第六十七話 ネガティブスパイラル
ネルソンから語られた内容は、フィガロに暗雲が迫っている事を感じるには十分な内容だった。
内容をまとめると以下のようになる。
まず、船上パーティの際にネルソンがミルフィオリを見かけ、その姿が見知った誰かとダブった事が発端だ。
その誰かとは、旧ガゼンティ王国の第一王女であった、レノア・ゼーンという女性。
レノアはネルソンと同年齢で、ガゼンティ王国がラギウス帝国に併合されて行く争いの中で産まれた。
その後しばらくは行方知れずで、死んだものと思われていたのだが、その二〇年後に起きたガゼンティ開放を掲げるパルチザンとネルソン達の戦いの際に
パルチザンの旗頭であった旧ガゼンティ王の弟、グラハムに匿われていたことが判明したのだ。
パルチザンを撃退し、首謀者としてこの王族の血を引く二人をラギウス帝国に差し出せばフィガロの株は上がるが、この二人は間違いなく処刑される。
当時血気溢れる青年だったネルソンには、王であれば当たり前のように選ばなくてはならない選択を、選ぶことが出来なかった。。
ネルソンは考えた末、パルチザン達に御旗として監禁されていたグラハムを救出し、同盟国であるアンクールに亡命させるというシナリオを描いたのだ。
そして紆余曲折を経て、グラハムとレノアは無事、当時のアンクール王であったドルフ・アンクールによって保護された。
レノア達を亡命させた後は、国の交流の際にたまに顔を見たりなどはしていたのだが、ある時、レノアの結婚が決まってからは、立場に配慮してネルソンはレノアに会わないようになっていった。
一度会わなくなれば、他国の王子と、一般人という関係でしかない。その後は特に顔を見ることもなく、気が付けば二〇年近い年月が経っていた。
そんな激動の時代に、僅か数ヶ月程度であったが一緒に過ごした女性、レノア・ゼーンに、ミルフィオリはとても良く似ていたのだ。
胸騒ぎを覚えたネルソンは、同じくレノアの顔を知っているシャリドに、急ぎアンクールへ飛んでもらい現状を確認したのだが。
その報告の第一報が「グラハム、レノア共に五年前に死去している」というものだったのだ。
さらに半年ほど前から、アンクール王であるドルフが病に伏しているというではないか。
レノア達がアンクールに亡命した経緯を考えれば、その死亡の情報がアンクールからネルソンにもたらされないのは不自然である。
何よりもアンクール王の病の情報が全く入ってこないという事態は、通常ではあり得ない。
そこで思い至ったのがチェリス家だ。
城内で働く文官は、その多くがチェリス家の息がかかった者達であり、特に外交官はチェリス家の縁者が殆どを占めている。
チェリス家がその気になれば、国外の重要な情報を王に意図的に知らせないという事も十分可能だろう。
しかしそれはつまり、チェリス家が良からぬ意図を持っているという事に他ならなくなる。
さらに言えば、王が病に伏せたなどという情報は、通常であれば同盟国には遅くとも数日以内に早馬で届くものだ。
アンクール側からもそれが無いという事はどういう事か。
にわかには信じ難い事ではあるが
アンクール王家とチェリス家が双方共に良からぬ事を企んでいる……という可能性が浮上する。
勿論、まだ決定的な証拠は何も無い。
チェリス家が怪しいと考えたのも状況から見ての事であるし、単に些細な行き違いの結果そうなっているという可能性も無くはない。
しかし、ネルソンの関わった旧ガゼンティの王族二人、そしてそれを助けたアンクール王、それらの不幸が全て秘匿されていたとなると、悪い方向に考えるなという方が難しい。
仮にどこかで何らかの陰謀が動いているのだとすれば、まずはその正体を掴まなければならないのだが、この場合、ただチェリス家に事情を説明させれば良いという問題ではない。
アンクールはフィガロの同盟国であるし、こことの関係に不用意に亀裂を入れる訳にはいかない。
仮に会談を申し入れたとしても、アンクール側に良からぬ考えがあるのであれば本当の事など聞けるはずもないし、下手に動けば自分の首を締める事にもなりかねない。
そして国内に謀反の芽がある可能性が考えられるとなれば、これは非常に厄介な事になる。
内部に対しては、公に調査などする訳にはいかないのだ。
事が事だけに、調査した結果、皆がシロでしたとなってもそれで終わりとはいかなくなる。
一度蔓延した不信感は、しばらく消えずに燻り続けるだろう。
そこから本当に叛意を持った者が出てきてしまったのでは元も子もない。
今、国内でいざこざを起こす訳にはいかない。
仮にフィガロで内乱が発生したなどという事になれば、間違いなくラギウス帝国が介入してくる。
そうなればフィガロは最悪な形で、瞬く間に帝国の一地方に統合されてしまうだろう。
今のネルソンが頼る事のできる人間は多くない。
今日の会合が、先日の船上パーティの面々に絞られているのは、そういう意図があっての事だったのだ。
先王や自身が国を変えようとして取り込んだ厄介者の集団が、今ではネルソンが唯一、無条件で信用できる者達になっていた。
