25 危ないアダリアと危険な濁流 (微エロ挿絵有)
結局、俺はアダリアが満足するまで頭を撫でられ続けた。
・・・というか、途中からアダリアは俺を抱きしめながら頭を撫でる始末だった。
まあ、それでアダリアの気持ちが落ち着くならいいだろう。
更に言うなら、俺としてもアダリアと密着するのは嬉しい事に違いはない。
なんというか、アダリアの体は甘い香りがするのだ。
別にシャンプーや香水を使っているわけでもないので、これはアダリア特有の香りなのだろう。
そんな甘い香りのする美少女に抱き着かれて不快に感じる男がいるだろうか?
いや、居ない、居るはずがない。
一方で、当のアダリアは俺の悶々とした考えを知ってか知らずか、
「ふんふふふ~~~ん♪」
と、鼻歌を歌いながら森の中を元気よく歩いている。
どうやら先ほどのナデナデが相当に嬉しかったようで、アダリアの耳は常にピクンピクンと上下に動いているし、何よりも明らかに足取りが軽い。
その証拠に、アダリアは大きな岩も軽快にジャンプして乗り越えてしまうのだ。
そして岩の上にしゃがむと、
「ケン坊、私の手を掴んで?」
と前かがみで手を伸ばしてくる。
こうして箇条書きにするとアダリアは頼りになる存在ではあるのだが、同時に危うい存在でもある。
何故ならアダリアの着ている服は一見してボロいので、彼女が動くたびに「中身」が色々と見えてしまう・・・。
つまり、アダリアがジャンプしたり、今みたいに前かがみになったりすると服の中がハッキリと見えてしまうのだ。
特にスカートが問題だ。
素材が原因なのか知らないが、アダリアのスカートは少し強い風が吹いたら簡単にめくれてしまうのだ。
更に言うなら、彼女は下着を着ていない。
そういう文化なのか金銭的な問題なのか知らないが、下着を身に着けないアダリアという存在は俺にとって極めて危うい存在だ。
せめて、せめて、風でスカートがめくれたら、
「キャッ!」
とか言ってスカートを押さえてくれるなら、目のやり場に困ることはない。
だが、恐らくはエルフ特有の性欲の無さが原因なのだろうが、アダリアは性的な羞恥心が薄いのだ。
その為、基本的にアダリアはスカートがめくれても、どこ吹く風とばかりに平然としている。
そんなアダリアが岩に手をつきながら前屈みになったら、何が見えるだろうか?
そりゃあ、アダリアの服の下に隠れる綺麗で柔らかそうな双子の山が視界に入ってしまうのも、仕方ないではないか。
(うぐっ!! 駄目だ! この光景は刺激が強すぎる!)
その瞬間、俺は視線を地面に向けた。
しかしアダリアは、
「ケン坊? どうして下を向いているの?
お腹でも痛いの?」
と、岩から飛び降りて俺の腹を撫で始める。
すると不思議なことに、アダリアはニマニマと意味深な笑みを浮かべると、
「ねえねえ、ケン坊~~~? ふふふふふふ。
どうしたの~~~??
どこか痛い所でもあるの~~??」
と、わざわざ前屈みになって尋ねてきた。
(なんで!! わざわざ前かがみで!!
俺の考えでも分かるのかよ!!)
「い、いや。何でもないよ!
ちょっと地面が気になったから見てただけだよ!」
「ふ~~~ん? へ~~~~? それで? 地面に何かあったのかな?」
「え、と・・・」
ニマニマと微笑みを浮かべるアダリアの視線に耐えかね、俺は周囲をキョロキョロと見回す。
だが、地面に異常はないようだ。
「ねぇねぇケン坊? 何かあったぁ?
お婆ちゃん、分かんないな~~。
何があったのか、教えてほしいなぁ~~」
「・・・いや・・・見間違いだったようで・・・」
「そっかそっかぁ~~、ふふふふふふ。
じゃあ、今度はしっかりと私の手を握ってねぇ~?
