯人はきっと断罪の場に現れる。
やがて大きな怒声と歓声が上がった。
断罪台に東方辺境伯が上がってきたのだ。
それに続き、宰相ジークフリートと王太子レオンハルトが登場する。
レオンハルトは観衆の歓声に応えるように手を振り、そして東方辺境伯に向き直る。
「東方辺境伯オットー・リヒトヴァルト。領民連続猟奇殺人により、ここに貴様を断罪する!」
レオンハルトの断罪の宣言に、観客が一斉に怒声を強めた。
「ここからは私にお任せください」
そう言ってジークフリートが前に出る。
「オットー様、あなたは東方辺境伯領内の領民を大量に殺害し、舌を切り取るという蛮行を行いました。そのことに間違いないですか?」
「……間違いありません」
オットーは焦点の定まらないような目で、そう答えた。
観衆がより怒気を強める。「人でなしめ」「辺境が腐っている!」
だが、そこにあるのは、辺境伯の非人間性を非難する声だけで、被害者への同情心は欠片もない。今回は、被害者も辺境の人々であったから殺されたところでどうとも思われない。
観衆は純粋な非難と侮蔑に没頭していた。
「領民を殺害したのは、領土の糧食を保つため、口減らしのためだったのですね?」
「……間違いありません」
「何か他に言いたいことはございませんか?」
「……間違いございません」
「間違いないということは、何か言いたいことがあるということですか?」
「……間違いございません」
「では、仰ってください」
「……間違いございません」
どう考えても人の話を聞いてないだろう、その人。
いや、わかっている。ジークフリートは不毛な問答で時間を使っているだけなのだ。
この間に、俺がスキルで真犯人を見つけて、クローデリアが捕縛するのだ。
腰の石袋から石を取り出し、罪状を「連続殺人犯」に設定する。
「断罪の石投げ!」
俺の手から放たれた石が真犯人を探る……。




