小さな事でも毎日繰り返していけば……
私が迷子発言をしたら微妙な空気になってしまった。
いや、迷子じゃないんですよ?
ただ紹介できる仲間はいないし、分けられる食料もないし、じゃあこんな所に一人で何してんの? と聞かれたら困るから迷子って答えただけなんだからねっ!
誰に言い訳してるんだろうね……私。
「とにかく今は移動しましょうか。早く素材を回収しちゃいましょう」
「ああ、そうだな」
皆が戸惑っている中、メイスで魔物をボコボコに殴っていた人が話を進めてくれた。
助かりました……
心の中でお礼を云いながら私も素材回収をしようと思ったけど、どこを回収したら良いか分からない。
なので一番近くにいた槍使いの人に聞いてみる。
「あの……このウッドゴーレムって、どこを剥ぎ取れば良いんですか?」
「ん…知らないの? あ、倒し方も知らなかったっけ。コイツらは魔石と頭の方に葉っぱに紛れて、赤い実が生っている事があるから、それを回収しておいて」
「わかりました。ありがとうございますっ」
槍使いの人に尋ねてみると、嫌な顔一つせずにすんなりと教えてくれた。
ウッドゴーレムの頭の部分…葉っぱが密集しているところをガサガサと漁ってみると、赤い実を三つ回収できた。
自分で倒した、もう一体の方も素材を回収しようとしたところで、私の耳が物音を捉えた。
正確にはスキルで、だけどね。
「何か近付いてきてますね。たぶん魔物です」
「たしかに、そろそろ移動した方が良いかもな。皆、行こう!」
私の言葉を疑うことなくライオスさんが指示を出した。
この人、決断が早いから、もしかするとリーダーなのかも。
そこからは皆が周囲を警戒しつつ、戦闘を行った場所から離れて行く。
無駄口も叩かずに真剣そのものだ。
カッコいい……これぞ冒険者って感じだねっ
そのまま、少し歩いていると岩場のような場所に到着する。
「おいライオス、そこに洞窟があるぞ」
「本当だ。魔物の巣とかじゃないよな? 何もいなければ、そこで休んでいこう」
「賛成。もう僕疲れたよ……」
「戦闘が続いてましたからね……私もクタクタです」
休めると聞いて皆は疲れが一気に吹き出した様子だった。
どれぐらい休めていないかは知らないけど、たしかに辛そうではある。
ライオスさんとメイス使いさんと私が洞窟に入って、ディアンさんと槍使いさんが入り口を見張って中を探る。
「思ったより深そうだな……」
「そうですね……ライオス、どうしますか?」
ライオスさんとメイス使いさんが相談を始める。
まぁ、私はパーティーメンバーじゃないからハブられても仕方ないんだけどね。
べ、別に寂しくなんかないんだからっ!
「奥まで調べに行く余裕もないからな……。それじゃあ入り口と洞窟の奥を警戒しながら休むとしよう」
ライオスさんがそう言うとメイス使いさんが頷く。
私も特に問題はないので、それに頷いておく。
入り口に戻り槍使いさんが、ささっと火を起こして皆がそれを囲むようにして座っていく。
手慣れている……そして、その輪にとても入り難い。
「ん、どうしたの? ほら、こっち座りなよ」
「あ、ありがとうございます……」
槍使いさんが入り難そうにしていた私に気付くと、少し寄って場所を空けてくれた。
「ゴメンね。皆いつもの癖で座っちゃって君の座る場所まで考えてなかったね」
槍使いさんが困ったように笑いながら自分のポーチから木の実を取り出し、それを口に放り込んでいく。
なので、私も荷物から水袋を取り出すと口に水を含む。
すると皆から一斉に視線を向けられた。
な、なんですかっ……
「ああ、あ、あの……すみません。できれば水を分けて欲しいのですが……」
「ルーアが飲んだら俺も貰っていいか?! もう喉がカラカラなんだ!」
「バカディアン! 次は僕だよ! 絶対にディアンの後に水を飲むなんて嫌だからね!」
「なんでだよ?! お前はただルーアの後に水を飲みたいだけなんじゃないのか!?」
「ディアンじゃあるまいし、そんな子供みたいな事するか!」
なんか私の水を巡って言い争いが勃発してしまった……。
しかも渡すの前提だし。
困ってるみたいだから構わないけど、とりあえず喧嘩はやめようよ。
「ほら二人とも喧嘩するな。彼女も困ってるだろ?」
「むぅ……」
「すまん……」
ライオスさんが仲裁して、二人が静かになったところでメイス使いのルーアさんに水袋を手渡す。
「それは四人で分けてください」
「い、いいいんですか?」
「皆さん随分とお疲れみたいですし……」
「あ…あり、ありがとうございます!」
ルーアさん、もしかしなくても人見知りなのかな……なんか吃ってるし。
でも戦闘中や、戦闘後は普通に話せてた感じだったけどなぁ……
「良いのか? もしかして、まだ水を持っていたり……?」
ライオスさんが心配そうに聞いてくる。
その言葉を聞いてディアンさんがジロリと力強い目でこちらを見てきた。怖いですよ……
「持ってないですよ」
「なら何故……」
「困った時はお互い様、ですよ」
ライオスさんは、旅先では貴重な水を譲って貰ったことに罪悪感を感じているみたいだけど、この中では私が一番サバイバルに強いからね!
