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24 尊厳とナデナデ (挿絵2枚有)

翌朝。

雨は上がり、朝日が森を照らしていた。

俺たちはいつも通りに簡単な朝食を済ませると、アダリアを先頭にして歩き始める。


森の中は昨日の雨の影響で普段よりも濃厚な自然の匂いに満ちていた。

そんな森の中を歩き続けながら、俺たちは道中に咲く薬草や山菜を集める。



「うんうん、ケン坊も段々と植物の見分けがつくようになってきたねぇ~」


「まだまだ全部は分からないけど、よく見る植物は何とか見分けられるようになってきたよ」


「十分十分。だってここは異世界なんだよ?

そんな世界の植物をたった数日で見分けられるようになるなんて、ケン坊は凄いね~賢いね~」



するとアダリアはニコニコと微笑みながら、全く自然すぎる動作で俺に近寄り、そして頭をナデナデと撫で始める。

この行為に、俺は少しだけ困惑した。



(・・・う~~~ん、アダリアは良い人なんだけど、流石になぁ~~。

小学生じゃないんだから、褒められるたびに頭撫でられるのも、なんだかなぁ~)



そこで俺はアダリアの手を、極めて優しく振り払うことにした。

別にきつい口調で注意したわけでも、勢いよく振り払ったわけでもない。

本当に優しく、丁寧に振り払ったのだ。


その時、俺は軽率にも、


(まあ、口で言わずとも何度かやってれば空気を読んで頭を撫でるのをやめてくれるだろ)



と事を考えていたのだが、これがいけなかった。


俺が無言でアダリアの手を振り払った瞬間、先ほどまでピコピコと動いていたアダリアの耳が一瞬で垂れ下がったのだ。

そして先ほどまでの笑顔はどこへやら、アダリアの瞳からはボロボロと涙が零れ始める。


挿絵(By みてみん)



(やばい!! まさかここまで落ち込むとは!!)




「い、いや! 別にアダリアの事が嫌いになったわけじゃなくて! 

なんていうか、流石に褒められるたびに頭撫でられるのは、ちょっとなぁ~~って思っただけなんだよ!


ほ、ほら! 俺たちって寿命が短いじゃん!?

だから、実は俺って頭撫でられるような年齢じゃないんだよ!

だから、ちょっと恥ずかしいっていうか!」



俺は慌てて弁明を始めるが、だめ!!

アダリアの耳は垂れさがり続け、止まる気配がない!



「~~~っ!!

あの! だから! 突然に撫でられるのは流石に驚くっていうか!

出来れば褒めるのは言葉だけにしてほしいっていうか!」


「・・・やっぱり・・・私に触ってほしくないんだね・・・うっ・・・うっ・・・」


「違っ! そうじゃなくて!

アダリアに触られるのは嬉しいんだけど! 頭を撫でられるのはちょっと違うっていうか!」


「・・・」



処置無し。

アダリアの耳は完全に垂れさがり、ポロポロと涙が地面に落ちていく。

ここまで落ち込んだアダリアを見てしまうと、流石の俺も心が痛む。


俺は先ほどの行動を悔み、そして現状を打開するために「俺」は「俺」に対して言い訳をするしかなかったのだ。



(・・・そうだよな・・・。

よくよく考えてみれば、アダリアは俺にとって命の恩人だもんな。

頭を撫でられるくらい、気にする必要はないよな・・・。


そもそもここは異世界で、地球の常識は通用しないんだし。

郷に入れば郷に従えっていうし・・・)




そして俺は、静かに涙を流し続けるアダリアに、



「あの・・・やっぱり・・・好きな時に頭を撫でてもいいよ・・・」


「・・・そんな・・・嫌なら・・・いいんだよ・・・」


「嫌じゃないよ! ただ、地球の常識と違っただけなんだよ!

本当に嫌じゃないから!

ちょっと・・・恥ずかしかっただけっていうか・・・」


「・・・それじゃあ・・・これからも・・・ナデナデしていい・・・?」


「もち、ろん」


「・・・もう・・・手で払ったり・・・避けたり・・・しない・・・?」


「は、い。・・・払ったり、避けたり、しません」



と言うしかなかった。

その瞬間、アダリアはニパッと嬉しそうなイタズラ笑顔を浮かべ、耳をピンッと立たせる。


挿絵(By みてみん)



「うんうん! ケン坊は本当に素直でいい子だねぇ~~!!

こんなに簡単に私の願いを聞き入れてくれるなんてねぇ~~!!

嬉しいねぇ~♪ 嬉しいねぇ~~♪」


「なっ!? まさかウソ泣き!?」


「ふふふ~~。何のことか分からないねぇ~~。

でも約束は約束だからねぇ~!

もう逃げたり払ったりしちゃ駄目だからねぇ~」


「えっ! あっ! そんな! だって! 涙が! あんなに!」


「ケン坊は素直だねぇ~~、良い子だねぇ~~。

良い子過ぎて、誰かに騙されないか心配だねぇ~~。


でも大丈夫! お婆ちゃんがケン坊の事をしっかり守るからねぇ~~。

ケン坊はアダリアお婆ちゃんを信頼してくれていいからねぇ~~」


「あっ・・・あっ・・・あっ・・・」



こうしてアダリアの掌の上で踊らされた俺は、今後、アダリアのナデナデに対して一切の抵抗が出来なくなってしまった。

事実、この直後に俺は頭だけでなく頬までナデナデと撫でられたのだ。



・・・まあ、正直なところアダリアみたいな可愛い女の子に頭を撫でられるのは嬉しいんだけどね・・・。


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