「出来の悪い王だと笑ってくれ……あの船の上で違和感を抱くまで、そんな事になっているなんて全く気付かなかったのだからね」
そう言って珍しく自虐的な言葉を吐くネルソンの顔は疲れ切っていた。
恐らく、家族にすら下手に話せない中で、様々な可能性を検討してきたのだろう。
ろくに寝ていない様子が見て取れる。
「今日スコルピオ殿を護衛に選んだのは何故でしょうか? ネザー家はもう安全だという事ですか?」
俺はシエルにミルフィオリを呼んでもらい、それを待つ間に気になった事をネルソンに聞いてみた。
他貴族がどう繋がっているか分からないうちに、自分達と接触しているところを見せるのはまずかったのではないかと思ったからだ。
「……半分は賭けのようなものだよ。
だがネザー家がきな臭い事に加担している可能性は低いと思った。
ネザー家は武門の家だからね、彼らの影響下にある軍関係者は、フィガロ全兵力の半数にも及ぶ。
これがもし私の失脚なり何なりを狙ってチェリス家と繋がっているのだとすれば、もう何の根回しも必要無いはずだ。
アンクールからの重要連絡が途絶えたのが少なくとも半年前……これだけの時間があれば、もうとっくに何らかの行動を起こしているよ。
それにエルネスタからも、軍内部でおかしな動きは確認されていないと聞いているしね。
あとは個人的な話になるが……実はスコルピオの事は、昔からよく知っているんだ。
二〇年前の戦いの時も、彼は私達に付いてこようとしていてね……まだ軍に入ったばかりで見習いの立場だったのだが、仲間の仇を討つのだとすごい剣幕だったよ。
若過ぎるということでさすがに連れ戻されたんだけど、彼の中ではずっとそれが心残りとなっていたのだろうね。
その後、正規兵となった時には既に周囲を凌ぐ力を身に着けていて、フィガロ初の見習いから即十人長就任となった。
初めは“貴族枠”なんて陰口も叩かれてはいたけどね、今ではこの通りさ。
彼は誰よりも仲間を大切に思っている。見習いから将軍まで、軍籍を持つ者は全て彼にとっては国を守る仲間であり、家族と同じなんだ。
だからそんな彼が、国を割る事になるような謀に乗るとは思えなくてね……こんな時に甘い話ではあるのだが、私は彼を信頼しているんだよ」
そう言って、昔を思い出すようにゆっくりと語るネルソンを見て俺は思う。
ネルソンは基本的に他人を疑わない人間なのだ。
それは恐らく、先王から受けた教育の影響が大きいのだろう。
先王フェリオンは政治闘争で肉親を亡くし、その影響で自身の子を一人しか儲けないという、時代や立場にそぐわない行動に出たと聞く。
彼はきっと、この小さな国の中にあって、身内同士で争い合う事の愚かさを嫌というほど味わったのではないだろうか。
だから彼はネルソンに、人を疑うよりも、信用する事に重きをおいた教育を施したのではないだろうか。
それは様々な思惑が交差する王宮内においては、まさに諸刃の剣、賭けのような手段だったに違いない。
ただ他人を疑わないだけの王では、すぐに誰かに利用されてしまう。
だからこそ、ネルソンには物事の正否を正確に読み取れるだけの能力が必要だった。
そして……それでも迷った時に、掛け値なしに信じる事の出来る友という存在も、絶対に必要だったのだ。
そのおかげで俺はここにいる事が出来ている。
そして、どうしようもない時に頼れる友も、ネルソンには大勢いる。
共に背中を守り合い、命を預けた仲間達が。
フェリオンはこうなることを予見していたのだろうか。
そうではないにしても、彼が行った事は巡り巡って、今確実にネルソンを助けている。
ネルソンが先王フェリオンを「偉大な父」と言っていた気持ちが分かったような気がした。
ネルソンの話が終わってすぐ、ミルフィオリがシエルに連れられて家に入ってきた。
その顔は心なしか緊張しているように見える。
面識があるとは言え国王がそこにいるのだ、無理もないだろう。
「ミル、こっちに来て座ってくれ、陛下がお前に聞きたいことが有るそうだ」
少しでも緊張を和らげられたらと、俺の隣にミルフィオリを座らせる。
ミルフィオリは俺を見た後に、ネルソンに向かって一礼をして椅子に腰を掛けた。
「……お話とは、母の事でしょうか」
どう切り出そうかと考えていた所、ミルフィオリは真っ直ぐ前を向くと、ネルソンに向かってそう切り出した。
ネルソンは少しだけ驚いたような顔をし、そして真剣な顔で頷くと、ミルフィオリがゆっくりと、自身の生い立ちを話し始めた。
「何という事だ……レノア……」
ミルフィオリが全てを話し終えた後、ネルソンは顔を抑えてテーブルに突っ伏していた。
余程ショックだったのだろう。
ミルフィオリの話した内容は衝撃的なものだった。
まさかそんな偶然が……と俺自身、運命の悪戯というものを感じずにはいられなかった。
ミルフィオリの母はネルソンが予想した通り、旧ガゼンティの第一王女、レノア・ゼーンであった。
彼女はアンクールに保護された後、しばらくは叔父であるグラハムとアンクール郊外の一軒家で暮らしていた。
