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【連載版】転生したら断罪の場でヤジを飛ばして石を投げるモブ平民だった  作者: Vou
第三章 「猟奇的な辺境編」

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第四十八話 転生者ユウマ・クスノキとクローデリアの「断罪聖剣」

 再びクローデリアはうちの鍛冶屋に来ていた。もちろん、今度こそ剣を完成させるためだ。


 父がクローデリアの剣を打っている間、俺とクローデリアは話をして時間を潰していた。


「何だか妙な事件でしたね」


「そうね。真犯人は他にいたのに、辺境伯というだけで犯人にされたみたいな……」


「特に北方辺境伯は王都の人間にとっては何というか……特別な差別心がありますよね。何というか、北方は生意気、東方は負け犬、南方は軟弱みたいなイメージがありますね」


 俺の勝手なイメージだけど。


「北方は強く王都にも対抗心があって、東方は王都に従順で卑屈。南方はそもそも領地が極端に弱いってところね」


「王都民にとってはどこも辺境は辺境ですけどね」


「私は辺境だからって差別心はないですけれど」


「えっ!?」


 俺は心底驚いた。王都にいて、辺境差別がない人間がいるなどとは想像したこともなかったのだ。

 だが、クローデリアは王都の人間としても、かなり特殊な感性があるのだろう。こうして俺のようなモブ平民と普通に会話をする上級貴族なんて、お目にかかったこともない。


「辺境の話はやめましょう。気分が悪くなるわ」


「はぁ、そうですか」


「ねえ、ユウマって転生者でしょう? 転生前のことを教えてよ」


 なぜ転生者の転生前の話に興味を持つとは……。王都の奇人では止まらず、この異世界での奇人認定をしてやりたい。


「何が聞きたいのですか?」


「ユウマの転生前は、何という名前だったの?」


「『ユウマ・クスノキ』です」


「ふーん、確かに異世界の名前って感じね」


俺にとっては、こっちが異世界なんだけどね。


「ねえ、でも転生者って普通は勇者とかになるんじゃないの? あのクズ勇者よりも、ユウマのほうがよほど勇者にふさわしいと思うわ」


「買いかぶりすぎですよ。俺は勇者なんて向いていないから、女神様に平凡な人間になることを希望したんです」


「女神様が希望を聞いてくださるのね。ユウマらしいと言えば、ユウマらしいわね」


 そう言って、クローデリアは笑う。


「転生前はどんなジョブだったの?」


 ジョブ……?


「こちらの世界とは文化がまったく違いますから、ジョブの体系もぜんぜん違うんですよね。説明が難しいな……」


 ソフトウェアエンジニアなんて、この異世界じゃまったくない概念だな。


 ……いや、あっ。


「魔道具の動作内容を作るようなジョブですかね」


「え、ユウマが魔道具士?」


「ああ、はい。ジョブ名は違いますけど、魔道具士の、魔道具の、魔法を込める部分だけ作る感じです。道具自体は作りません」


「すごいわね……魔法を魔道具に込めるなんてかなり高位のスキルじゃないの」


「はは……でも、その後、魔道具を自律的に作れる魔道具なんてものが発明されて、俺は用無しになっちゃったんですよ。その魔道具のほうが俺なんかよりよっぽど優秀だったもので」


「そうなの……? 私はいくらすごい魔道具よりも、ユウマが作った魔道具のほうがほしいわ」


「へっ? でも魔道具が作った魔道具のほうが性能もいいし、不具合もないんですよ」


「でも、私にとっては、そこにユウマの温もりがあることが大事なの。そうでないと、使いたいとも思わないわ」


 つくづく変な人だな。そこが面白いのだが。


「俺はこっちの世界に来て良かったと思いますよ。好きな断罪も見物し放題ですし、何よりクローデリア様みたいな方にお会いできましたから」


「え? どういうこと?」


「いや、こんなに高貴でお美しくてお強くて、それなのに俺みたいなやつをちゃんと人として扱ってくれるなんてありえないですよ」


 はにかんだようにクローデリアが微笑む。


「私もユウマが転生してくれて、本当によかったわ。ユウマがいなかったらもうこの世にはいないし……人生にも、この世界にも希望が持てるようになれた」


 俺も何だか照れてしまう。


「できましたよ!」


 空気読めや、クソ親父が! いい雰囲気だったのに。


 父がクローデリアの剣を仕上げたようだ。断罪見物イベントがなければ、父は仕事が早いのだ。


 その手には見事な一振りの剣ができていた。先日のダンジョンで手に入れた断罪聖獣の角を素材として使用している。

 父は腕も確かだ。空気読めないのだけ何とかしろや。


 クローデリアが剣を受け取る。


「見事ね。今まで持ったどの剣よりも高い性能を感じるわ」


 「剣姫」ともなれば、握っただけで剣の性能もわかるのか。


「これ以上強くなってどうするんですか?」


「どんな状況でも、あなたを絶対に守れるようになりたいの」


「……それはありがとうございます」


「ねえ、ユウマ。『ユウマ・クスノキ』って銘を彫ってくれないかしら」


「いや、でも父が打った剣ですよ」


「じゃあ、あなたも何かして」


「……じゃあ、祈りを込めます」


 俺はクローデリアから剣を受け取り、柄を握る。ずしりと重い。


 ——クローデリア様を守り、ついでに俺も守ってください。……愛を込めて。なんちゃって。


「何を祈ってくれたの?」


「……クローデリア様をしっかり守ってくれるようにと」


「ふふ、ありがとう」


「何で『ユウマ・クスノキ』なんですか? 俺はこの世界では『ユウマ・クレイ』ですよ」


「……あなたと手に入れた素材で作られたこの剣を、世界で唯一のものにしたいの。私だけしか知らない、あなたの名前で」



 そうして、クローデリアの「断罪聖剣」の刀身の根元に、俺の転生前の名前「ユウマ・クスノキ」の銘が彫られた。


 クローデリアはとても愛おしそうに剣を眺めるので、父と俺はそのクローデリアの幸せそうな姿に見惚れていた。



「ユウマ・クレイはいるか!?」


 どいつもこいつも空気読まねえな! いい雰囲気だったのに。


 見ると、見るからに役人っぽいのが、鍛冶屋の入口に立っていた。


「ジークフリート様から、宰相府にまで来るようにとのご指示だ」


 ジークフリートかよ。

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