・35・黒い波と井戸
耳をつんざく轟音、目を灼く閃光。ベタだがそんな言葉がぴったりな光景だった。
先頭付近で爆発音が聞こえ、そちらを見た瞬間吹き飛ばされた。なんとか体を起こしたけれど、節々痛い。
「おい、早く起きろ。任務発生だ。」
「勘弁してくださいよ。いまので骨に三本くらい折れてるんだから。」
「身体強化で回復できる。さっさとしろ。」
言われたとおりに回復する。初めてだが問題なくできた。勢いつけて、飛び起きる。
「早いな。行くぞ。」「どこへです?」イアンが聞くと、ジョヴァンニは山の上の方に顔を向けた。
「あそこ。とんでもなく強い魔力反応があのへんに。」「全く感じませんけど」「お前魔力垂れ流しまくってるからな。おかげで探知探索が全くできん。」「わあ嬉しい。」「褒めてない。」
ジョヴァンニはそう言うと、衝撃波を残して山の方へと飛んだ。イアンも続こうとしたけれど、よく見ると爆発を生き残った黒の天獣がまだいる。
”鋼絹”
動き出していた黒の天獣たちは血を吹き、糸が切れて崩れ落ちた。
やっぱ使えるな------イアンはそう思って、今度こそジョヴァンニの後を追った。
「遅くね?」「後処理してたので。」ジョヴァンニの視線の先を見ると、とある井戸があり、そこから黒の天獣がウジより早く湧き出ていた。
「あの井戸から天獣が出てきてますね」「そんなことわかってんだって、、え?」ジョヴァンニがぎょっとした顔でこちらを見た。「なんです?」「なんでその名前知って、、いや、いいや。」ジョヴァンニは頭を振って井戸に視線を戻す。「とりま、あの井戸を壊せばいい。だけど間にいる天獣には僕のガスが効かない」
「僕が全部やれと?」「いや、井戸は腐食ガスで僕が。間にいる天獣だけやっちゃって。」「つまりほぼ僕じゃないですか?」「そうとも言うね。」「ふざけんなよ。」「なんか言った?」「なにも」少しの間の後、一瞬アイコンタクトを交わして突っ込む。
”鋼絹 剣”
後ろのジョヴァンニを気配で感じて避けながら、天獣たちを薙ぎ払う。草刈りの要領であっという間に道ができ、井戸までたどり着く。
「ガスやるから周りガードしといて。ガス吸わないようにね。」「ムズすぎません!?」
そうは言ってもやるしかない。確か自分のガスは吸っても大丈夫なはず。
”鋼絹鋼絹 繭”
井戸の直上に飛び上がり、足から出した鋼絹で井戸ごとジョヴァンニを覆う。繭に飛び乗り、もう一つ。
”鋼絹 鞭”
上から繭に群がる天獣を薙ぎ払う。切って切って切りまくり、天獣が見えなくなったところで、繭を解く。
「随分時間かかったな。」そこには不機嫌顔のジョヴァンニ。「これでも頑張ったんですよ?」分と鼻を鳴らして、ジョヴァンニは路地へ入ってしまう。慌てて追いかけ、首に刃物を当てられた。
「あ、ええと、なんの冗談ですか?」「冗談だと思う?」確かに首元の冷たさと、ジョヴァンニの声色は冗談のそれじゃない。無意識に両手を上げる。その瞬間後頭部にドンッと衝撃があり、視界が傾いて黒く染まる。
最後に見たのは、タバコの煙越しに見えるジョヴァンニだった。