その特異な立場上、ラギウス帝国に居場所がバレてしまうと問題が起きるため、表舞台に出る事は許されなかったが
アンクール王家とフィガロから出る支援金で、不自由の無い生活は送れていた。
レノアが後にミルフィオリに語った話では、この数年間が、彼女の人生で最も心安らいだ時間だったそうだ。
しかし、そんな穏やかな生活も長くは続かなかった。
ある時レノアは、その凛とした美しさに惹かれたアンクールの第一王子、カシアス・アンクールから求婚を受ける事になる。
一度は断ったものの、レノアは自分達の立場を考慮し、後に何度目かの求婚を同王子より受けた際、とうとうその申し出を受ける事となった。
そうして、レノアは既に妻子のいたカシアスの妾として、アンクール王家に入ったのだ。
勿論、表沙汰に出来ない身分のため、その話は非常に限定された人間しか知らなかったそうだ。
その後、レノアとカシアスの間には一人の女児――ミルフィオリが誕生する。
祝ってもらえる家族も友達もいないような状況ではあったが、それでもレノアはそれなりに幸せだったそうだ。
それから十年程の月日が経ち、ミルフィオリが十一歳になろうとしているある日の事だった。
レノアがグラハムの家で、ミルフィオリの誕生日の事について話し合っていた所、突然数名の暴漢に襲撃を受けたのだ。
その場は辛くも撃退したのだが、誰かに雇われたような事を口走っていた暴漢の言葉にただならぬものを感じたレノアは、急ぎ自身の邸宅へ戻りミルフィオリを保護した。
そして夫であるカシアスに事情を説明しようとしたところで、またもやレノア達は襲われたのだ……今度はアンクールの兵士に。
その後どうやってアンクールを出たのかまでは、詳しく覚えていないらしい。
だが、グラハムとレノアが兵士と戦いながら、ミルフィオリの手を引いて走った。
そして、その過程でグラハムは深い傷を負ってしまったのだそうだ。
一緒に逃げることが難しくなったグラハムと泣く泣く別れ、最後にグラハムに言われた通りにフィガロを目指した。
十歳の娘を連れての旅は困難を極めたが、村々を渡り、馬小屋や納屋などで夜を明かし、身に付けていたものと食料を交換しながら、数日かけてようやくフィガロにたどり着いた時には
二人はとても王族の関係者とは思えない程みすぼらしい姿になっていたそうだ。
だがそれがかえって二人の命を救う事になった。
フィガロにいるネルソンに助けを求めようと、城下町に入る為の検問所に並んでいた時に、アンクールの兵士がやってきたのだ。
その兵士は並んでいたレノア達には気付かずに検問所へ行き、何やらフィガロの兵士と話した後に、アンクールの方へと戻って行った。
レノアはこの様子を見て、既にフィガロでも自分達が手配されていると考えたようだ。
城門を抜ける事を諦め、そのまま壁の外の下町の一角に逃げ込んだ。
そこから先は、いつかミルフィオリから聞いた話の通り。
何も持たない女二人が生きていくには、体を売る以外に手段が無かった。
体を売っては、その日食べるパンの代金を稼ぎ、それで命を繋いでいく。
始めの頃は、自分達が襲われた原因を探ろうともしていたが、余りにも過酷な生活は、そういった真実の探求へ向ける気力も次第に奪い去っていたのだ。
自分達が消されそうになったのは、自分達の存在が不都合になったからとしか考えられない。
そういう事情であれば、フィガロにとっても自分達は都合の悪い存在である可能性が高い。
ダメ元で自分が出て行って、もしそこで殺されたら、ミルフィオリは誰が守るというのか。
そう考えると一か八かの行動も取れず、気が付けばフィガロの下町に息を潜めて三年が経とうとしていた。
そうして慣れない環境の中、あまりに過酷な仕事と貧しい生活で病を患ったレノアは、ある日とうとうそこから持ち直すこと無く逝ったのだそうだ。
息を引き取る間際に、自分の知る全てをミルフィオリに話して……
「こんな近くにいたと言うのに……何故私は、何も出来なかったのだ」
ネルソンが腹の底からひねり出すような無念の声を上げる。
壁の外とは言え、フィガロ王都のお膝元で五年もの間、何故どうにも出来なかったのか。
一見、何とでもなりそうな状況のように見えるが、実はそうではない事がミルフィオリの話から分かった。
まずレノアは、自身がお尋ね者として手配されていると考えた。
なので、長かった髪を切り、衣服も貧民の物に変えて、粗末なボロ屋を借りて暮らしていたのだ。
それでもレノアの場合はどこで自身を知っている者に会うか分からない。
外に出るのはもっぱらミルフィオリの役目だった。
城壁の中に入るには、検問所を通らなければならないのだが、その時のレノアの立場からすれば、それは本当に一か八かの賭けになる行為だった。
それをくぐり抜けたとしても、フィガロ側も今回の一件に絡んでいたのだとしたら、何の意味もない。
むざむざ殺されに行くようなものだ。
レノアや叔父のグラハムが襲われる理由など、レノア達の出自が原因となっている以外に考えられない。