魔物肉は食べられるし、水分だって我慢すれば血を飲めばいけるしね。
だから遠慮せずに飲んで欲しい。
目の前で倒れられる方が困るもの。
「すまない。助かった……」
ライオスさんも水を飲んで全員が人心地つくと、お互いに自己紹介を済ませる。
といっても槍使いさん以外は会話の中で名前は把握できていたから、すぐに自己紹介から現状の話に移っていく。
「これから、どうするか……なんだがシラハは、この近くに住んでいるのか? 迷子と言ってはいたが、何日も彷徨っていた訳でもないんだろ?」
なんとも答え難い質問を……
実は近くに住んでいるんだけど、さすがに父さん母さんの所まで案内する訳にもいかないからなぁ……
「私はアルクーレの方からブラブラと目的も無しに歩いていたので、自分の現在地もちょっとわからないんですよね……」
「君…それは冒険者としてどうなの……」
槍使いのサシャさんに呆れられてしまった。
私もそう思いますよ。
言い訳の為とはいえ、このままでは方向音痴だと思われてしまう……手遅れか。
「ま、まぁ俺達も君も困った状況なんだし、お互いに協力しようじゃないか!」
「そうだね、僕もそれで構わないと思うよ」
「おぅ! 水を貰っちまったからな。文句はないぜ」
「わ、私も賛成です」
ライオスさんが微妙な感じになってしまった空気を変えようと、明るく話を進めていく。
なんか申し訳ないです……
「こちらこそ、よろしくお願いします」
こうして臨時でパーティーを組む事にはなったけど、ライオスさん達の目的を知らないんだよね。
「あの……もし答えられなければ別に良いんですけど、皆さんはこんな森の中に何しに来たんですか?」
「俺達? 俺達は依頼で森の調査をおこなっているんだ」
「調査……ですか?」
私からすれば、ここの森も他の森も大差ないように思えるんだけど、依頼が出ているって事は何かしらの異常があるのかもしれない。
「僕達は、この森の近くにあるウィーナッドの街から来ているんだ」
「ウィーナッド?」
サシャさんの告げた街の名前……どこかで聞いた事がある……
そう、あれは確か寝具を買いに忍び込んだ街がそんな名前だった気がする。
結局、その一回しか訪ねた事ないけどね。
「俺らは、そのウィーナッドを拠点にして活動しているAランクパーティーなんだぜ!」
「お〜! 凄いですね」
「だろ? もし俺に惚れちまったなら、あと三年くらいたったら相手してやるぜ?」
「あ、結構ですー」
「即答かよっ」
むしろ、それでオッケーされると思ってるんですか……
いきなりの誘いに、こっちがビックリですよ。
「ディアン……。女性と見たら相手として誘おうとするのはやめろよ……」
「良いだろ別に、パーティーに問題を持ち込んでる訳でもないしよ。それに一度は誘わないと女に失礼だろ?」
「そういうもんか?」
「そういうもんさ! なっ?」
ライオスさんが呆れている。
そこへディアンさんが私達女性陣に同意を求めてくる。
誰が同意するんですか……
「ディアンは、いつか女に刺されて死ぬんじゃない?」
「女に殺されるなら本望だな。あっはっは!」
「この馬鹿は……」
サシャさんも頭を抱えている。
ここまで開き直っているのは、ある意味で凄いよ。
「良いんじゃないですか? 本人がそれで納得できるのなら」
「おっ、シラハは分かってるな! そう…これが俺の生き方なんだ。誰にも間違ってるなんて言わせないぜ!」
「まぁ女性を騙して、遊び終わったら捨てる……なんて事をしていなければ、私は良いと思いますよ」
その辺は、個人の自由だからね。
「おいおい騙すわけないだろ? 俺は女に囲まれて全員と笑い合いながら暮らすのが夢なんだぜ?」
「また始まったよ……バカの馬鹿話が」
