17話
「本当にどうでもいいと思ってるなら、私はこんなふうに毎日悩まされることもなかった!」
「私は、あの卒業式の日から、君を忘れられたことなんて一度もないッ!!」
「あの幸せな時間が続けばいいのにって、何度だって考えた!学生の間だけなら許されたかもしれない。でも、平民の私じゃ君の隣に立つ資格なんてないから、だから……」
それ以上は言葉が続かなくて俯いた。自分が怒っているのか泣いているのか、だんだん分からなくなってくる。
「……やっと本音を言ったな、お前」
砂糖をだいぶ足したような優しい声が頭の上から降ってきて、キツく握られていた手が離された。
「資格ならこのリアトリス家当主、エルヴィン・リアトリスが許可する」
彼は胸を張りそう告げる。
先程までとは一変した状況に、私は目を白黒させるしかなかった。
「俺はお前との関係を、学生の間だけのことで終わらせる気は毛頭無い」
「へ……あ、え?」
「はは、お前は毎回毎回変なところで鈍いな」
貼り付けたような笑みじゃなく、彼は心から笑っているようだった。こんな笑顔みたの、いつぶりだろう。私は思わず彼に見惚れて動けなくなった。
「本当、昔からそう。戦闘面ではあんなに鋭いのに、なんで恋愛事になるとそう鈍くなるんだ」
そう言いつつ、まだ彼は笑っている。
……やっぱり彼の笑いのツボはわからない。
「抱きしめても?」
そう聞かれて否定できるわけもなくて、私が頷くとすぐに、全身を包まれるようにして抱きしめられた。首に彼の顔が当たって少しくすぐったい。
「はぁ……ずっと、こうしたかった」
耳元で、聞いたことないような甘ったるい声で囁かれるものだから、いつも以上に心臓が跳ねた。
「前みたいに名前を呼んで。……今はふたりきりだから」
「…わかったよ、エル」
様子を伺いにスミス夫人がノックをしに来るまで、私たちはしばらくそのままでいた。
余談だが、部屋から出てきた後スミスご夫妻にとても暖かい目で見られたのだが、流石に何があったか筒抜けとかそういうのではない……よね……?




