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そんな顔をしないでください……

 朝になりました、おはようございます。


 外は日の出前で真っ暗だけど、私は今や立派なお尋ね者ですからね。

 こうやって暗がりに潜み、人目を避けて行動するしかないのです。


「お世話になりました」


 私は領主様達にお礼を伝え、屋敷から出ようとするところだ。


「寂しくなるけど落ち着いたら、また遊びにくるのよ?」

「はい」

「私もシラハが、アルクーレに足を運べる理由を考えてみるが……そうでなくとも遠慮なく屋敷に来るといい」

「ありがとうございます」


 私に依頼をしたとはいえ、追われる身となるような事をした冒険者なんて見捨てれば良いのに、本当に領主様達はお人好しだ。


 アルクーレには他にも優しい人がいるけど、それは領主様の影響もあったりするのかもね。


「それでは、そろそろ行きます」


 私は、もう一日くらい滞在しても大丈夫かな……という考えをしまって【有翼(鳥)】を使い翼を広げる。


「本当にシラハちゃんの羽は綺麗ねぇ……」

「はい、本当に……」

「どこか神々しささえ感じられますな」


 私の翼を見てファーリア様とヒラミーさんがうっとりしている。また触られないように気をつけなくちゃね……

 セバスチャンさん、私の翼は元は魔物のなんですから、そんな大層な物じゃないですよ。


「シラハ、何かあればいつでもアルクーレに帰ってくるんだ。いいな?」


 領主様が念を押すように、もう一度そんな事を言ってくる。


 とってもありがたいけど、私が気にしちゃうから、それはできないですよ。と、そんな事を言ったら引き止められちゃうかもだから言わないけど……


 なので私は笑顔を返しておく。


 そして翼を動かして空に舞い上がった。


 当分は帰ってこれない場所だから、私は街を目に焼き付けておく。

 どんどんアルクーレの街が小さくなっていく。


 それが少し寂しくて……


「いってきます」


 そう告げた言葉は、どこか震えていた。











 空を飛び続けて、どれぐらい経ったかな?

 移動速度は速くても、飛行も周りの景色があまり変わらないから慣れてくると退屈だ。

 あ、こういう時にアクロバティックな飛行法とかの練習をしてみたりしようかな……もしかすると戦闘にも使えるかもしれないし。


 まぁ下手すると墜落するかもだから、お家に帰ってからだけどね。



 空を飛んでいると眼下に広がる森に光が走った。


 なんの光?

 そう思っていると、いくつかの木々が倒れていく。


 戦闘!?

 こんな森の中で?


 私は巻き込まれないように距離をとりながら、空を飛んでいるのを見られたら不味いので、下に降りて木々の影に潜む。



 今の私の現在地は、ブランタ王国とガルシアン帝国の国境をちょっと越えた所あたりなので、帝国領に居ることになるんだよね。


 だから、もし知っている人だった場合は関わりたくないんだけど、だからといって危険な状態だったら見捨てるのも後味が悪いし……


 そんな事を考えながら、まさに影から見守っていると四つの人影と何体かの魔物が見えた。



「ていっ、はぁ!」


 一つ目の、――訂正。一人目の人影は、一瞬で魔物を槍で貫いている。



「おらぁ!!」


 二人目が大剣を振るっている大男。

 自分と同じくらいの大きさの大剣を難なく振り回している。化物かよ……



「えいっ」


 三人目はメイスのような鈍器を振り回して魔物の頭をカチ割っている女性。

 大人しそうな顔をしているけど、力あるんだねぇ……



 そして最後の四人目なんだけど……


「一閃!」


 男が手を前にだして、そう口にすると一瞬強い光が掌から放たれる。

 すると離れていた魔物が黒焦げだ。こわっ


 短く切った茶髪に、何処にでもいそうな顔立ち。

 動き易そうな軽鎧に片手剣と籠手。

 パッと見は、どう見ても剣士なんだけどなぁ……


 あれって魔法……だよね?

 でも、そうなると……うーん?



 私が悩んでいる間にも戦闘が進んでいくが、どうやら四人は追い込まれているようだった。


「くっ、おい! 新手だぞっ!」

「嘘でしょう…!」

「ウッドゴーレム……」

「よりにもよってコイツとはっ」


 ウッドゴーレム……なんか木が根を使ってウネウネ移動してきて、枝を手のようにワサワサしながら冒険者と思われる人達を囲んでいる。

 なにやら苦戦モードなので、そろそろ手を出すことにする。

 でも幾つかのスキルは見せたくないので、正直倒せるか不安である。


 私は素早く影から飛び出すと【竜気】と【剛体】による身体強化をかけてから、そのウッドゴーレムとやらに飛び蹴りをお見舞いする。


「せいっ」


 バギャッ! という木が砕ける音と共にウッドゴーレムが吹き飛ぶ。

 以前、ゴーレムと戦った事があるけど、あれは岩で出来てたから、あっちの方が堅くてしぶとかったイメージがあるね。


「誰だ?!」

「助太刀します!」


 私の乱入にいち早く反応する剣士さんに、敵ではない事を告げる。


「助かる!」


 剣士さんが私に感謝だけ伝えると、私が蹴り飛ばしたウッドゴーレムに追撃をかける。

 よくそこまで即座に判断できるよね。どう考えても私怪しいのに……

 っていうか、あれ? まだゴーレム死んでないの?


