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ランクについて

 どうしよう……

 いや……まだ、魔物が森から出てくるのが私達のせいだと決まったわけではない。


 なら普通に調査を行うのが最適解なのでは?

 うん、それだ。

 その方向性でいこう。



「あ、そうだ。シラハ!」


 私が一人で勝手に焦って、勝手に解決しているとディアンさんが、何かを思い出したのか私に話しかけてきた。


「お前、さっきさ…突きでウッドゴーレムを真っ二つにしただろ? あれって俺にもできるのか?」

「突きって……その子、武器持ってないじゃん。――あ、拳闘か……」

「そうなんだよ! コイツこんなに小さいのに、すんげえ威力の突きでウッドゴーレムをだなぁ……」


 ディアンさんが、何やら興奮しながら語り出した。


 あれかぁ……


 あれは、ちょっとそれっぽく見せるために正拳突きの真似をしただけなんだよね……


 実際は力任せに殴って、拳が減り込んだところで竜鱗を何枚も出して、その場に置いていっただけの攻撃なんですよ。

 その後に弾けさせるっていう、なかなか凶悪な攻撃方法だとは自分でも思うけど。


 だから、格闘技とか教えられる事なんて何もないんだよねぇ。私、力と速さがあるだけで完全に素人だし。


「あー……えっと、私では技を教える事はできないと言いますか…何というか……」

「駄目かぁ……やっぱり、アレだけの技となると簡単には教えられないもんな」


 どうやって断ろうかと悩んでいたけど、ディアンさんは思ったよりもあっさりと引き下がってくれた。

 ビックリだよ。


「そうだ。シラハは俺達よりも早く魔物の気配に気付いたみたいだけど、それは祝福か別の何かで察知してるのか?」

「あ、鼻が利くんですよ。そのおかげで魔物に囲まれる前に逃げられます」

「便利だな」


 ライオスさんも、私のいつもの設定ですんなりと納得してくれた。いつもコレなら楽なんだけどなぁ。



「私も聞きたい事があったんですけど、ライオスさんの手がピカッと光るのは魔法か何かですか?」

「見てたのか」

「その光が見えたおかげで、皆さんに気付けたんです」

「ああ、なるほどな……」


 私の事ばかり聞かれるのもアレなので、私も気になっていた事を聞いてみた。

 アレは、もしかしなくても雷……電撃だったと思う。


「俺のコレは祝福だよ、雷閃って言うんだ」


 ライオスさんは、何てこともないかのように教えてくれた。


「祝福……ですか」

「それがどうかしたのか?」

「あ、いえ……最初にライオスさんの祝福を見た時に、魔法では雷属性なんて聞いた事がないな、と思っていたので……」

「そう! そうなんだよ!」

「ひぅ…!?」

「ライオス、落ち着いてください。シラハさんが驚いてます」


 私が雷魔法を話題に出すと、ライオスさんが食い気味に声を張り上げた。

 そして、それをルーアさんが止めている。

 いつもの事なのかもしれない。ビックリした……


 ライオスさんは、ルーアさんに止められて我に返ったのか、ちょっと照れ臭そうにしている。


「んんっ! すまない。その話になるとついね……」

「ああ、いえ……好きなモノの話になると、食いついちゃいますよね」

「だよな! 実は俺、魔法の研究をしたくてさ! 冒険者になったのも、研究費を稼いで魔導都市に行く為なんだよ!」


 また知らない場所が出てきたなぁ……

 どこかに世界地図とかあれば楽なんだけど……


「魔導都市って……?」

「魔導都市は……!」

「あー、それは僕が説明するよ。ライオスに任せると長くなるから」


 サシャさんがライオスさんの説明を遮って、説明をしてくれた。


 魔導都市ミルズ・ヴァルナ

 帝国領のさらに西にある中立地帯で、色んな国から集まった学者やら研究者達が日夜、魔法や魔法薬や魔道具の研究に勤しんでいるらしい。


「錬金も盛んなんですか?」


 たしか魔法薬は錬金ギルドの領分だったはずで、魔道士ギルドとは仲が悪いと聞いた覚えがある。

 そんな人達が一緒にいたら喧嘩が絶えない気がするんだけど……


「錬金もやってるみたいだよ。個人で研究している所もあれば、色んな派閥同士で足を引っ張り合っている所もあるらしいよ」

「そんな所に、よく行こうなんて思いますね……」

「僕達も説得したんだよ? でもライオスには、説得するだけ無駄でね……」

「だから俺らも付いていく事にしたんだよな!」

「まぁ…ライオスだけでは不安ですしね」

「そういう事だね」

「俺……そんなに頼りないかなぁ」

「それだけ大切に想われているんですよ」


 四人のやり取りを見ていて、ホッコリとしてしまう。

 いつか、私にもこんな仲間が出来るのかな……と、そこまで考えて、それを打ち消した。

 隠し事ばかりの私に、仲間なんて出来るはずないのにね。


 もし仲間が出来るとしたら、それは自分の力の全部を教えられる覚悟が私にできた時だ。……そんな時がいつか来るのかな?



