16 この世界に人類種はエルフしかいないし、魔物もイメージと違うらしい
元気になったアダリアに、俺は気分転換の代わりに質問を投げかけた。
「・・・そういえば気になってたんだけど、この世界にはエルフ以外にドワーフとか獣人とかの人類種って居るの?」
「どわーふ? じゅうじん?
う~~ん。私は聞いたことないね。どんな人達なの?」
「ドワーフは炭鉱に住んでいて、鉄の錬成が得意な種族なんだよ。
小柄だけど筋肉質で、立派なヒゲを生やしているんだ。
獣人は獣と人が組み合わさった外見をしていて、嗅覚とか聴覚が優れているんだよ」
俺の言葉を聞いても、アダリアは首をかしげている。
「う~~ん、聞いたことないね~~。多分、居ないと思うよ?」
「じゃあ、エルフ以外に人類種っているの? もしくは言葉を話して意思疎通出来る存在っている?」
「私が知る限り居ないかな。言葉を話すのはエルフだけだね。
意思疎通出来る魔物も居るかもしれないけど、私は知らないね~」
アダリアは何気なく言った言葉であったが、俺は聞き逃さなかった。
「魔物!? この世界には魔物がいるんだ!?」
「え? うん、居るよ。
ケン坊の世界にも居るの?」
「居ない居ない!!
うわーーー! 流石は異世界!!
じゃあさ! ドラゴンとかゴブリン、オーク、スライムとかが居るんだよね!?」
俺はワクワクしながらアダリアに問いかけたが、アダリアは首を横に振る。
「ごめんね、ケン坊が言った単語を私は聞いたことがないの。
多分、居ないんじゃないのかな~」
「ええぇ・・・。
今言ったのは定番の魔物なんだけど、それが居ないってことは逆にどんな魔物が居るの?」
「多いのは植物系の魔物だね」
「植物系ってことは、ツルを伸ばして捕食したり、根っこを足代わりにして追いかけて来たりするってこと?!」
そんな俺の言葉に、アダリアはケラケラと笑って答えた。
「そんな物騒なの居ないよ~。
ケン坊の世界は随分とおっかない事を考えるんだねぇ~~」
どうやら俺の言葉がツボに入ったらしく、アダリアは暫くケラケラと笑い続ける。
そしてニヨニヨと口角を上げながら、魔物の説明を始めてくれた。
「それじゃあ、ケン坊に魔物がなんなのかを教えようかな」
「うん。お願いしますアダリア先生」
「ええ~~、先生だなんてぇ~~。
もぉ~~~、照れちゃうねぇ~~」
そんな事を言いながらも満更でも無さそうなアダリアは嬉しそうにニヨニヨと微笑み、更にはピコピコと耳を動かしながら魔物の解説を始めてくれた。
「まあ、簡単に言うと「エルフ以外で魔法を使える生き物」を魔物って呼んでいるの。
だから、どんな小さい魔法であっても魔法を使うことが出来れば自動的に魔物って呼ばれるってわけ」
「なら俺が魔法を使えるようになったら、俺は分類上は魔物って事になるの?」
「アハハハハハハハハハ!! そうなるね~~!
ケン坊は魔物になっちゃうねぇ~~!」
俺の言葉が余程ツボに入ったのだろう。
アダリアは先ほどよりも嬉しそうにケラケラと笑った。
「でも魔法を使うってことは、危険な生き物なんじゃないの?」
「まあ、そのうちに魔物を見つけたら見せるから。
大丈夫大丈夫。ケン坊が思っているほど、魔物ってのは危険じゃないから」
「具体的に、魔物はどんな魔法を使うの?」
「ん~~~。一番多いのは、光り魔法を使う花かな?」
「光り魔法ってことは、花が光るってこと?」
「うん。夜になると魔法で光って虫を集めて効率よく花粉を広めるんだよ。
こういう系の植物魔物が一番多いかな?」
どうやら、この世界はファンタジーっぽいが俺の思っているようなファンタジー世界ではないようだ。
「でも、植物以外にも魔物は居るんでしょう? それはどんな魔法を使うの?」
「ん~~・・・。まあ、私も直接見たことは無いんだけど、姿を消す魔法とか、肉体強化魔法を使う魔物が居るらしいよ」
「え!? どっちもヤバい魔法じゃん!!
姿が見えないと攻撃に対処できないし、獣に肉体強化なんてされたら危険極まりないじゃん!!」
「アハハハハハハハ、大丈夫大丈夫。
さっきも言ったけど、それほど危険な魔物ってのは居ないんだよ。
姿を消す魔法を使える魔物は相手から逃げるために姿を消すだけだし、私が知っている肉体強化魔法が使える魔物も温厚な性格をしているから襲ってくるようなことはないね。
まあ、警戒するに越したことはないけれど、そこまで気にするようなことでもないんだよ」
「そっかぁ~~・・・」
せっかく異世界に来たのに、どうやら魔物と戦う事は殆ど無いらしい。
アダリアの言葉を聞いた俺は、安心半分、落ち込み半分といった感じだった。
それ以降もアダリアから異世界の常識を教わりながら、俺たちは歩き続ける。
するとアダリアが嬉しそうに声を上げると、何かを地面から引き抜く。
「ケン坊! ケン坊! ほら見てごらん!!」
そう言って伸ばされた手の先には、赤い実を付けた小さな植物が握られていた。
「ん? これは何?」
「これはね! 結構珍しい薬草なんだよ!」
「ああ、そういえば薬草を集めながら移動するって言ってたね」
「そうそう! これは高値で売れるんだよ! いや~~、運が良いよケン坊!」
そしてアダリアに差し出された薬草を、俺は目に焼き付ける。
「・・・分かった。俺も似たような実を見つけたらアダリアに報告するね。
そしたら効率よく集められるだろうし」
「それはいいね~。
それじゃあ、私が売れそうな植物を見つけたらケン坊に見せるから、どんどん覚えていってね。
二人でやれば暫く生活費に困らないだろうから。
ああ、それと食べられる山菜とかも教えるから、二人で集めようね!
そしたら食事がもっと豪華になるからね!」
そしてアダリアはニコニコと嬉しそうに薬草を収納袋に入れる。
こうして俺はアダリア先生に薬草や山菜といった役立つ植物、更には毒を持つ植物などを教わりながら山道を歩き続けた。
どうやらアダリアは相当に張り切っているらしく、次々と山菜や薬草、毒草などを俺に見せてくる。
最初は俺も必死に覚えようとしたのだが、正直、一度で覚えることは出来そうにない。
仕方ないのでアダリアが指差した植物をスマホで撮影し、「薬草」「毒草」「山菜」と一つ一つに説明を書き込んでいく。
そんな俺をアダリアが横からジーーーと見つめ、
「その板、本当に便利だね~~」
と呟くのだった。
評価していただけると、ランキングに載って大勢の人に作品を見ていただけます。
よろしければ、評価していただけると幸いです。