「ハーレムですか……男の人は、そういうの好きですよね」
「え?! 俺は違うからな!」
「ハーレム……か。なんか良い響きだな……」
ライオスさんがハーレム好きを慌てて否定する。
そして、その隣でディアンさんがハーレムという言葉に反応してしまった。
やってしまった……
なるべく前世での言葉を使わないようにしていたのに……
どこの言葉か聞かれても困るし……
とにかく、その言葉が広まらない事を祈ろう。
「え、ええっと……それで…ですね。私達は最近森から出てくる魔物が増えてきたので、それの調査をおこなっている最中なんです……」
話が脱線しまくりのところをルーアさんが軌道修正してくれた。
そういえば調査目的は聞いていなかったね。
「森から魔物が出てくるのは良くあることなんですか?」
「んー……。ない事もないけど、その森から出てきた魔物が結構殺気立っているから、森の中に異常があるんじゃないのか? って言うのが領主と冒険者ギルドの見解なわけ」
「それで森の中に入ってみれば魔物との遭遇戦ばかりでなかなか進めないし、夜営中に魔物の群れに襲われて荷物の大半を失ったんだ……」
「それは……よく無事でしたね」
だからほとんど荷物を持ってないんだ。
「でも、それなら一度街に戻った方が良かったんじゃないんですか?」
「それも考えたんだが、街に来る商人や冒険者にも被害が出始めていて、あまり悠長にもしてられないんだ」
「ウィーナッドの街全体が危険なんだよ」
ディアンさんまでもが真面目な顔をしている。
「それに、りょ…領主様はクエンサの街に起きた事が、ウィーナッドにも起こるのでは、と不安がっているんです……」
「クエンサの街で起きた事?」
まさか、ここでクエンサの街の話が出てくるとはね。
あの拉致されていた人達から、領主の悪事でもバレて暴動でも起きたのかな?
確かにそれなら、自身の保身を考えている人なら不安にもなるだろうね。
「竜が街を襲ってきたらしいんです……」
「竜が……?」
それってアレだよね。
父さんに頼んで、捕まってた人達を助けてもらったやつだよね?
街が襲われた事になってるんだ……
「しかも、その竜がこの森を越えた先の山に住んでるって昔から噂にある竜みたいなんだよね」
あれ……?
「その竜に関しては、存在が確実視されているから領主からすれば頭の痛い話だろうな」
父さん達の住処って実はバレてたの?
いや…でも、あそこに人が来た事はないし……
「あの……その竜って番だったりは……します?」
「おお、そんな噂もあったな。よく知ってんな!」
…………ふむ。
これは……ちょっと思い当たる事がある。
竜みたいなデカい生物がお腹を満たそうとした場合、大量の魔物が必要になるはずなのに、父さん達は私に合わせた食事の量しかとっていないんだよね。
もしかして私のせいで食事の量を減らしているのかと聞いたら、そもそも毎日食べる必要がないんだとか。
かなり燃費がいいらしい。
それなのに毎日魔物を食べるようになって、近場の魔物を一日に三回は狩るようになった。
つまり、ずっと大人しかった竜達が毎日のように魔物を襲ってくるのだ。
私が魔物なら逃げるよ。間違いなく。
ヤバイ……
もしかしなくても私のせいじゃん?
どうしよう……どうやって誤魔化せばいいんだっ!
シラハ「ふぅ……私という存在の影響力の強さといったら……」
狐鈴「ホントにシラハって問題ばっかり起こすよね」
シラハ「うぐっ……」
狐鈴「もう少し自重を覚えた方が良くない?」
シラハ「善処はしているつもりなんだけどね……」
狐鈴「ホントにー?」
シラハ「って、お前のせいだろがー!!」
狐鈴「あぶっ! くっ…この暴力娘め! 作者の力を舐めるなよ! ……あっギブギブ! ちょっ、腕はヤメテー!」




