第四十四話 それはもう言わないで
宰相府を後にし、俺とクローデリアは帰路に着く。
「ギルマスが反断罪戦線に協力していたということは、冒険者の中にも反断罪戦線に加担していた者がいるんですかね?」
俺はふと思いついたことを口にする。
「そうね。ありえなくはないわね」
「もしかしたら冒険者は断罪が嫌いなんですか?」
「そうかもしれないわね」
ずいぶん、気のない返事だな。
「冒険者たちと王国騎士団が戦ったらどちらが勝つんですかね?」
「魔物討伐なら冒険者のほうが得意でしょうけれど、対人の集団戦なら王国騎士団のほうが強いでしょうね」
お、ちょっとまともな反応が返ってきた。
「ガルドたちも皆、生きていてよかったですね」
「そうね」
そこで、クローデリアがため息をつく。
「私もまだまだだわ。ユウマを守るつもりが、結局いつも助けられてしまって……」
「いや、だから俺のほうがよっぽどクローデリア様に助けられていますって」
クローデリアが立ち止まり、俺を見る。
そして、少し躊躇ってから口を開く。
「明日、ユウマのおうちに伺ってもいいかしら? 新しい武器を作ってほしいの。素材ならたくさんあるから」
「はい、もちろん。父も『剣姫』様から仕事をいただけるとなれば喜びますよ」
クローデリアは小さく微笑む。
しかし、まだ何かを言いたそうにしている。
「……まだ何か?」
そう尋ねると、またじっと俺の目を真剣に見てくるので、どきりとしてしまう。
「ユウマ……」
「な、何ですか?」
「……あなたのことを好きな公爵令嬢はいると思うわ」
「……何の話ですか?」
「『断罪霊獣』と戦ったとき、『公爵令嬢がどうのこうの』って……」
その話はだめだ。また恥死してしまう。
「いやぁ、何でしょうね? スキルのことは理解できていないことが多くて」
「あなたのスキルに間違いがあることはないわ」
「私の気持ちを知りたい?」
「いえ、大丈夫です」
「私はユウマのことを……」
「いや、やめてください! もし本当のことがわかってしまったら、スキルの効果が無くなってしまう可能性があるので! 次に強力な魔物が現れたときにクローデリア様を守れなくなってしまいます。いや、モブ平民ごときがありもしない望みを持つからこそ、恥ずかしさで高い効果が出るんです!」
「でも……」
「いいからやめてぇ」
俺は顔を手で覆って走りだして逃げる。鉄仮面を被りたい。
公爵令嬢とモブ平民が、いつまでもこんな関係でいられるわけがない。それでも、こうしてただ一緒にいられる、このままの関係を少しでも長く続けていたい。
そんな俺の想いなど構わず、クローデリアと俺の関係を揺さぶるような騒動がまもなく始まろうとしていた。それは王国にも新たな暗い影を差すのだった。
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