じゃないと、先に進めないからねぇ~~。
ふふふふふふ」
そんなアダリアの正論に、俺は頷くしかなかった。
そして岩の上に飛び乗ったアダリアは、なぜか先ほどよりも前かがみになって手を伸ばして来るのだった。
そんな様々なトラブルを乗り越えながらも、俺たちは太い木々が連なる森の中を進み続ける。
すると、なにやらゴゥゴゥと音が聞こえ始めた。
「ねえねえアダリア。何か変な音がするけど何の音だろう?」
「ああ、これは水の流れる音だね。
少し先に大きな川が流れているから、多分、その音だと思うよ」
「そっか、これは川の音か」
(・・・だが、川の音にしては激しすぎやないだろうか?
なんというか、川というよりも滝に近い音がするのだが?)
そんな俺の疑問に答えるように、突然、視界が開けた。
そして俺の目の前には、森のギリギリ近くまで増水した大河が流れていたのだ。
まさかこんな近くに濁流があるとは想像もしていなかった俺は、驚きのあまり尻もちをついてしまう。
考えてみれば、ここは日本の様に護岸工事がされているはずもない世界だ。
少し増水しただけで、森の直ぐ側まで川が増水するのも当たり前かもしれない。
一方、アダリアは泥色に濁った川をじっくりと眺めながらウンウンと頷いている。
「ケン坊ケン坊。ケン坊の体力で川を超えるのは難しそうだから、今回は私が運ぶよ。いいよね?」
「え? 運ぶ? どうやって俺を運ぶの?」
「もちろん、背負ってジャンプするんだよ?」
「・・・は?」
俺はアダリアが何を言っているのか理解できなかった。
「え? ちょっと待って? ジャンプして川を飛び越えるつもり?」
「そうだよ?」
「そうだよって・・・。あのさアダリア。この川ってさ、目算でも向こう岸まで100メートル近くあるよね?
ジャンプして飛び越えられるわけないじゃん!」
「大丈夫。ケン坊に貰った魔力を使って肉体強化をすれば、この程度の距離なら問題ないよ」
「いやいやいやいやいやいや!! 普通に水が引くのを待てばいいじゃん!!」
「大丈夫大丈夫。ほら、見ててね?」
そういうとアダリアは少ししゃがんでからピョンとジャンプする。
すると、アダリアはそのまま向こう岸まで軽々と飛び越えてしまったのだ。
「・・・は?」
俺は何が起こったのか分からず、向こう岸で手を振るアダリアを凝視するしかなかった。
だが、次の瞬間、アダリアはジャンプしてこちら側へ戻ってきたのだ。
「ね? 出来たでしょう?」
ドヤ顔のアダリアを前に、俺は口を開けて驚愕するしかなかった。
「本当に大丈夫だよね?! 落ちたりしないよね!?」
「大丈夫大丈夫大丈夫。ほら、しっかりと私の体を掴んで」
「信じてるから!! アダリアのこと信じてるから!!」
「っんん~~~~~♪ ケン坊から信じられるなんて、嬉しいね~~。
お婆ちゃん、頑張っちゃうね~~」
「本当!! 本当にお願いします!!」
「それじゃあ、行くよ~~」
俺はアダリアにギュッと掴まり、歯を食いしばる。
するとアダリアは少しだけしゃがみ、地面を蹴った。
次の瞬間、俺達の体は濁流の上を跳んでいた。
「っ!!!!!!!!」
(落ちたら死ぬ!! 落ちたら死ぬ!! 落ちたら死ぬ!! 落ちたら死ぬ!! 落ちたら死ぬ!! 落ちたら死ぬ!! 落ちたら死ぬ!!)
俺は変に大声を出したり暴れたりしたら危険だと本能で理解していたので、声に出さずに心の中で叫び続けた。
恐らく跳躍時間は数秒だったのだろうが、俺にとっては生きた心地のしない時間だった。
そして向こう岸に到着した瞬間、
「ぶはああああああああああああ!! 生きてたあああああああ!!」
と俺は生を嚙み締めた程だ。
そんな俺を背負いながら、アダリアは、
「ふふふふふふ~~。ケン坊ケン坊?
アダリアお婆ちゃんは凄いでしょう~~~??
ふふふふふふ~~。
これからも、もっと頼ってくれて良いからね~~??
もっと信じてくれて良いからね~~??
ふふふふふ~~~」
と耳をピクピクと動かしていたのだった。
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