「さて……結構休めたな。魔法の話は街に帰ってからするとして、もう少し進もうか」


 ライオスさんが立ち上がると、他の人達も動きだす。


「シラハも、それで構わないか?」

「大丈夫ですよ」


 焚き火を消して移動を再開する。

 洞窟に辿り着いた時に比べると、皆の動きは良くなっている気がする。

 やっぱり慣れているんだね。



 歩いていると何度か魔物の動きを察知したので、それを回避するように誘導する。


「これだけ歩いていても魔物に遭遇しないなんて凄いね……僕の仕事がないよ」

「ああ、サシャには悪いが、これはシラハの方が上手だな」

「森の中は慣れているので……」


 そんなに褒められると照れちゃうので程々でお願いしますー。


「その慣れている森で迷子になったのか……凄いんだか分からないな!」


 ディアンさんは黙っててください。


「シ、シラハさんは、冒険者を始めてどれくらい経つんですか? ランクとか……」

「Eランクですよ。冒険者も、始めてから一年経ってないですね」

「えっ?!」


 ルーアさんが心底驚いたように素の声を上げる。

 ですよね。

 私の経歴がおかしいのは自覚してますとも……


「あれだけ戦えてEランク? 冒険者ギルドは何考えてるんだ?」

「いえ、私は、まだ13ですし、ランクが上がっていたら絶対に他の冒険者に絡まれてますよ。実際、Fランクになった時は絡まれましたし……」

「そういうのは、ぶっ飛ばしてこそ冒険者だろ?」

「そんな当然だろ? みたいに言われましても……」


 私は注目されるよりは、穏便に静かに暮らしたい人なので、そんな事態になる事が嫌なんですー


「って言うか君って13歳なの? もっと上だと思ってたよ」

「年齢詐称はしてないつもりですけど……」


 というより、そんな事を言われたのが初めてだよ。

 大抵が、幼い! みたいな反応なのに……


「いやー……俺も、もう少し上かと思ってたぜ! 口説かなくて良かったぜ」

「ディアンは、さっき普通に誘ってませんでしたか?」

「最初は、本当に腕っ節の強い嬢ちゃんだと思ってただけなんだよ、だから口説いた」

「そんな当たり前のように言わないでください」

「だけどよ? いざ話してみれば、なんか大人っぽいじゃん? だから、ああ…ドワーフかな? なんて思ってたわけよ。待たなくても、イケるかと期待しちまったぜ」


 いや、期待しないでください。

 お断りですよ。


「ドワーフと思われていたんですね……なるほど」

「ごめん……気を悪くしたら謝るよ」

「いえいえ! 今度から幼いと侮られないように、ドワーフと名乗るのもアリかなぁ……と」


 サシャさんが申し訳なさそうにしているけど、全然気にならないですよ。

 それより良い誤魔化しが見つかったかもしれぬ。


「あー、シラハ? 種族の詐称はやめた方がいいぞ。もしドワーフの耳に入ったら確実に怒られるからな」

「そうなんですか?」

「ああ。ドワーフは力自慢ではあるが、背が低い事を気にしている種族だからな。そこを利用したとバレたら、殴られても文句は言えない」

「そこまでですか……」


 よし、ドワーフを名乗るのは封印だね。

 大丈夫! 私だって日々成長しているんだから!



「あ……」

「どうした?」


 森の中を歩いて、どれくらい経っただろうか……

 私は、とある所を目指して歩いていたのだけれど、目的地に近付いたのに困ったことが起きてしまい、声が出てしまった。

 それをライオスさんが、警戒しながら尋ねてくる。


「ああ、すみません。大した事ではないんですけど……」

「構わない。些細な事でも相談してくれ。小さな異変が冒険者を死に至らしめる事だってあるからな」


 さすがAランク冒険者だな……なんて考えながら頷く。


「このまま進めば川があるみたいなんですけど、どうもそこに魔物が来ちゃったみたいで……」

「なるほどな……。素材目当てじゃないから普段なら無視するが、川があるのなら押さえておきたいところだな」

「だな」

「早く行って、水を飲みたいね」

「ですね」

「というわけで、案内頼めるか?」


 魔物がいる事を全然気にしないのは、実力と今までの経験からなのかな。

 ベテラン冒険者か……いつか私も、と言いたいところだけど、今はコソコソしてる事が多いからなあ……


 私が頼れる冒険者になれるのは、まだまだ先の事なんだろうね……

 そもそもソロだし!