となればこの件に関係している可能性があるのは、ラギウス、アンクール、そしてフィガロだ。
レノアの記憶にあるネルソンがそんな人間だとは思いたくなかったが、フィガロが無関係だという確証が無い以上は、迂闊には動けなかったのだ。
また、貧民としての生活は想像以上に厳しいという現実も、行動を起こせなかった理由であった。
女二人で手持ちもツテもない、しかも身分は明かせない。
こんな状態で日々の生活の糧を手に入れるという事は、並大抵の苦労ではない。
レノアは否応なく、すぐに辛い決断をせざるを得なくなった。
つまり、女を使った仕事をする以外に無かったのだ。
レノアは娼婦としては歳が行っていたが、その割に整った見た目と話術で、何とか客を取ることはできていた。
しかし所詮下町の客を相手にする商売、しかも訳あり人という事で得た収入も元締めに殆ど取られてしまう。
安宿の維持と日々の食事で精一杯な毎日だったのだ。
先の見えない毎日というのは、人間の感覚を麻痺させる。
レノアはいつしか、自身がこうなった原因の追求を諦め、その日を生き抜く事しか考えられなくなっていた。
そして病を患い、とうとう自身に起きた不幸の真実を知ること無く、三七歳でこの世を去る事になったのだ。
手が届くほどの場所に三年もいたというのに、気付かずに死なせてしまった。
それを知ったネルソンの絶望はいかばかりだろうか。
だがそうとばかりも言っていられない、何故なら、アンクールで良くない事態が起きている事は確実となったのだから。
そして、フィガロも健全とは言い難い。
ミルフィオリの話では、レノアがフィガロに逃亡してきた際、アンクールの兵士がフィガロに来ていたというではないか。
しかしそのような報告はネルソンは何も受けていない。
状況からして十中八九、レノア達の行方を問うような内容だったのだろうが、それならば尚更情報が上がってこないはずがないのだ。
つまり、フィガロ内部のどこかで意図的に情報が握りつぶされていた可能性が高くなったという事だ。
「どうだろう、君だけでもフィガロで保護をさせて貰いたいのだが」
「大変勿体無いお申し出ですが、今の私は旦那様に仕える身です。母の事を思っての事であれば、そのお気持ちだけで十分でございます」
長い沈黙から立ち直ったネルソンが出した提案に、ミルフィオリは考える素振りも見せずにそう言って丁寧に断りを入れる。
俺自身は、ミルフィオリが即座にネルソンの誘いを断ってくれて非常にほっとしてた。
王家に保護された方が良い生活が送れると思う反面、自分の側にずっといると言ってくれた女性が離れてしまう事に不安を感じていたからだ。
実際、今ではミルフィオリの行っている事務作業はかなりの量になる。
子供達の間ではシエル二号と呼ばれるくらい、繊維事業関連の雑務を多岐に渡ってサポートしてくれているのだ。
「ミル……いいのか? 陛下の所に行けばお姫様待遇だぞ」
「旦那様は私がもう必要ありませんか? いらないと仰るのであれば考えますが……」
「い、いや、そんな事はない、ミルがいないと凄く困るよ」
「ではそのような事は仰らないで下さい」
いてくれるのは嬉しかったが、それでもミルフィオリの利益になるのはどちらかと言えば王室に保護される方だ。
俺達がいる手前、遠慮して言い出せないでいるだけだとしたらまずいと考えた俺は、確認を取る意味で言ってみたがこれが失敗だった。
ミルフィオリは俺の言葉にムッとした様子で反論し、話が終わった後も少しだけ機嫌が悪そうな顔をしていた。
また余計な事を言ってしまったな……
「そうか……そうだな、今は城内に置くよりは、もしかしたらこちらのほうが安全なのかもしれない」
ネルソンはミルフィオリの返事に少しだけ落胆しつつもそう口にした。
アンクールとフィガロ、このどちらか、あるいは双方で暗躍している影がある事は確実となった。
しかしその正体は未だ掴めていない。
「とにかく、旧ガゼンティ王族の暗殺事件と、アンクール王の病が隠蔽されている件、これについて早急かつ秘密裏に調べる必要がある」
「では私は信頼できる部下に、アンクール周辺の人の出入りを探らせましょう。
父上だけでは得られる情報にも限度があるでしょう。十名ほど常駐させ、実態から噂に至るまで徹底的に調べ上げます」
アランの申し出にネルソンは頷き、次にフェリスに目をやる。
しかしフェリスは何か考え事をしているように、心ここにあらずといった様子で自分の手元を見ていた。
「フェリス殿」
ネルソンがかけた言葉に驚いたように肩を跳ね上げて頭を上げる。
フェリスにしては珍しい光景だ、まさか居眠りしていたという訳ではないだろうが……
「な、何であろう?」
「フェリス殿には国内調査と、アンクール間での情報のやり取りについてご協力を願いたいのだが、良いだろうか」
「う……うむ……」
フェリスはネルソンの要請に、生返事を返すのみだった。
いつもの自信に満ちた様子はどこにもない。
どうしたのだろうか……体調が悪いのか?
