第四十三話 王国のこれから
「今回もご苦労だったな」
俺たちを労う言葉とは裏腹に、ジークフリートは少し不機嫌そうに言った。
聖女エリシアの断罪の後、俺とクローデリアは宰相府に呼ばれたのだった。もちろん、ギルマスが反断罪戦線の協力者であったことも伝えた。
「組織の根絶には時間がかかりそうだな」
組織が無くなったところで、反断罪戦線の精神は消えないのではないか。エリシアの最後の言葉がそれを示唆していたように。
「冒険者ギルドはこれからどうなってしまうのでしょうか? 解散ですかね?」
解散になれば、俺の冒険者ライセンスも失効で、角が立たずに冒険者を辞められそうだ。
「ギルドマスターの後任が見つかるまでは、王政府で直接管理することになるだろうな」
くそっ。冒険者ギルドなんて潰せばいいのに。
「冒険者ギルドが業務を止めてしまったら、魔物討伐だけではなくて、希少な薬草採取やアイテム収集も止まってしまうから、王国の産業に大打撃になってしまうのよ」
クローデリアが俺の心を見透かしたかのように、冒険者ギルドの重要性を説く。
が、そんなものは俺にとってはどうでもいい。
「俺はクローデリア様さえいれば何でもいいんですけれど」
「えっ……?」
俺の不用意な発言にクローデリアが顔を赤らめるので、俺は慌ててしまう。
「あ、いえ、変な意味ではなく、クローデリア様は俺のことを守ってくれるので魔物は怖くないですし、希少な薬草もアイテムも要りませんから」
「おまえがよくても、困る人はたくさんいるんだから、冒険者ギルドは必要なのだ。おまえも王政府の人間の自覚を持って、王国民全体のことを考えないといけないぞ」
ジークフリートが相変わらず不機嫌そうに説教を垂れてくる。こっちはやりたくてやってるんじゃねえんですけど。
「エリシア様はこれからどうなるんですか?」
「断罪の場で言ったとおりだ。王城の地下牢に入って、今回の混乱の反省し、償ってもらう。死罪にはしない」
不機嫌な理由は断罪に妥協せざるを得なかったためか。
あるいは「聖女」に「断罪」そのものを否定されたためか。
「聖教会は大変ですね……」
「ああ、大司教を失い、聖女も拘束されることになったからな。冒険者ギルドに加え、聖教会まで王政府が面倒を見なければならないとなると、忙しくてかなわん」
「まるで皆が王政府に嫌がらせをしているみたいですね」
俺がそう言うと、ジークフリートがきつく睨みつけてくる。
これ以上はやめておこう。
「逆に王政府がすべてを牛耳ることにもなるわね」
クローデリア……それもたぶん余計なひと言ではないか?
「そうなりますね。王国として、それで健全でいられるとは思いません。王政府と聖教会、そして冒険者ギルドはお互いを監視し合う関係であるべきです」
地雷ではなかったか。さすが、クローデリア。ジークフリートもたまにはまともなことを言う。
「王国がおかしなことにならなければいいですけれど……」
クローデリアがそう呟いた。




