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いつかお嬢様になりたい系ダンジョン配信者が本物のお嬢様になるまで【コミカライズ2巻 2026/04/28発売!】  作者: 鬼影スパナ


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80/86

勝者を称えよ!



 48対100。2倍の差をつけてカロナは勝利した。ダブルスコア、完全勝利だった。


「な、なんと……くっ、これではプロゴルファーお嬢様を名乗れないな……!」


 クロナは、がっくりと片膝をつく。まるで決闘に負けた誇り高き騎士のようで、その姿もまた優雅である。カロナは勝ったのになんか負けた気分になった。


「これからプロゴルファーお嬢様の名はカロナ嬢、貴女のものだ」

「あら。別にいいんじゃありませんこと?」

「む?」

「私はプロスライムゴルファー、そしてクロナ様はプロゴルファーお嬢様。そういうことですわ!」


 なのでカロナは格好つけることにした。そもそも別にプロゴルファーを名乗る気が無かったというのもある。


「か、カロナ君……くっ、やはり君をスカウトしたかった……!!」

「あら、クロナ様。そういうのはもっと上の人がやるお仕事ではなくて?」

「……なに、実はスカウトも私の仕事なのだよ。はぁ、本当に、このアバターは君の為にデザイナーに作らせた最高傑作だったんだがねぇ……そう言われてしまっては仕方がない、か」


 ぐう、と拳を握り悔しそうにするクロナお嬢様。

 作らせていた、とまで言われて、カロナは「んん、さすが本物は財力が違う……!」と畏れおののいた。


 そしてクロナがアカリに向かってニコリと笑った。


「アカリ君。この子はとてもいい子だから、ちゃんと大切にしなさい。良いね? もし運営に行き詰まったらいつでも私に相談するんだよ」

「ふん! ボロが出たわね、どーして私があなたに相談しなくちゃならないのかしら? その笑顔といい中の人が透けて見えるわよ、パパ!!」


「え、パパ?」

「あー……アカリ? そういうのは分かっても言ったらマズイ話よ?」

「うっ、ごめ、今のは失言だったわ……」


 ユキがアカリをたしなめるように言うと、流石に反省したのか言葉に詰まるアカリ。

 その側でソラが黒川オセロに向かって頭を下げる。


「……なんというか、申し訳ない。ウチのアカリが」

「あ。いえいえソラさんも大変ですね。えーっと、どうしますか、クロナさん?」


 黒川オセロがクロナに尋ねる。


「……うむ。別に隠す予定はないから良いんだが。そういうのはちゃんと確認してから発言してほしかったね」

「ぱ、パパ?……えーっと、どういうことですの?」

「ああ。自己紹介をもう一度しようか。カロナ君」


 そう言って、鴉羽(からすば)クロナは紳士的に、優雅にお辞儀する。


「アカリの父親。ファーストアバターはニコノワールの『黒井専務』だ。改めてよろしく」

「……ほえ?」


 お嬢様にあるまじき間の抜けた返事。それに反してコメントがどどっと流れる。


[アカンゴン]:”やっべ、パパンだったか”

[@beruki]:”え? え? どういう事?”

[オコムーン]:”む、知らんのか。ニコノワールと星プロの因縁を?”

[コムーン3]:”まぁアカリちゃんってWikiも別に充実してないもんなぁ”


「ちょ、マジでどういうことですの!?」

「どういう事って……私とアカリは親子だということだが?」

「え、性別……」

「男がお嬢様になって何が悪いッ!! 私だってお嬢様になりたかったんだッ!!」


[@smallwind]:”B-Casterは性別自由だし……うん”

[Jack@]:”ええ? え?”


 確かに、このゲーム、BCDのアバターはデブリ技術で作られている。それはデータ上の「もう一つの体」と言う形になり、性別の異なる身体になる事も人外の身体にも普通になれる。

 戦闘にお金がかかっているこのゲームにおいて、少しでも有利をとるために操作感の都合で元の体に近いアバターにしている人が多いだけなのだ。


 であれば、男がお嬢様にだってなれる。そう、BCDならね!


「つまり、ほんとうのほんとうに、黒井専務で、アカリ先輩のお父様であらせられるの?」

「ああ。その通りだ。アカリとのそういう発言はアーカイブからも削除されるようにしているから、君のメイドも調べきれなかったのだろう……おそらくここも後々カットされるな。そのつもりで頼むよ」

「あ、ハイ……」


[コムコムン]:”星プロってばバックにニコノワール専務が居るから、実質子グループなんよな”

[ユキダママ]:”だいぶ初期にニコノワールから独立したのが星プロなのよ”

[くさしげ煉牙]:”マジかよ、ちゃんとWiki編集しとけ!!”

[@tam323]:”知らなかった……!”


「……ん!? じゃあ実質私、どちらのスカウトを選んでもあんまり変わらなかったのでは!?」

「いや。元の体のままか、こちらのプロデュースを受けるかで大違いだっただろう。これからも『因縁のライバル』の立ち位置は崩さず、応援しているぞ」


 スッ、と握手を求めて手を差し出すクロナお嬢様。カロナは今だ混乱しつつも、その手をがしっと掴んだ。

 その際に小声で「対立している方が配信的に盛り上がるからな」と言われて、ああ、つまりこれプロレスでしたのね。と肩の力が抜けるカロナ。


「ではここを編集点として、視聴者の皆も合わせてくれたまえよ。んん――コホン。オーッホッホッホ! 今回は私の負けを認めましょう! しかし、次はこうは行きませんわよ!」


 急な切り替えに反応しきれず固まるカロナ。そこにアカリがすかさず声を挟む。


「負けを認めたなら大人しく引き下がりなさい! ウチの新人、カロナちゃんはあげないんだから!」

「ふふっ、 その有能なお嬢様については、いずれ我が軍門に下らせて見せますわ……! では、ごきげんよう!」


 そう言ってゴルフバックを背中に担いぎ、クロナお嬢様は颯爽と去って行った。

 黒川オセロも小さく頭を下げつつ、それについていく。


[俺氏0436]:”……クロナお嬢様は強敵でしたね!”

[秋猫]:”ああ。クロナお嬢様、一体何者なんだ……”

[くさしげ煉牙]:”これが本物のお嬢様ってやつか。財力ありそうだな”

[アカリゴン]:”お、いいぞその調子その調子”

[コムンーン]:”いいノリです! あ、こういうコメントはアーカイブで消えます”

[幻龍斎]:”そういうシステムだったのかぁ……”


 かくして、後でしっかりアカリ先輩に説明してもらおうと決意しつつ、カロナの初企業配信は終わった。



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