 するとウッドゴーレムの砕けた部分がモリモリと再生して元に戻っていく。

 治るのはっや!

 何アレ、ズルイ!


「え、あんなのどうやって倒すんですか?」

「って、知らないで助けに来たのかい?!」

「ウッドゴーレムは燃やすか、核である魔石を破壊すれば倒せます!」


 髪が短かったので判別し難かったけど声からして女の人と思われる槍使いの人にツッコまれて、メイス持ちの人に倒し方を伝えられる。


 そうか、あんな再生力を持っていても魔物だもんね。

 魔石を壊せば倒せるか。


 よし……落ち着いて対処しよう。


 ウッドゴーレムの数は残り六体。

 とにかく一体ずつ仕留めていこう。



 私は自分の近くにいたウッドゴーレムに狙いを定める。


 スキルを見られないように……スキルを見られないように……


 私からすれば割と仕方なかったとはいえ、私の力を人に見せ過ぎた気もするので、ここからは一層気を付けなきゃね。



 チラリと周囲を見れば、さっき私が蹴り飛ばしたヤツにトドメを刺し終えたのか違う個体と戦っている剣士の人。


 槍使いの人は、槍でウッドゴーレムを穴だらけにしているけど、突きだけで魔石を狙うのは無理があると思うな……


 大剣の人はウッドゴーレムを二体相手にしながら、真っ二つにしたあとに大剣を横にして広い面でぶっ叩いている。

 完全に力押しだね。


 メイスの人はボコボコに殴って足を潰してから距離をとっているので、時間稼ぎかと思われる。

 倒せなくても一体の足止めをして、パーティーに貢献か……なんかリィナさん達を思い出しちゃうよ。



 なんか問題なさそうなので私も自分の相手に向き合う。

 とは言っても、さっき蹴り飛ばした感じからすると動きを抑える分には問題なさそうなので、気は楽である。


 私はザッとウッドゴーレムとの距離を詰めると殴る。


 ウッドゴーレムが後ろに吹き飛んで木にぶつかる。


 さらに、そこに私が近づいて殴る、殴る、殴る、避ける、蹴る、殴るを繰り返す。

 って本当に魔石どこだよっ!


 なるべく全身くまなく狙っているつもりだけど、魔石らしい手応えがない。


 そこで私は一旦ウッドゴーレムから離れた。


 私が離れるとウッドゴーレムはウゾウゾと体が再生していく。本当に厄介な……


 あそこまで殴っても魔石を潰せないという事は、もしかするとウッドゴーレムは魔石を体内の中で自由に移動させる事ができるのかもしれない。


 それなら魔石がある箇所を絞っていくしかない。


 私は腰を深く落として正拳突きの構えをとる。


「ふぅー……」


 深く息を吐いて敵を見据える。


 そして――


「はっ!」


 勢いよく飛び出し、私に向かってきているウッドゴーレムに拳を打ち込んだ。


 私の拳はウッドゴーレムの体に容赦なく減り込んでいた。


 しかし、それだけじゃウッドゴーレムが止まらないのは分かりきっている。


 私は即座に手を引き抜くと、ウッドゴーレムにプレゼントした置き土産を発動させた。


 すると、ドパァン! という破裂音とともにウッドゴーレムが爆ぜ、上半身が吹き飛んだ。


「は?」


 一瞬、誰かの戸惑いみたいな声が聞こえた気もするけど、気にしたら負けだ。


 私はすぐに二つに分かれたウッドゴーレムを観察していく。


(上半身は動かない……なら魔石は下半身部分だねっ!)


 確証があるわけじゃあないけど、このまま攻撃していても、こちらが消耗するだけなので勝負に出てみた。


 動かなくなったウッドゴーレムの上半身は無視して下半身を削りにかかる。


 私は拳ではなく、指を伸ばした状態で突きを繰り出す。

 たしか貫手(ぬきて)とか言ったっけ?


 その貫手に【爪撃】を併せているので、難なく木で出来ているウッドゴーレムを貫ける。


 空手なんてやった事もない素人が、貫手なんてやったら身体強化していても指をグキっとする自信があるからね。

 真似しちゃダメだよっ!


