テルマ&ルイーズ
「お義母さん、離婚されていたんですね」
た、太郎〜〜〜ッウ!
絞め殺す!
叩き潰す!
てか、あんたが悪いわけじゃない。
悪いのは我らだ。
けど、ここに至る道筋、どんなに冷や汗かいて納めたと思ってんのよ。
私、メンタルが完璧に崩壊中。
オババと一緒に、思わず病室から逃げ出して、で、病院の蛍光灯のあかりの下、顔が怖いんで。
私の顔も、おそらく、青ざめたオババの顔と一緒くらい怖い。
その自信、かなりある。
でも、太郎!
な、なんちゅうことを言った。てか、言った瞬間、逃げるしかないって思った。他の方法、選べなかった。
こんな衝撃を味あうなんて、そうそう人生にあるもんじゃない。
あれほど、細心に計画し、叔母の税金破産から守るためってがんばったのに。
『テルマ&ルイーズ』という、ちと古い映画がある。
人生に倦んだふたりの女が、逃げ出すロードムービー。
で、私たちも逃げ出した。
もう、テルマ&ルイーズだった。
この映画、しっかり者のルイーズが、夫にDVされているテルマを助けての、逃亡劇だったんだけど、途中で、なぜか主婦テルマ急成長して、ルイーズを引っ張ってた。
で、なぜか、この場合の私、オババを引っ張って、夜の国道を車で35キロで疾走してた。
「どうしましょう」
「これは帰れんぞ、家に帰るわけにはいかん」
「し、しかし」
オババ、スマホのボタンを押した。
「私だ。そう、アメも一緒にいる。もちろん、あんたの妻だとわかっとる。だから、私が姑なんです」
夫か、私の夫になんで、そんな説明が必要なの?
「いまは家に帰れない……、いや、息子よ、私を信じよ。あんたの妻は守りきってみせる」
ま、守るって、事はそんな大変なんかい。
「とりあえず、家には帰れない。理由? 勝江が怒鳴り込んでくるからであります……、そう勝江です。なにをしたかって? たいしたことはしていませんよ。ただ、勝手に離婚させただけです」
なにやら、夫の声が聞こえたが、オババは無言。そして、スマホの電源を切った。
「あ、あの」
「まったく、あの息子は肝が小さい、小物感があります」
「へ? 私の夫がなにか」
「なんで、そんな馬鹿げたことにアメが巻き込まれてって、怒ってました」
えらいぞ、夫! 言ってやれ、もう、思う存分、言ってやれ!
でもって、運転集中してっから、メールも出せないから。
妻、ただいま、速度45キロにあげて逃走中だから。
オババ、スマホになにか打ち込んでる。
「な、なにしてんですか」
「息子にしばらく旅にでるから、お父さんに連絡しといてと、lineしてます。絵文字って、ややこしいったら」
え! えええええ!
オババ&アメ。
テルマ&ルイーズじゃないんから。
「いえ、帰ります」
「そうか、そうしたいなら、そうしよ。ただな、勝江は怖いぞ」
いや〜〜、もう、いや!
どうすんの。オババ抜きで叔母と対峙!
不可能!
ナポレオンだって、不可能、辞書に書き加えるくらい、そこは不可能!
「で、どこに」
「うむ、まずは、ネズランドじゃ」
うおおおおおおお!
ないないないない!
(つづく)
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映画『テルマ&ルイーズ』
監督:リドリースコット
主演:スーザン・サランドン、ジーナ・デイヴィス
1991年公開のハリウッド映画。
第64回アカデミー賞受賞
90年代の女性版ニューシネマと評された映画。
ロードムービーでもあり、女性の抑うつからの解放をテーマにした秀逸な映画です。
暴力的で傲慢な夫に耐える主婦テルマ、その親友でウェイトレスのルイーズは、ドライブに出かけ、そこで男に襲われ、射殺してしまう。
ふたりは逃避行を続け、これまでのしがない人生の鬱憤を晴らすかのように楽しみます。
犯罪者となった二人を追う刑事ハル。いつしか彼は二人にシンパシーを感じ、助けたいと思いながらも、衝撃のラストシーン。
悲しいラストですが、爽快感いっぱいの良い映画です。
ブラッド・ピッドがまだ下積みのころに出演した映画で、このチョイ役から出演依頼が増え、あっという間に大スターになった記念すべき映画でもあります。その上、同じ役をジョージー・クルーニーもオーディションを受け、落ちてます。いや、その後の二人の活躍を考えると感慨深いです。




