第三十二話 鉄仮面の男
翌日、さっそく断罪迷宮デスホールの攻略パーティーのメンバーが顔を合わせた。
まずは「斥候」のリネット。小柄で細身、茶色の短髪に猫のような鋭い目をした少女のような女。革鎧に短剣を複数下げ、何やらいたずらっぽい笑みを浮かべている。
次に「重戦士」ガルド。大柄で肩幅が広く、短く刈った黒髪に無精髭を生やした熊のような男だ。重そうな鉄鎧をまとって手には大盾、背中には戦斧を背負っている。
三人目は「神官」セシル。金髪をきっちり整えた、細身で背の高い男。神官服を身につけ、静かな青色の瞳には近寄りがたい冷たさがあった。
四人目に「魔導士」ノクティア。長い黒髪を後ろでゆるく束ねた、痩せ型の女だ。黒っぽいローブに杖を手にし、整った顔立ちで、その切れ長の目は鋭かった。
いずれも宰相ジークフリートが冒険者ギルドのギルマスに直接打診して推薦してもらったメンバーだ。いずれも実績のあるA級パーティーのメンバーとのことだった。
この四人に加え、「剣姫」クローデリア、そして最後の一人——
「その男は何だ?」
重戦士ガルドがぶっきらぼうな口調でジークフリートに尋ねた。宰相に向かって敬語も使えないのか、冒険者ってやつは。
「彼は『断罪の使徒』Xだ」
「……こいつが?」
あれ、「断罪の使徒」のことを知っているんですか?
「対人では相当やるとは聞いているが、冒険者としてはどうなんだ? ジョブは何だ?」
対人もやらねえよ。
「ジョブは何だ、エックス?」
……あ、俺か。エックスなんて呼ばれ慣れてないから気づくのが遅れたが、俺に振りやがったか、ジークフリートめ。
「ジョブは『断罪ごにょごにょ人』だ」
恥ずかしいので、「断罪見物人」なんてはっきり言えない。
「何だって?」
「『断罪処刑人』ね。かなりのレアジョブだわ」
魔導士ノクティアが割り込んできた。「見物人」のはずがえらく強そうなジョブチェンジが発生したな。
「レアジョブも何も聞いたこともねえぞ」
ガルドが言うが、俺も聞いたことはない。
「何にしろ、『剣姫』クローデリアに加え、『紅蓮の狼』のガルドとノクティア、それに『蒼の雷槍』のセシルにこのあたし、リネットっていう錚々たるメンバーと並ぶんや。間違いなく実力者やろ」
斥候リネットがフォローするが、無駄にハードルを上げんな。あと公爵令嬢には「様」をつけろ。
「私は信用しませんよ」
それまで黙っていた神官セシルも口を開く。何だかいけ好かないが、ハードルを下げてくれてありがとう。
「それにしても、表情が見えんから何を考えてるのかわからんな。声もくぐもって聞こえにくい。本当に大丈夫なのか?」
ガルドが言う。
そう、俺は冒険に備え、そして今後のため、父に作ってもらった鉄仮面の着用を始めたのだ。これさえあれば、スキルで石が自分に戻ってこようと、ダメージはない。それに「断罪の使徒」Xの通り名により、正体もばれずに目立たず済むというわけだ。
「しかしそんな鉄仮面で王都を歩かれたら目立ってかなわんな」
……たとえ目立とうが、正体がわからなければ目立ってないのと同じだ。俺は「ユウマ・クレイ」ではなく、「断罪の使徒」Xだ。
「じゃあ、ユウマ、準備はいいわね。行きましょう」
クローデリア……
「ユウマが誰かは存じませんが、行きましょう」
「あ、そうだった。ごめんね、エックス」
鉄仮面により謎を深めた「断罪の使徒」Xの冒険譚が始まる——
……そして早く終わりたい。




