10話
窓から差し込んだ陽の光で目が覚める。
水でも飲もうと起き上がろうとするが、彼に抱き枕みたいに腰をがっちりホールドされていて、起き上がろうにも起き上がれなかった。そうか、昨日はこのまま寝てしまったのか。
仕方なく、昨日より心に余裕がある分、首だけ起こしてあたりの様子をうかがってみる。
彼の部屋は汚いわけでも、キッチリしすぎているわけでもなく、程よく散らかっていて生活感を感じる。男の子って感じの部屋だ。前世でも今世でも彼以外の男の子の部屋にお邪魔したことはないけれど。
部屋を眺めるのにも飽きて、彼に腕をはずして貰おうとその柔らかい頬をぺちぺちとたたく。
「ぅぅ……」と唸りながら、彼は数回瞬きをした。
「おはよ」
「………?おー…」
まだまどろんでいるのか、いつもより反応が鈍い。いつもの偉そうでツンケンした様子はなりを潜め、子犬みたいにぽわぽわしてる。
「あの、水飲みたいんだけど」
そう言うと、彼は何が言いたいか理解してくれたようで、ようやくがっちり抱きしめていたその手を離してくれた。私の力じゃどうにもならないとは……ほんとに力が強すぎだ。ぎゅっとされた拍子に押さえつけられた腰が痛む。これは文句を言ってやらねばなるまい。
「君の(力が強すぎる)せいで腰が痛いんだけど」
「...え、は、はあ?こし、え?」
彼は壊れかけのラジオみたいに「は?」とか「え?」とか言葉にならない言葉を繰り返す。残念ながら流石の私もバグった人間の修理はできない。
「次ぎゅっとするときは緩めにしたほうがいいよ」
「え、あ、ああ…ハグのこと……」
寝ぼけ眼の彼のバグは落ち着いたようで、顔を毛布にうずめる。「知らない間に手出したかと思った……」という呟きは、幸か不幸か私の耳には入らなかった。
「私だったからよかったけど、もしほんとに恋人ができたら気をつけた方がいいよ」
「え」
「え?」
え?




