第三十三話 ダンジョンの断罪1
断罪迷宮デスホールはただ山肌に穴が空いたような洞窟のようなダンジョンではなかった。
巨大な石門を地面に埋めたような入口は、確かに古代の遺構を思わせた。もはや罠の匂いしかしない。きっと古代人が一生懸命創意工夫して侵入者を撃退するためのトラップがそこかしこに潜んでいるに違いない。
「トラップの匂いがぷんぷんするわ。あんたら、あたしがいてよかったな」
リネットが得意げな顔で言う。
「そのための『斥候』でしょう? 戦闘では大して役に立たないのだから、大きな顔はしないでほしいわ」
そのリネットにノクティアが言う。もともと違うパーティーだから対抗意識が強いのかもしれない。
「ところでエックスはどんな戦闘スキルがあるんだ?」
……
「『断罪処刑人』というからには一撃必殺系の強力なスキルか?」
……あ、俺か。いい加減エックスと呼ばれるのも慣れないといけないな。
「『必殺』というか『必中』スキルだな。遠隔攻撃系だ」
「おおっ」と、パーティーメンバーから小さな驚嘆の声が漏れる。
「『必中』とはすごいな。そんなスキルは聞いたことがない。確かに『断罪処刑人』というだけはある」
ガルドが俺を見る目が変わった。侮ったままでいてくれたほうがよいのですが。
「他にも隠しているスキルがあるのではないか? 一時的とはいえ、命を預け合うのだ。可能な限り教えておいてほしいね」
ノクティアが続けて尋ねてくる。
「……精神攻撃系?」
「ほう、精神ダメージ系か……それもまたレアなスキルだな。ぜひ見てみたいものだ」
罵声を浴びせるだけなんだけどね。
「発動には条件があるので、俺はいざというときにだけ戦闘参加をさせてもらおう」
なるべく戦闘は避けたい。
「発動条件とは何だ?」
「『悪』と認められた相手にだけ発動するのだ」
「なるほど……『断罪』スキルというわけか。対人では人を選ぶかもしれんが、魔物相手なら問題ないだろうな。あいつらは全部『悪』だ」
「そ、そんなことはない! 魔物にだって、いいやつはいるはずだ。人を襲うから『悪』だというなら、魔物を襲う人もすべからく『悪』になってしまうではないか」
突然熱弁を始める俺に何だか皆引いている。戦闘に参加したくない熱意がほとばしってしまった。
「攻撃は私が担当するわ。ユウマ……エックスにはいざというときだけに頼ってくださる?」
クローデリアが俺をかばうが、本当にもう本名言うのやめて。
「まあ、『剣姫』がいれば確かに他の火力は不要か」
ガルドが言う。
そうです。俺の活躍の必要はないので、クローデリアとガルドの後ろで隠れさせていただきます。
「じゃあ、行きましょう」
クローデリアが号令をかけ、俺たちはいよいよ断罪迷宮デスホールの門に向かった。
その直後、一人目の犠牲者が出ることを、このときはまったく想像もしていなかった。