「フェリス、どうしたんだ? 具合でも悪い?」
「うむ……いや……」
俺の問い掛けにもフェリスは言葉を濁すだけだ、何かがあるのだろうが、ここでは言い難い事なのだろうか。
ここにいる面子は俺達の事情をほぼ全て知る人間だけだ、その中でも言い難い事とは何だろうか。
「すいません陛下、少しだけお待ち下さい」
俺はすぐにネルソンに断りを入れると、フェリスの手を取った。
国王の前で席を立つのは失礼だとは思ったが、今は非常時だ、特にフェリスに何か不調があるのであれば確認は早い方がいい。
言い難いなら事があるなら二人で話すまでだ。
皆も様子がおかしい事は気がついたのだろう、特に反対するものはおらず、ネルソンが短く頷いたのを見てから、俺はフェリスと共に二階へと上がっていった。
二階の自室に入り、フェリスをベッドに座らせる。
フェリスは話し合いの場から抜けて来た事を気にしているようだ、落ち着きのない様子で俺と床を交互に見ている。
「主よ……妾の事は良い、早く戻らぬと……」
「良い訳ないだろう、あんな辛そうにしていて……何かあったんだろ?」
「う、うむ……だが、これは妾の問題である、主が気に留める必要は無い……のじゃ」
そう行って俯いたまま頑なに説明を拒むフェリスに、俺の心は僅かに曇る。
「俺にすら話せない事とは何だ、俺はフェリスの何なんだ」という言葉が喉まで出かかった。
しかしそれを既の所で押し留めたのは、膝の上に置いたフェリスの手が、固く握られているのを見たからだ。
また一時の感情で先走ってしまうところだった。
そうだよ、フェリスが俺を信用していないはずがない、それだけは何があっても疑ってはいけない部分だったはずだろう。
俺は二、三度呼吸を整え、フェリスの前に膝をつくと目線を合わせた。
それにつられてフェリスも俺の顔を見る。
「俺達は夫婦だろう、なら、フェリスの悩みは俺の悩みだ」
そう言って俺はフェリスを抱きしめた。
恐らくフェリスは何か判断に迷う問題を抱えている。それもかなり際どい話だ。
仮に本当に何でもないような問題であったのなら、フェリスは迷う素振りすら見せないはずだからだ。
俺が異変に気付いてしまう時点で、それはもうフェリスからのSOSに他ならない。
それを放って置くなど、出来るはずが無いではないか。
「すまぬ……すまぬ、主よ、このような時に……」
抱きしめられたフェリスは、そう言って俺の腕の中で泣いていた。
いつからなのか分からないが、フェリスはずっと一人で悩み続けていたのだろう。
俺の周囲を取り巻く環境が目まぐるしく変わる中で、俺の事を優先するあまり、自身の問題に手が付けられなかったのだろう。
相談しろというのは簡単だが、相手の事を思うあまり、相談できない場合だってあるのだ。
俺だってフェリスの悩みを解決する為なら、俺の事情など後回しにしてしまうだろう。
そうなる事が分かっていたからこそ、ずっと言い出せなかったのだ。
俺はフェリスが落ち着くまで背中を撫で続け、目に溜まった涙をハンカチで拭き取った。
やがて落ち着いた彼女は、自身に起きた問題について語り出す。
「マイバッハとの繋がりが……消えてしまったのじゃ」
マイバッハとは、フェリスが封印されていた洞窟にいた、フェリスの下僕であるガイコツ執事だ。
俺がフェリスを封印された洞窟の外に出した後、フェリスを封印した天族の動向を警戒するためにマイバッハは一人洞窟に残った。
まだ数ヶ月前の話なのだが、もう随分と昔の事のように感じる。
フェリスが言うには、下僕となった者はその主の持つマナに影響を与えるらしい。
そして、主であるフェリスは、下僕達の存在や、ある程度の位置を感じる事が出来るのだそうだ。
その繋がりが切れた……つまりそれは、マイバッハが何者かによって排除された可能性があるという事を示す。
そうなってくると、最も考えられるのはフェリスを洞窟に封印した張本人。
天族の一人、慈悲王メローテが現れたという可能性がまず第一に浮上する。
あの洞窟はメローテによる封印が施されており、生命がある者はそれを越える事ができないはずだからだ。
マイバッハはフェリスと共に洞窟の中で数百年を過ごし、フェリスを地獄のような孤独から救った、まさに家族のような存在だ。
その家族が殺されてしまったかもしれないとなれば、それは穏やかでいられるはずがない。
本当ならば今すぐにでも、あの洞窟に飛んでいって確かめたいところだろう。
しかしそれを実行するには様々な危険が伴う。
さらには数日で行って帰れるような場所でもない、その間、俺の側を離れる事が不安だったのだろう。
