13話
雑貨屋に着くと、この世界では中々見ない珍しいものからよく見る品まで様々な商品が並んでいる。ひと目見ただけじゃ使い方も予想がつかない魔法道具が空中にぷかぷか浮いていたり、駄菓子屋にあるようなお菓子の量り売りがあったり。
こういうところの雰囲気は好きだ。心が落ち着く。魔法道具の商品をじっくり見ていると、彼が後ろから覗き込んでくる。
「欲しいもんでもあったのか」
「ううん、見てるだけ」
「そうか」とだけ告げて彼は別のスペースに視線を移す。もしかしたら雑貨屋は興味無いかもしれないと不安だったけど、案外問題は無さそうだ。
「ねーこっちにもなんかあるー!…っわ!!」
ほかのことに気をそらされていた私に、はしゃいで店の中を走っていた子供がぶつかる。完全に油断しきっていたせいで、体幹が崩れてバランスがとれなくなった。
思わず目をつぶる。地面と衝突するかと思いきや、いつまで経ってもその衝撃はやってこなかった。
「おい、大丈夫か」
恐る恐る目を開けると、倒れそうになったところを彼に抱き抱えられていた。距離的にはいつもと変わらないのに、とても近くなったように感じる。「だ、大丈夫」とだけ彼に告げた。
後から来たその子の母親がその惨状をみて物凄い勢いで謝罪してきたが、雑貨屋を出てからも気に止めることもなく上の空だった。
店の外に出てみるとまだ外は明るいようだ。いや、今そんなことはどうでもいい。
あれ、あれ、あれ?
心臓が飛び跳ねてどこかに飛んでいってしまいそうだ。自分ってあんな少女漫画みたいなシチュエーションにときめくような人だっただろうか。
雑貨屋の件から急に忙しなく動き出した心臓に困惑する私に、ひとつの考えが浮かぶ。
これってもしかして、いやもしかしなくても彼に『恋』しているのでは。
それは林檎が木から落下するくらいの速さですとんと腑に落ちた。
そりゃあキスされても嫌と感じなくて、相手の部屋にホイホイあがったり、私の事を嫌いなら期待するからそういうことをしないで欲しいと思うわけだ。
自身の自覚するのが遅すぎてドン引きするレベル。今更意識し始めるとか、もっと早くに気づくでしょ、普通……。
今まで、彼に私の想いを言ったことはない。いや、まあ今気づいたんだからそれは当たり前なんだろうけど。どっちにしろこのまま貰ってばかりでは、フェアじゃない。恋人という最大のアドバンテージもあるのだ、むしろここで言わなくてどうする。
とにかくその言葉を伝えなくては、ということだけしか今は頭になかった。
「ね、ねぇ。ちょっと耳貸して」
彼の腕を両手でくいくいと引っ張ると、彼はわざわざ屈んで耳を近づけてくれた。
「さっきはありがとう。その……そういうとこ、好きだよ」
言った。言ってしまった。
彼の耳から顔をはなすと、彼は腕を組んでふいっと顔を背ける。あれ、またなんか間違えてしまっただろうか。
不安に思っていると、彼の目に負けないくらい彼の耳や首が真っ赤に染まっているのが目に入った。
ああ、よかった。間違えてなかったみたいだ。
●○●○
何なんだ、何なんだよもう。
真剣な顔で何を言うのかと思ったら「そういうとこ、好きだよ」だって?いい加減にしろ。勘弁してくれ。これ以上俺をどうしたいんだ。次に行きたいところでも言うのかとしゃがんだせいで余計にもろにくらってしまった。
いつもかき乱されている分、ちょっとは俺もやり返してやろうと思っただけなのに。くそっ、くそっ!負けた気分だ。ここが部屋なら多分腹いせで枕を叩きまくっている。
普段なら絶対言わないくせに、何でお前はそうやって堂々とそういう言葉を口にするんだ。しかも周りに人だっているんだぞここは。
ああ、もう。ほんと、この……っ。
下から顔を覗き込もうとする彼女にチョップをおみまいした。




