第四十七話 北方辺境伯の不可解な断罪(後編)
俺の「断罪の石投げ」の石が当たった人物は、断罪台のずっと右横の観衆の中にいた何者かだった。
フード付きのマントを被っており、男女の性別もわからない。
その人物は、石が当たったことで後ろを振り返る。
顔は……鉄仮面をかぶっている。
「断罪の使徒」X?
……いや、それは俺だ。あれは俺じゃない。
「どういうこと?」
俺の石投げを見ていたクローデリアも、不審そうに呟く。
「連続猟奇殺人犯が別にいるようです。石が当たったあの人物が……あっ」
クローデリアと顔を見合わせた一瞬で、その人物はすでに移動していて、見失ってしまった。
「どうしましょう。このままあの辺境伯が冤罪になってしまったら……」
「辺境」の人間とはいえ、やはり冤罪は気持ちのいいものではない。
「もう一度スキルを使ってみたら?」
そうか。まだ鉄仮面の真犯人は近くにいるかもしれない。
俺は頷き、スキルを発動する。
「断罪の石投げ!」
俺の手から放たれた石は断罪台に向かおうとするが、空中でUターンし、俺の頭にぶつかった。
痛い。
鉄仮面かぶっておけばよかった。
「もう逃げられましたね……」
「ローゼンヴァルト様の冤罪が確定したわね」
えっ、そっち?
断罪台上では、宰相ジークフリートではなく、王太子レオンハルトが量刑を言い渡すところだった。
「ローゼンヴァルト辺境伯。貴様が罪を認めるまで投獄し、拷問を行う。少しでも犠牲者の痛みを知るがいい」
観衆が沸き、ローゼンヴァルトを非難する。犯行そのものの非難だけでなく、「辺境」を侮辱するような声も多く混じっていた。
※
断罪が終了してしまい、クローデリアと俺は急ぎジークフリートのもとに向かった。
状況の報告をしようとすると、ジークフリートは場所を変えようと提案し、俺たちは宰相府の執務室に移動した。
「不可解だな」
ジークフリートが俺の報告を聞いてからの第一声だった。
「不可解ですが、ローゼンヴァルト様が連続猟奇殺人犯でないのは間違いありません」
「もう少し罪状を試さなかったのか? 『連続』『猟奇』『殺人』としてしまうと、すべてに携わっていないと該当しないだろう。例えば、『殺人』や『遺体損壊』などで罪状設定しておけば、一部の犯行には関わっていたかどうかわかったんじゃないのか?」
そんなこと言われても、最初に「連続猟奇殺人」だと言ったのは、あんたとあのアホ王太子だろうが……
「ですが、『連続猟奇殺人』で該当した犯人が断罪の場にいたのです……。仮にローゼンヴァルト様が一部に関わっていたとしても、主犯ではないはずです」
クローデリアがフォローする。
そう、俺もそれが言いたかった。
「そうですね……」
ジークフリートが考え込む。
「正直なところ、私も少し不審に思っている点がなくもない。幸いすぐに死罪となることはなかったので、調べを進めるとしましょう」




