第三十四話 ダンジョンの断罪2
「中の様子を探ってくる」と、先陣を切って「斥候」リネットが門をくぐると、くぐった瞬間にその姿が消えた。
「転送された?」
ノクティアが言う。
「転送って……」
ガルドが呟く。
「この門自体がトラップだったってこと」
マジか……
「行くしかないでしょ。ガルド、次は『盾役』のあんたが行きなさい。リネットと、後続の私たちを守れるように」
ノクティアがガルドに指示を出す。おそらく元のパーティーでも彼女がリーダー役なのだろう。
「ああ、俺が守ってやるから、安心してついてこい」
そう言い残し、ガルドが門に入ると、やはり姿が消えた。
続けてノクティア、そしてセシルが門をくぐり、それぞれ姿を消した。
「断罪の刃」の俺たち二人以外の四人は躊躇いなく門に入って転送されてしまったが、俺には大きな懸念があった。
——転送されるということは、それぞれがダンジョンの異なる地点に転送されるのではないか? だからこそのトラップではないのか。
その懸念が俺の中ですでに大きなものになっていた。
「クローデリア様……」
「何? どうしたの、ユウマ?」
「ユウマじゃなくてエックスですが……もう他のメンバーはいないからいいか。いや、それはいいんですが。……あの……手をつながせていただいてもよいですかね?」
クローデリアとはぐれたら、俺には死あるのみだ。
「あら。ユウマからそんなことを言ってくれるなんて嬉しいわね。もちろん、いいわよ。いえ、むしろ何も言わずに突然私の手を取るシチュエーションのほうが私の好みよ」
何を言っているのかわからんが、とりあえずクローデリアの手を握った。
「もう……せっかちね」
「絶対離さないでくださいね」
「もちろんよ。ユウマも絶対に私を離さないでね」
何かズレた会話になっているのはなぜだろう……。
ともかくも、聖女エリシア奪還のため、俺たちは進むしかない。
クローデリアの手を固く握り、俺たちは門に入る。
クローデリアさん、顔を赤らめていないで真面目にやってください。危険なダンジョンなんですから。
※
門をくぐると、俺たちはダンジョンの奥と思われる場所に転送された。
クローデリアの手の感触はしっかりとある。とりあえず一安心。
さらに朗報は、先に転送されたパーティーメンバーも同じ場所にいたのだ。
パーティーをバラバラにするのが目的ではなく、引き返せなくすることが目的のトラップだったのだろう。
……あれ?
ダンジョン内の薄暗い魔導灯に照らされ、メンバーは確かにいたのだが……俺たちに背を向けた格好で、神官セシル、魔導士ノクティア、そして重戦士ガルドが立っていた。そこに斥候リネットがいない。俺たちを待たずに偵察に出てしまったのだろうか。
そこに立っていた三人は、それぞれ下のほうに視線を向けているようだった。
「おい、どうした?」
俺は後ろから声をかけるが、誰もこちらを振り向かない。
俺はクローデリアの手を握ったまま、その手を引いて彼らのほうに近づく。
彼らの視線の先に、何かが倒れていた。
「死んでいる……?」
クローデリアが小さく呟いた。
倒れていたのは、斥候のリネットだった。
うつ伏せになった背中から石槍のようなものが飛び出ており、体の下には血だまりができていた。




