15 地球に帰れるかも? (挿絵有)
俺たちは何か置き忘れが無いかと周囲の最終確認をすると、旅立ちの準備を終えた。
そこで俺は、
「とりあえず、荷造りは完了したし、記念撮影でもしようか?」
と提案し、スマホを取り出す。
そして逆光とならないように注意して撮影場所を選ぶと、アダリアを俺の隣に手招きする。
「キネンサツエイってのが何なのか分からないけど、どうやら面白い事らしいね」
ワクワクとした表情のアダリアは、手招きされるがままに俺の隣に立った。
「まあ、面白いかもね」
「楽しみだね~~。
それで、これから何をするの?」
アダリアの問いに対して、俺はスマホのレンズを指差し、
「ここに向かって微笑んで?」
と言うと、アダリアの笑顔がレンズに向いたことを確認し、スマホの撮影ボタンを押した。
パシャッという軽快な撮影音と共に、俺たちのセルフィーがスマホに表示される。
それを見たアダリアは、
「凄い凄い! 私たちの姿が残っている!
ケン坊の世界には面白い技術があるんだね!!」
と言って興奮気味に耳を動かしながら微笑む。
こうして俺は異世界で初めての自撮りを成し遂げたのだ。
記念撮影から間もなく、俺たちは歩き始めた。
道なき道を行く俺たちの足元は悪く、木の根や岩、窪みなどが延々と続いている。
森の中に俺たち以外に人はなく、鳥の鳴き声や風の音、そして二人の足音しか聞こえない。
そんな時、アダリアが真剣な声で語りかけてきた。
「ねえ、ケン坊。ちょっと聞きたいんだけど、いいかな?」
「何?」
「・・・ケン坊は元の世界に戻りたい?」
「そりゃ戻りたいよ。向こうには家族も友達も居るしね」
「そうだよねぇ・・・」
そして少しの間をおいて、アダリアは口を動かす。
「・・・今から言う事は、ほとんど私の憶測なんだけどね」
「うん?」
「ケン坊の世界ってエルフは居ないし、魔法もなければ魔導具もないんだよね?」
「そうだね。物語の中にはあるけど、実際は存在していないね」
「・・・そこが気になるんだよねぇ・・・」
「?」
俺は先頭を行くアダリアの背中を見つめる。
「前に説明した通り、翻訳魔法はお互いの言語に似たような意味を持つ単語が無いと翻訳できないんだよ」
「ああ、そう言ってたね」
「で、ケン坊の世界には魔法はない。
なのに、私たちが「魔法」「魔導具」と呼んでいる物と同じ意味を持つ単語は存在しているわけだよね?」
「うん」
するとアダリアは難しい顔をしながら振り返った。
「・・・それって、おかしくない?
なんで魔法もエルフも存在しないのに、エルフや魔法という概念が存在しているの?」
「え? ・・・さぁ?」
「・・・これは私の想像なんだけど・・・。
ひょっとしたら私たちの世界からケン坊の世界に行ったエルフが過去に居たのかもしれないんだよ」
「!!」
アダリアの言葉に、俺は衝撃を受けた。
「つまり、過去に来たエルフが魔法や魔導具、更にはエルフという概念を広めた可能性があるって事?」
「そう。
そしてケン坊の世界に行った方法が分かれば、ケン坊を元の世界に帰してやれるかもしれなんだよ」
「!! なるほど!! 可能性は十分にあるね!!」
俺の胸は高鳴った。
しかし、アダリアは暗い顔をしている。
「・・・でもね。期待を持たせて申し訳ないんだけど、私は異世界に移動する方法を知らないんだよ・・・。
だけどケン坊が元の世界に帰りたいと思っているなら、少しでも希望を持って欲しくて・・・」
どうやらアダリアは下手に希望を持たせたことに罪悪感を感じているらしい。
その証拠に、さっきまでピンと伸びていた長い耳が垂れさがっている。
「いやいや! 気にしないでよ!
それにアダリアが言っていることも全部が全部間違っているとも思えないしさ!」
「・・・」
「実際に帰れるか分からないけど、少しでも希望があれば頑張れるよ!」
「・・・うん。ケン坊が元の世界に帰れるように、私も頑張るから。
一緒に頑張って帰る方法を見つけようね?」
どうやらアダリアの気分も戻ったらしく、耳は元通りにピンと伸び、嬉しそうに微笑んでいる。
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