23 結界の中での一晩
結界に守られながら、俺たちは森の中を進み続ける。
「・・・」
俺は結界を見上げ、弾かれる雨粒を観察していた。
それはまるで、ガラスドームの内側から雨を観察しているかのようだ。
「・・・やっぱ、魔法ってすげ~な~~」
「ん? 何? 何か言った?」
「ああ、なんでもないよ。ただ魔法は凄いな~~って呟いただけ」
するとアダリアはケラケラと笑いながら、
「ケン坊ケン坊。これから行く街は凄く大きい街で、そこには大勢のエルフが暮らしているんだよ。
だから、私も知らないような魔法が一杯あると思うよ?
楽しみにしててね?」
と嬉しそうに耳をピクピクさせながら言った。
そんなアダリアの言葉に、俺は胸を高鳴らせる。
「アダリアも知らないような魔法か~~~。凄いんだろうな~~」
「うんうん! それに、街には見上げるくらいに大きい建物が並んでいてね! 色々なお店もあるんだよ!」
「おおお!! 異世界の街か~~!! いいね~~!!」
「ふっふっふ~~、楽しみにしててね~~」
それから暫く、俺たちは歩きながらゴールにある街の話題で盛り上がった。
そして雨の中を進み続けて数時間後。
未だに雨が収まる気配はなく、むしろ雨の勢いは強まりつつある。
「う~~~ん、段々暗くなってきたし、今日はここら辺で休もうか?」
俺たちは結界の周囲に光球を出しながら進んでいたが、流石にこれ以上進むのは危険な状況だった。
周囲は完全に闇に包まれ、ゴウゴウと風が吹き、木々を揺らし続けている。
アダリアは結界の外を眺めながら、
「流石に、今日は結界から出られそうにないかな」
と呟く。
「まあ、安心して? この結界は雨風程度で崩れたりしないから。
それに、結界の中でも料理は出来るし、水を温めて体を拭くくらいは出来るからね?」
「え、でも、煙はどうするの?」
「大丈夫大丈夫。煙だけ外に出るようにしてあるから。
それにほら、こんなこともあろうかと乾いた薪も用意してあるし」
そういうとアダリアは地面を軽く魔法で焼いて乾かし、収納袋から薪を取り出すと普段通りに料理を始める。
毎度同じく道中で集めた山菜とパックご飯を混ぜたお粥を主食に、アダリアが収納袋から出してくれた肉を焼いてメインのおかずとした。
結界内の焚火もアダリアが言うとおりに煙だけ外の出ていくようで、全く煙い感じがしない。
俺は魔法の素晴らしさに感謝しながら、夕飯を楽しんだ。
そしてアダリアも同じく、小さい器に盛られたお粥を美味しそうに食べている。
そんなアダリアに、俺は問いかける。
「ねえねえアダリア。前々から気になってたんだけど、そんな量で足りるの?」
「ん? ああ、ケン坊からしてみたら少ないね。
でも大丈夫! 私って結構な年齢だからね、これ以上ご飯を食べることが難しいんだよ」
「本当? 無理してないよね?」
「本当本当。むしろ、道中に備えて普段よりも多く食べてるくらいだよ」
「・・・まあ、それならいいんだけど・・・。
もし、俺に食べさせるために無理しているなら、そんな事しなくていいからね?
肉もまだまだ一杯あるしさ」
「大丈夫大丈夫。ふっふっふっふ~」
そんなアダリアの言葉を俺は信じるしかなかったが、彼女はニヨニヨと嬉しそうに微笑んでいる。
「嬉しいねぇ~嬉しいねぇ~。
私の事を心配してくれるなんてねぇ~~。
ケン坊は本当にいい子だねぇ~~」
するとアダリアはわざわざ俺の隣に座りなおすと、俺の頭をナデナデと撫で始める。
そんなアダリアの行為を、俺は少しだけ困惑した表情で受け入れたのだ。
その後、俺たちはベッドを取り出し、いつも通りに添い寝した。
アダリアはベッドに入ると同時に小さく寝息を立て始めたが、俺はベッドに寝ころびながら結界を見上げる。
降り注ぐ雨が結界に遮られ、まるで滝のように流れ落ちていく。
結界の外では風が吹き荒れ、時折、どこからか飛んできた石や枝が音を立てて結界に当たるが、アダリアの言った通りに結界にはヒビすらも入らない。
「・・・やっぱ、魔法ってすげーわ」
俺は暫く結界を眺め続けるも、徐々に強くなる睡魔を前に、ゆっくりと目蓋を閉じて眠りについた。
評価していただけると、ランキングに載って大勢の人に作品を見ていただけます。
よろしければ、評価していただけると幸いです。