 何度か突いていると木とは違った感触が指先に触れる。


 見つけたっ!


 魔石と思われる感触を掴むと、ベキベキと木々から剥がしながら魔石を抜き取った。


 このやり方は大蛇以来だね、懐かしい……


 そんな事を思っていると反応があった。


『ウッドゴーレムの魔石を確認しました。

 領域を確認、魔石を取り込みます。


 ウッドゴーレムの魔石の取り込みが完了しました。

 スキル【根吸】【光合成】が

 使用可能になりました』


 む……領域に枠が空きができてたのか……いつの間に。


 魔石を触る時は気を付けていたけど、今回は戦闘中だったので気が回らなかった。


 って、そうだ今も戦闘中じゃん!



 周りを見ると大剣の人が相手にしていた二体を倒したみたいで、今はメイスの人を助けに行っている。


 なので私は槍使いの人を助けることにする。

 剣士の人はウッドゴーレムを倒せないでいるけど、相手の攻撃は問題なく捌けている。


 でも槍使いの人は何度もウッドゴーレムを穿っていたのか、息が上がっていて辛そうだった。



 私はさっき倒した時のようにウッドゴーレムに正拳突きを放ち、上下を切り離す。


 今度は下半身ではなくて上半身の部分が動いていたので、そちらを狙って貫手で攻撃する。



 すると今度は数回突いただけで魔石をぶち抜いてしまった。


「あ……」


 やっちまった感があるけど戦闘中なので仕方がない。うんうん。


「魔石一つに顔色変える必要はないって、それより助かった、ありがとう」


 槍使いの人が息を整えながら声をかけて来てくれた。

 良かった。

 魔石壊して怒られるかと思ったよ。

 倒したの私だから、気にしなくても良いんだろうけどさ。



 すると、剣士の人が戦っていたウッドゴーレムも大剣の人が倒し終えたようだった。


「ぶはー! ウッドゴーレムは倒し難いから辛いぜ……!」

「助かったよ、お疲れ様。ディアンは大剣だから、まだ潰したりできるから良いじゃないか。ディアン以外は、ウッドゴーレムを相手にするのは厳しいからな……」


 ディアンと呼ばれた大剣の人が、地面に大剣を突き立てて、それに体を預けるようにしながらしゃがみ込んで愚痴を溢す。

 そこへ剣士の人が、ディアンさんを労う。


 やっぱり武器の相性とかもあるんだね。



「あ、君。物凄く助かったよ! 俺達だけじゃ退くか、全部ディアン頼みって言う負担を掛ける二択しかなかったから、本当に助かった。ありがとう!」

「いえ、たまたま通りがかっただけですし……」

「え…俺に全部任せるって選択肢が存在したの……? いやぁ本当に助かったぜ嬢ちゃん!」


 私に感謝を伝えながら、剣士の人はディアンさんを戦慄させていた。

 あの数を任されたら、たしかに辛い……


「ほらライオス。お礼も良いけど、場所を移さないと……」

「そうだな。それじゃ魔石を回収して移動しようか。あ…君はどうする?」


 剣士の人、ライオスさんはすぐに移動する事を決めていた。

 それで行動に移すかと思いきや私に話を振ってきた。


「え、私ですか?」

「ああ、近くに仲間がいるのか? いるのなら、そこまで俺達も付いて行くよ。ここを一人で出歩くのは危険だからな」


 ああ、この人は本当に善意でそう言ってるのが分かる。

 疑うとかしなさそうだ。


 それにしても、どうしようかな……

 仲間はいないし……


「と言うか補給とかもしたいし、他にも仲間がいるのなら少し食料とか分けてくれないか? ちょっと……いや結構困ってるんだよね」


 ライオスさんがそう言うと、他の三人も力なく頷いた。


 無いよ、そんな食料。

 とは言いづらい空気だ……


 でも流されて期待させちゃうのは不味い。


 なので私が言える事は一つだけ。



「実は私…迷子なんです……」

「「「「…………」」」」



 希望を見出したところで、すぐに裏切られたかのような表情をする四人。



「なんか……すみません……」



 よく分からないけど謝ってしまう私だった。



シラハ「私の名誉の為に言わせて貰うけど、迷子じゃないんだからね!」

狐鈴「誰に対して言ってるのさ……」

シラハ「これを読んでいる貴方にっ!」

狐鈴「そういうメタい発言はしちゃダメだよ」

シラハ「今更なんじゃない?」

狐鈴「否定はしない」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「シラハ、何かあればいつでもアルクーレに帰ってくるんだ。いいな?」領主様が念を押すように、もう一度そんな事を言ってくる。 シラハ、結局ただ働きでしたか。
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