 とにかく、水場を確保する為にも魔物を倒さなきゃね。



 少し歩き、私達は茂みに隠れて魔物の様子を探る。

 川の近くには、ゴブリンが何匹も群れていた。

 でも、私の知っているゴブリンとは色が違う……なんか少し赤い。


「あれは、キリングゴブリンか……」

「マジかよ…! どうする?」

「数は七体……厳しいね」


 どうも、あれはキリングゴブリンというらしいけど、深刻な事態みたいだ。


「なにか問題があるんですか?」

「アイツらはBランクの魔物なんだよ」

「皆さんなら、問題ないのでは?」


 Aランクの冒険者でしたよね。

 なんで、そんなに自信なさげなんですか……


「ん……もしかして、ランクの事を知らないんじゃない? Eランクだし」

「ああ……そうか。確かに俺達もランクが上がるまで説明されなかったしな」


 サシャさんとライオスさんが、何やら納得している。

 ランク? いや、それくらい知ってますけど? と、ちょっと頬を膨らませてみる。


「あ、あのですね……同ランクの冒険者と魔物は、基本的には冒険者の方が強いとされていますが、BランクとAランクに限っては違うんです」

「なんでそんな分かり難くしたんですかね……」


 ルーアさんの説明に溜息を吐きたくなる。

 それを最初から知っていれば、いつぞやのハイオークなんかスルーしてやったものを……


「む、昔はランクがもっと細分化されていたらしいのですが……そそ、それだとランクが一つ二つ上の魔物に勝ててしまう事があったみたいで、それで勘違いをしてしまう冒険者が多かったと聞きました」

「それは今も変わらないような……」

「シ、シラハさんのような事は珍しいのだと思いますよ。街に戻ったらギルドに行ってランクアップの申請をしてみましょう」

「ランクアップって、ランクを簡単に上げられるんですか?」


 そんな制度があるなんて知らなかったよ。

 実はエレナさん、色々と説明を忘れているんじゃ……


「ランクアップはBランクかAランクの冒険者が、本当に該当するランクの魔物を倒したっていう証人になる必要があるからね。わざわざ立ち合ってくれる人がいないから、そういう意味では難しいよ」


 ああ、それは大変そうだ。

 つまり私がDランクになるには、その強さの魔物を証人の前で倒す必要があると……


 私、今のままのランクでいいやー


「話が逸れちまったが、魔物の強さとしてはBランクの魔物ならBランクの冒険者が三人は欲しい。Aランクの冒険者なら一人か二人だな。Aランクも同じようなもんだな」

「じゃあ……Sランクはどうなるんですか?」


 さっきからSランクを話に出してこないけど、冒険者ランクはSランクまであったはずだよね?


「あー……Sランクは冒険者なら、単純にAランクの上という認識だが、これが魔物のランクとなると話が変わってくるな」


 どう話が変わってくるんだろうか……

 ちょっとワクワクして聞いている私がいる。


「Sランクの魔物は、いわば災害だ。勝ち目がないと言われている化け物だ」

「でも今回の調査は、もしかすると竜と遭遇するかもなんですよね? Sランクの化け物がいたら、どうするんですか?」

「Sランクの竜って……属性竜の事だろ? あんなの伝説や御伽噺の存在だから気にする必要はないだろ」



 そっか……父さんは伝説の存在だったんだ……


 今度、帰ったら崇めてあげよう。そうしよう。

 そんな事を考えて、私はクスリと笑ってしまった。



 ちょっと家に帰るのが楽しみだ。




シラハ「今回はランクについての勉強回だったね」

狐鈴「まぁ、細かい事を話すと長くなるから、こっちでは説明しないけどね」

シラハ「面倒なだけでしょ?」

狐鈴「まぁね」

シラハ「認めたっ?!」

狐鈴「本当の事だし。それと読んでる人が疲れそう……」

シラハ「そんな優しさを持っていたなんてっ」

狐鈴「わ、私いつも優しいし!」

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