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【連載版】転生したら断罪の場でヤジを飛ばして石を投げるモブ平民だった  作者: Vou
第二章 反断罪戦線編

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第二十七話 困ったら断罪(後編)

 翌朝、王城前広場の断罪台の周囲にはすでに多くの観衆が集まっていた。


 ただ、観衆たちは戸惑っていた。

 つい昨日まで、王都を救った一人として讃えられていた聖女が断罪台に立たされるというのだ。彼らには前回、大司教の奸計のためとはいえ、誤って本物の聖女を非難してしまった後ろめたさもあるだろう。


 純然たる悪人を待ち望むいつもの熱はそこになかった。



 観衆がざわつき始めた。


 聖女エリシアが断罪台に登場し、王太子レオンハルトと宰相ジークフリートが続いた。


 断罪の開会の挨拶とばかりに、王太子レオンハルトが口を開く。


「聖女エリシア・ブランシェ、ここにおまえとの婚約を破棄する」


 エリシアはレオンハルトを無視し、ジークフリートに向き直る。もういい加減レオンハルトの茶番はいらないだろ。


「これは一体どういうことですか、ジークフリート様」


 エリシアはジークフリートに詰め寄る。


「おい、婚約破棄だぞ。聖女よ、どうなんだ」


 レオンハルトが食い下がる。


「はい、婚約破棄でも何でも勝手にしてください。私はジークフリート様にお伺いしたいのです」


「くっ、婚約破棄された途端、王太子から宰相に乗り換えようというのか……?」


 レオンハルト……鬱陶しいな。退場してくれないかな。


「レオンハルト様、お下がりください。私は聖女エリシアに婚約ではなく、断罪を申し入れる者です」


 ジークフリートがレオンハルトを制し、本題に話を引き戻した。


「あなたはクローデリア・レーヴェンハイト公爵令嬢の誘拐に加担した。その断罪です」


 観衆のどよめきが大きくなった。「剣姫」クローデリアは王都を救ったもう一人の英雄だ。

 その「剣姫」と「聖女」が対立関係にあるとすれば、王都の民衆は混乱するだろう。それも、「聖女」のほうが「剣姫」に害をなしたというのだ。

 そして、尋問を行うジークフリートも、政治手腕と大きな事件を的確に断罪してきた実績があり、王国民の信頼が厚い宰相だ。


 王国の繁栄を担うべき「聖女」と「宰相」もまた対立してしまっている……


「これは何事?」


 隣のクローデリアが呟いた。

 

 うん?


「……クローデリア様!?」


「ユウマ、なぜエリシアが断罪台に立っているの?」


「いや、その前にクローデリア様が何でここにいらっしゃるんですか?」


「え? 私? 私は断罪があるって聞いたから、ユウマがいるかと思って来たのよ」


「俺もずっとクローデリア様を探していたんですよ」


「あら、たった一日会えなかっただけで寂しくなっちゃったの?」


 顔を赤らめて、いたずらっぽくしている場合じゃないんですけど。


「エリシア様がクローデリア様の誘拐に関わったことになっているんですよ」


 俺は非難気味にクローデリアに言った。


「え? そうなの?」


「違うんですか?」


「うーん、まあ、まったくの的外れではないけれど……」


「じゃあ、エリシア様は断罪されていいんですか?」


「いえ、止めましょう」


 クローデリアと俺が慌てて人混みをかき分け断罪台に近づこうとすると、断罪台に、別の黒い影がするすると近づいた。

 するとあっという間に、聖女エリシアの後ろに立ち、剣を首もとに突きつけた。


 観衆から悲鳴が上がる。


 道化師のような仮面をつけたその人物が口を開く。


「我々は『(アンチ・)断罪(ヴァーティクト)戦線(・フロント)』——自由と博愛を掲げ、王政府を打倒する組織だ。聖女は断罪させない!」


 ジークフリートが後ずさる。あの人は知力に全振りしているから、接近戦は無理だ。

 周囲の騎士たちも、断罪が確定していない聖女エリシアを人質に取られた以上、うかつに手が出せない状況だった。


「我々は『断罪』を許さない。断罪を見せ物にし、都合よく罪を着せる王政府も、それを嬉々として楽しむおまえら観衆どもも許さん」


 危険を察した観衆が断罪台を離れ、走って逃げ始めた。

 その群れに仮面の人物は入り込み、一緒に走り去っていった。


 クローデリアも俺も、仮面の人物を見失ってしまった。


「ユウマ、スキルを!」


 俺は罪状を「聖女誘拐犯」に設定し、スキルを発動した。


断罪の石投げ(コンデム・ストーン)!」


 石は鋭い弾道を描いて逃げる群衆の頭上を飛び、追い越していき、着弾した。すでにかなり遠くまで進んでしまっている。


「ぜんぜん火力が足りていないじゃない! それじゃあ足止めにもならないわ」


 クローデリアが俺を非難するように言うが、俺のスキルは攻撃スキルではない。


 俺たちはなすすべなく、その場に立ち尽くすだけだった。

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