第三十九話 ダンジョンの断罪7
【スキル獲得:断罪の自省】【効果:魔物に必中……自省した分だけ相手に無属性大ダメージ。自省によるダメージ量は、断罪スキルによる自分への物理的・精神的ダメージに比例する】
この状況でスキル獲得? 対魔物の攻撃スキル?
いや、この状況で得たスキルだからこそ、状況を打開できるものなのでは?
クローデリアを救うためにはやるしかない。
「クローデリア様、俺を信じてください」
「え? 何をする気なの?」
「断罪の自省」
……何も起こらない。
自省していないからね。
「断罪の石投げ」
俺は石を投げる。罪状を「痴漢」に設定したので、絶対に犯人などいない。
石は空中でUターンし、俺に向かって飛んできて、鉄仮面にヒットした。
頭には直接当たらないが、衝撃は伝わった。痛みもほとんどない。ようやく鉄仮面が役に立った。
それと同時に、コンデム・ビーストも衝撃を受けたように振動し、動きが鈍る。ダメージが通ったか?
するとコンデム・ビーストの角から文字が浮き上がってくる。
【被告人:ユウマ・クレイ】【罪状:無罪】【量刑:無し】
そうか……。俺が意図して攻撃しているのではなく、むしろ自省しているだけだから、断罪の対象にならないのか。
俺は無罪判決となったため、ターゲットはいまだクローデリアとなっており、コンデム・ビーストは彼女の方に再び向き直る。
クローデリアが疲弊する前にダメージを与え続ければいける……。が、小石での自省程度で十分なダメージが与えられているとは思えない。俺が死ぬくらいのダメージでないと倒せないか……。
仕方ない……。俺は腰の石袋からミスリルの石を探す。
「ユウマ、バカなことは考えないで。死んだら殺すわよ!」
俺は何回死ぬんですかね? そんなことを言われても……。
しかし、俺の頭には、もう一つの嫌な作戦が浮かび上がっていた。
自省によるダメージ量の算出は、物理ダメージだけでなく、精神ダメージでも有効だということ——つまり、「断罪の罵声」での自分への罵声も有効だと示唆しているということだ。「自省」というからには、精神ダメージのほうがよりダメージ量が増す気すらした。
しかし……クローデリアがいる前であれをやるのか?
「ユウマ、自分を犠牲にするくらいなら逃げて……」
……クローデリアを守るためにはやるしかない。
「『断罪の罵声』! 人が断罪されるのが好物ってどんだけクズ野郎なんだ、下衆モブ平民が!」
コンデム・ビーストが衝撃で震動する。やはり石投げより、ダメージがありそうだ。このまま続けていくぞ。
「『断罪の罵声』! いつも女に守られてへこへこしてんじゃねえ、軟弱モブ平民が!」
さらに強い衝撃が走る。コンデム・ビーストの動きはさらに鈍る。よし、このまま押し切るぞ。
「『断罪の罵声』! 奴隷って言われて喜んでんじゃねえ、変態モブ平民が!」
くっ、俺への精神ダメージもかなり大きいが……。かなり効いている。倒れてくれ……!
「いったい何をしているの……?」
クローデリアが俺の奇行が気になってきたようだ。
ダメージは蓄積できているようだが、まだコンデム・ビーストは倒れない。やはり恥死レベルの自省でなければ致死レベルのダメージにはならないか?
「俺の攻撃スキルです。クローデリア様にも悪影響が出る可能性があるので、できれば耳を塞いでください!」
「え?」
「『断罪の罵声』! 公爵令嬢がモブ平民を好きになるわけないだろう、勘違いキモ平民が!」
ぐはっ!
俺の限りない精神的な恥辱とともに、コンデム・ビーストが今までにない激しい震動を起こし、動きを完全に止める。だが……倒れないか……。これ以上、自省することなど俺にあるのか?
……もう物理的に死ぬしかないのか。
「え……どういうこと? 何を言っているの、ユウマ?」
え、クローデリア、耳塞いでなかったの!?
恥ずかしい! 死ぬー!
その瞬間、コンデム・ビーストがさらに急激に震動し、破裂した。