ただでさえ様々な問題が日々起きているのだ、それらを投げ出して自分の問題だけに向き合うという事は、フェリスには出来なかったのだ。
話を聞いて、俺はすぐに今の状況を洗い直す。
確かにタイミング的には最悪だ。俺達はこれから様々な問題を同時進行で解決して行かねばならず、それを行うにはフェリスの力も非常に重要となってくる。
あの洞窟は、ロシュフォーン王都からそれほど離れていない位置にあったはず。だとすると、馬車で急いだとしても片道五日程度はかかるだろう。
現地で何かトラブルあればさらに帰還が遅くなる。
今この時に、十日以上の空白期間を果たして許容できるか……正直難しいと言わざるを得ないのが実情だ。
この見えない敵が暗躍する中でその実態を掴むには、フェリスの調査能力は必要不可欠だ。
しかし代わりの誰かに洞窟の調査を頼むにしても、人選が限られる。
行った先にはガイコツ執事か、最悪の場合は天族がいるかもしれないのだ。
それに対応可能な人物となると……
「フェリス、分かっているとは思うけど、俺達の間でこういう隠し事はナシだぞ」
「……済まぬ。主の負担になるやも知れぬと思うと、どうしても言い出せなかったのじゃ」
本当はすぐにでも確認に行きたかった事だろう。
しかし自身を取り巻く状況がそれを許さない。
俺だって今のフェリスの立場なら、同じように黙っていたはずだ。
何せマイバッハの生存は現時点では絶望的であり、今の状況を考えれば、その確認は決して優先度の高い作業ではないのだから。
しかし当たり前だが理屈と感情は別なのだ。
家族にも等しい存在の安否が気にならないはずが無い。
フェリス程ではないだろうが、そういう気持ちは俺にもある。
「主よ……ありがとう、もう大丈夫じゃ。
マイバッハの事は……ナーガが戻ってからとしよう、それまでにこの国の問題を片付けねばな」
溜め込んでいた事を打ち明けたからだろうか、先程よりは幾分楽になった表情でフェリスは俺の目を見る。
強がりでは無いだろう、フェリスはフェリスなりに今できる事と出来ない事を再確認し、そして決めたのだ。
マイバッハの事は後回しにすると。
理屈を優先するのが正しいのだと。
「ん? 何を言ってるんだ、全部片付けるに決まってるだろう」
「何!? で、であるが……今ロシュフォーンに行く余裕は……」
俺の予想外の言葉に、フェリスは目を丸くする。
無理も無い、何度考えても同じ答えにしかならないはずなのだから。
今そちらに回す余力はない、そういう答えしか出てこないはずなのだから。
だが俺は最近学んだばかりだ。
どうにもならない時は、どうすれば良いのか。
「ああ、俺達には余裕は無い。だから……他の人間を頼る」
どうしようもない時は、誰かに助けを求めるのだ。
その後フェリスと共に一階へ戻った俺は、ネルソン達に状況を簡単に説明した。
ネルソン達からすればまさに寝耳に水の話で、更に言ってしまえば、フィガロの人間からすればかなりどうでも良い部類の問題に入るだろう。
万一、ネルソン達から「そんなどうでも良い話」というような言葉が出たとするなら、その時は俺達も遠慮なくロシュフォーンに旅立てば良い。
しかし流石というべきかやはりと言うべきか、ネルソン含め頭の回る者達はそのような愚は犯さなかった。
俺達の話を真剣に聞き、こちらから代理調査を願い出る前に、代わりの者に調査を依頼する手段を提案してきたのだ。
理由は単純で、もし調査に向かった先でフェリスと天族が鉢合わせるような事が起きれば、そこから大事件に発展してしまう可能性が少なくないからだ。
そうなればフェリス自身の身が非常に危険なのは勿論の事、何らかの方法で背後関係などを洗われてしまえば、フィガロも同じく危険に晒される事になる。
かといって放っておけとは言えない以上、最も危険が少ない方法は、信頼のおける代理人を選出してその人間に調査してもらう事となる訳だ。
「そうなると問題は人選だが……」
ある意味他国への潜入捜査……スパイ行為と言えなくもない任務だ。
最悪の場合、自害してでも秘密を守る必要が出てくるかもしれない。
それにロシュフォーン王国にある程度詳しい人間でなければ、円滑な調査は難しいだろう。
さらには調査対象がフェリスの眷属である、俺達の事情にある程度通じていないと話にならない。
ネルソンは首をひねって考え込む仕草をするが、これだけの条件を満たせる人間など数える程度しか存在しない。
そして俺は既に、頼むべき人間を半ば決めていた。
「陛下……実はこの件を依頼できる人物に心当たりがあるのですが……」
「ではノア君からその者に個人的に依頼を行ってくれたまえ、仮に軍属の者であるなら特別休暇を許可するよう取り計らおう」
