↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
21/30

21 狩りと魔力  (挿絵有)

翌朝、俺はまたもやアダリアの胸の中で目を覚ました。

しかし、昨日とは異なり、俺は慌てることなくアダリアの胸の中で温もりと甘い匂いを堪能しながら頭が覚めるのを待つ。


そして完全に目覚めた俺はゆっくりと起き上がり、まだスゥスゥと寝息を立てているアダリアの体を揺すると、



「アダリア。おはよう」



と、挨拶できる程度にはアダリア耐性が付いていた。



その後、俺たちは簡単な朝食を済ませると狩りに向かう準備を始める。

するとアダリアは何か思案したかと思うと、周囲を見渡し、



「あそこにいるね」



と指差す。

だが、アダリアが指差した方向には木々があるだけで、俺には何も見えない。



「??? あそこに動物がいるの? 何も見えないけど、魔法で調べたの?」


「うん。今使ったのは周辺を調べる探知系の魔法なんだよ」



どうやらアダリアはレーダーのような魔法を使ったらしい。



「それで、あの森の奥に草食動物の群れがいるんだよ。

多分、川に水を飲みに来たのかな? こっちに向かっているね」


「え? こっちに来ているの? じゃあ隠れないと」


「別に隠れる必要はないよ。

向こうから来てくれるんだから、ほっとけばいいよ」


(・・・ああ、そうか。エルフは動物を食べないのだから、動物が逃げることもないのか)



実際、アダリアのいう通りに鹿のような動物の群れが木々の間から現れ、こちらへと近づいてくる。

何匹かと目はあったが、向こうはこちらの事を気にしていないようだ。

群れは俺たちの直ぐ脇を通り過ぎ、川へと向かう。



「じゃあ、ケン坊。どれが食べたい?」



アダリアの声を聞いて我に返った俺は、群れを吟味する。



「・・・正直、どれが良いのか良く分からないんだよね」


「でも、ケン坊は日常的に肉を食べてたんでしょう? 

なら、どれが美味しいのか分かるんじゃないの?」


「う~~~ん。俺が食べていたのは市販されていた肉であって、実際に狩りをしていたわけじゃないんだよ」



俺は頭をポリポリと掻きながら、群れを眺め続ける。

どうやら群れは結構な大所帯らしく、子供から大人まで何匹もいる。



「・・・聞いた話だと、子供の肉が柔らかくて美味しいらしんだよね」


「なら、あれでいいかな?」



アダリアが指差した先には、美味しそうに水を飲む幼い動物の姿があった。



「・・・うん・・・」


「じゃあ、狩るね」



直後、アダリアの指先が光り、幼い動物は小さな水音を立てて川に倒れた。


挿絵(By みてみん)



「・・・え? もしかして、殺したの?」


「え? 狩りって動物を殺すんだよね? 殺して食べるんだよね? 違った?」



突然のアダリアの行動に俺は驚き、そして俺の言葉にアダリアは驚く。



「・・・いや、合ってる。間違ってない」


「良かったぁ~~」



アダリアは嬉しそうにニコニコと微笑んでいる。


一方で、俺は幼い動物の死体に近寄る母親らしい動物を見ていた。

母親は既に息絶えた我が子の体を揺さぶり続けている。


言葉にならなかった。



(これが狩りか)



映像では何度も見たことはあった。

だが、目の前で狩りを見たのは初めてだった。


母親は悲しそうな声で鳴き始め、群れは異変に気が付く。

そして群れは脱兎のごとく森へと逃げ出し、最後まで残っていた母親も、後ろを振り返りつつ森へと駆けて行った。


河原には俺とアダリア、そして肉が残った。




パチパチと焚火の火が燃え上がり、俺は狩りたての肉を炙る。



「ねえねえケン坊。肉ってどのくらい焼けばいいの?」


「う~~ん。多分、これで大丈夫だと思う」



正直、野生動物のさばき方なんて俺は知らない。

仕方ないので悪戦苦闘しつつ内蔵を捨て、可能な限り血を抜き、毛皮を剥ぎ取り、食べられそうな部位を炙ることにしたのだ。



「・・・とりあえず、生っぽい部分は衛生的に問題がありそうだし、ケバブみたいに焼けたところを切りながら食べるしかないかな」



俺はアダリアからナイフを借り、焼けたであろう部位を薄く切り取る。

そして口に放り込んだ。



「!!! 美味っ!!」



焚火で炙られた肉は、ホットプレートで焼いた肉とは比べ物にならないほどに美味い。

別に特別な味付けをしたわけではないのだが、疲れていた体に肉の甘さが広がる。

俺はイソイソと焼けた部分を食べ続ける。


そんな俺の姿を見ていたアダリアが、少し驚いた顔をしながら呟く。



「・・・凄い。ケン坊の魔力がどんどん回復している」


「え? 何? 魔力がどうしたの?」


「ケン坊が肉を食べるたびに、魔力が見たこともない勢いで回復しているんだよ」


「? どういうこと?」



俺の問いかけに、アダリアは少し考えると口を開く。



「そうだね。そろそろケン坊に魔力とは何かをちゃんと説明しないとね」



するとアダリアは「んっんっ」と小さく咳払いをした後に説明を始める。



「あのね、魔力っていうのは太陽から降り注ぐ光に含まれているんだよ。

その魔力を生き物は吸収することで、魔法が使えるの」


「・・・あれ? それっておかしくない? 

だったら食事なんてしなくても魔力は回復するんじゃないの?」



するとアダリアは首を横に振る。



「もちろん食事をしなくても太陽の下にいる限りは魔力は回復するんだよ。

でも、太陽から降り注ぐ魔力は濃度が薄くて、それだけじゃ魔法が使えないの。

なら、どうやって魔法が使える程の魔力を補給するかっていうと、それが食事なの。


植物は太陽光を浴びながら成長するでしょ?

そうやって育った植物を食べることで、私たちは栄養と魔力を同時に補給することができるの」


「ああ~~~、なんとなくわかってきた。

つまり俺が一般的なエルフよりも魔力が多いのは、野菜だけじゃなくて肉も食べられるからってわけか」


「そうそう、そういうこと」



ここで俺は一つの疑問が浮かぶ。



「ん? じゃあ魔力を補給したいなら俺から魔力を補給したように、肉食動物から魔力を補給すればいいんじゃないの?

魔法が使えない肉食動物なら魔力をため込んでいるだろうしさ」


「あ~~~~、それはできないんだよ。

自分以外の生き物から魔力を得るには、相手の同意が必要なの。


だからケン坊から魔力を分けてもらうとき、同意を貰ったでしょう?

あれがないと、魔力を補給できないんだよ。


でも、動物から同意を得るなんてできないでしょう?

だから、魔力だけ補給することは無理なの」


「なるほどね~」


「同意を得ずに魔力が欲しいなら、相手を食べて自分の血肉にするしかないんだよ。

でも、私たちエルフは肉を食べられないから、動物から魔力を得ることができないの」



俺はアダリアの説明を聞きながら、肉を食べ続ける。



「俺も昔から肉を食べると元気が出るって思っていたんだ。

単なる気のせいかと思っていたんだけど、実際は魔力が関係していたのかもね~」



まさか異世界で元気の正体が魔力と気が付くなんて。

世の中、何が起こるかわからないもんだ。


それから俺たちはのんびりと食事を楽しみ続けた。


評価していただけると、ランキングに載って大勢の人に作品を見ていただけます。

よろしければ、評価していただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。