第四十九話 東方辺境伯の不可解な断罪1
「東方の辺境でも連続殺人が発生していてな」
宰相府に訪れた俺たちに、ジークフリートが深刻な顔をして話を始めた。
「東方でも?」
俺はクローデリアと顔を見合わせる。
俺たちの脳裏には、北方辺境伯の断罪の場にいた鉄仮面の男のことが浮かんでいた。
「また手足を切断したり、残虐な殺し方をされているのですか?」
俺はジークフリートに喰いかかるように尋ねた。
「手足は切断されていない。ただ……今回は舌だけが切断されている」
「舌!?」
まったく目的が見えない……。しかし、舌を切り取るという猟奇性を考えると、北方での連続殺人と同一犯だろうか。
——あの鉄仮面の男……
「今回も王都からの訪問者が犠牲になったのですか?」
俺の問いに、ジークフリートは首を振る。
「今回は王都の人間ではなく、領内の民が無差別に殺されているのだ」
「王都の人間ではないのですか……」
となると、北方での猟奇殺人とは別の目的の殺人なのか?
「そもそも北方と違って東方は王都の人間に対して、何というか……卑屈で遠慮がちな傾向があるからな。敬遠しているとも言えるか……」
「犯人の目星はついているのですか?」
ジークフリートが曖昧に頷く。
「東方辺境伯オットー・リヒトヴァルトが自首をしてきた」
「また辺境伯……」
「だが、何か様子がおかしいのだ。ほとんどの質問には、上の空で頷くばかりで、尋問も要領を得んのだ」
「では殺人の目的もはっきりしないのですか?」
「不作で食糧の蓄えが足りないから、領主として口減しをしたと言っている。そのために文字どおり舌を切った、と。それだけははっきりと答えるのだ」
食べさせないために口減らし……
「口減らしって……そんな何人か殺したくらいで大して変わらないじゃないですか……」
「確認できただけでも百人以上殺されている」
俺は思わず絶句する。
それは「殺人」なんてレベルではない。領主による領民の「虐殺」ではないか……。
「……では、断罪をするのですね? 相当に重い罪になりそうですね……」
ジークフリートが頷き、俺のほうに身を乗り出す。
「断罪はもちろん行う。だが、北方辺境伯の件もあるからな……。私は東方辺境伯が何かに操られている可能性も考えておきたいのだ」
再び俺の脳裏に鉄仮面の人物の姿が浮かぶ。
「『断罪結社』の出番ですね」
「そうだ。ユウマが犯人を見つけ出し、必要に応じてクローデリア様に戦闘と捕縛の対応をしていただきたい」
俺とクローデリアは顔を見合わせ頷き合った。