「ご配慮に感謝します」
何とも茶番じみたやり取りではあるが内容が内容だ、国王から部下への命令という形にする訳にはいかない。
ネルソンも既に候補者には当たりがついているのだろうが、これはあくまで一市民である俺からの依頼という形にしなければ都合が悪いのだ。
こうして、些細な発見から思いも寄らない方向に話が進みだした秘密会議は終了し、簡単にではあったが、各人の今後の方針がまとまった。
エスカリオ家は今後も継続してアンクールの異変を調査、並びに諸外国の動きを探る。
フェリスはその高い捜査能力を活かし、秘密裏に国内の人間を探る。
ユミナは今まで通り城に通い、王女の護衛を兼ねた情報収集を行う。
ミルフィオリを始めとした子供達は、今まで通りに縫製会社で作業を行う。
そして、シエルはかねてからの宣言通り、近日中にグラーナ島へ向けて旅立つ。
しかしこれに関しては良い知らせもあった。
エスカリオ船団の旗艦であるトルネード号が修理中で、次の航海時期が決まっていない事もあり、バルドルが小型船でグラーナ島までシエルを送り届けてくれる事になったのだ。
グラーナ島周辺の魔獣達は、シエルがいれば対処可能という事らしい。
これにより当初予定していたよりもずっと短い期間でシエルの里帰りが実現する事となる。
バルドルも初めて訪れる事になるグラーナ島に興味津々の様子で、非常に乗り気だった。
秘密会議も終わり、ネルソン達は何事もなかったように帰路についた。
結局護衛の皆とは話すタイミングが無く、フラガと少し話しただけで終わってしまった。
せっかくだからスコルピオの性格などを把握しておきたかったのだが仕方ない、またの機会もあることだろう。
それにしても、マイアとなっているエルネスタは最後まで一言も言葉を発しなかった。
事前にエルネスタだと知っていなければ、同一人物が入っているとは思えない変わりようだ。
……本当にあれはエルネスタだったのだろうか? それすら疑わしく思えてくる。
食事と風呂が終わり、自室で今日あったことをそんな風に思い返す。
俺のやることは変わらない。
近日中にプランを立てて、アリスの帰郷を助け、エルフ族との同盟を締結する。
その方針に変更は無かった。
無茶だろうが何だろうが、もうやるしかないのだ。
とりあえず明日は溜まっている小さな約束を消化していかなければな……
そんな事を考えながら、ベッドに入ろうとしているそんな時、不意に部屋の扉がノックされる。
今の時間に誰だろう、フェリスもユミナもノックなんてしないし、シエルは今日は別の部屋で寝ているはずだ。
「誰だ?」
扉に向かって声を投げると、その向こうから小さな声で「ミルフィオリです」という声が返ってきた。
こんな時間に何の用だろうか、今日は色々あったから、業務報告も止めて早めに休むように言っておいたはずだが。
不思議に思いつつも入るように促すと、ゆっくりとドアが開き、ためらいがちな表情でミルフィオリが入ってきた。
普段着かと思いきや、寝間着姿に変わっている。
「どうした、何かあったのか?」
自分の部屋に寝間着の女の子がいる。
非常に心揺さぶられる状況ではあるが、さりとて俺も既に妻が三人もいる身。
こういう状況にはさすがに慣れ始まっていたので、以前ほど狼狽える事も無く対応できるようになっていた。
「申し訳ございません……少し、眠れなくて」
そう言って小さく頭を下げるミルフィオリは、確かにいつもの元気がなさそうだった。
無理も無い話だろう、今日は色々あったし、辛い事も思い出させてしまったのだから。
だがしかし、何という事だろうか。
俺はこういう時に、何と言って慰めたら良いのか全く思い浮かばなかったのだ。
「大変だったね」とか「元気だしなよ」とか「皆が居るよ」とか、そんな当たり障りのない、どうでもいいような言葉が頭に浮かんでは消えていく。
ミルフィオリも部屋に入ったきり、何を言うでもなくただ俺の前に立って、俺の目を見つめていた。
場に慣れはしたが、女性の扱いは全く進歩していない。
そんな自身の気の利かなさに軽く自己嫌悪に陥りながら、何か話さなくてはと焦りばかりが積もってゆく。
「一緒に寝るか?」
そうしてやっと出た言葉がこれである。
全くそんなつもりは無いのだが、これではただのスケベオヤジではないか。
もっと上手い言い方があるだろうがと頭の中で自身に突っ込みを入れながら慌てて訂正の言葉を探した。
「はい……ありがとうございます、失礼致します」
しかしミルフィオリは俺のそんな心中を知ってか知らずか、そう言って俺の隣にちょこんと座るとそのままベッドの中にもぞもぞと入っていく。
……どういう事だ? 何のつもりだ?
ミルフィオリの真意が把握できず、俺はそのままベッドに座りながら、潜ったミルフィオリを観察する事しか出来ない。
ここにフェリスやユミナが入ってきたらどう良い訳しようか。
情けない話だが、そんな事ばかりを考えていた。
「旦那様……」
ベッドに頭まで入ったまま、ミルフィオリが俺に話しかける。
それは対話を求めているような話し方ではなく、独白のような、懺悔のような、そんな悲しい音色を含んでいた。
「陛下は……とても良いお方でした。
もし……私があの時、勇気を出して城まで助けを求めに行くことが出来ていたら……母は、死なずに済んだのでしょうか……」
ミルフィオリが震えながら口にしたその言葉で、俺の中にあった下らない思考は全て吹き飛んだ。
聞こえてきたのは狂おしいほどの後悔、そして、とても深い絶望。
慎重になり過ぎたが故の悲しい結末。
救いがすぐそこにあったのに掴む事が出来なかったという後悔の念が、ミルフィオリの中で荒れ狂っていた。
「私……わたしが……お母様を不幸に……殺してしまった……」
「それは違う!」
まずい。
俺の脳裏に警報のようなものが鳴り響く。
すぐに毛布をめくり上げると、そこには胎児のように丸まって、大粒の涙を流しながら泣いているミルフィオリがいた。
自慢にはならないが、自虐の事なら他人より詳しい自信がある。
これはまずい自虐だ。
自分で自分を追い詰めて、自壊していくパターンだ。
俺はすぐにミルフィオリを抱き上げると、思いっきり抱きしめる。
体と体を密着させ、他人に抱かれているという感覚が隅々まで伝わるように、広範囲に強く。
「それは違うぞミル、それは決してお前の責任なんかじゃない」
俺はミルフィオリを抱きしめながら、何度も何度も呼びかけた。
ミルフィオリが後悔を口にする度に、それを否定する。
そしてミルフィオリが必要だと何度でも語りかける。
そんな事を数え切れないほど繰り返し、気が付けばミルフィオリは俺の腕の中で静かに寝息を立てていた。
寝てしまったミルフィオリをそっとベッドに横たえ、毛布をかける。
そのまましばらく観察するが起きる様子は無く、表情も穏やかだった。
危機は去ったのだ。
皆の前では常に毅然としていて、皆のまとめ役、お姉さん役。
そういう普段からしっかりしている人間ほど、一度崩れると危険なのだ。
しっかり者はガス抜きが出来ない場合が多い。
自分の上には気軽に相談できる人間がいないから、貯めに貯めたものが何かの拍子に爆発すると、それはもう大惨事になる。
今まで何度もそれで潰れる人間を見てきた。
自分がうまく動いていれば、大切な人が死なずに済んだ。
これの破壊力はどれほどだろう。
しかし実際は、過ぎ去った事に“もしも”など存在しない。
ここでミルフィオリがいくら自分を傷付けたとしても、それは誰の為にもならないのだ。
だが、分かっていても考えずにはいられない。
そういうものなのだから仕方がない。
こういう時は、とにかく一人にはならない事だ。
誰かが常に側にいて、できるなら誰かにずっと触れているのが望ましい。
他人の体温を感じる事そのものが、救いとなるのだ。
俺はミルフィオリの乱れた髪を撫で、横になりながらその体を軽く抱きしめる。
ずっと俺に仕えてくれると言ってくれた少女、それをこんなところで壊す訳にはいかない。
決してやましい気持ちで一緒に寝るわけじゃないんだ。
本当だぞ。
何か大切な事を忘れているような気がする。
そんな漠然とした不安が少しだけ過ぎる中、俺は自身に軽く言い訳をしつつ、ミルフィオリと一緒に眠りについた。




