・28・移動中の諸々のこと.1
目の前には一編成の列車が停まっていた。手の切符に描かれたのと同じ行き先表示の列車が。
「あのー、先輩?まさか湖水地方に各駅停車で行くなんて言わないですよね?」
「いや、言うよ?まさか特急で行けるとでも思ってたの?」
「いえ、リムジンかなんかで行けると思ってました」
イアンがそう言うとジョヴァンニは大笑いしながらこう言った。
「冗談はよしなよ。僕達学生だよ?質素に行こうよ」
そのまま本当に列車に乗ってしまった。おいていかれてはかなわないと、イアンも慌てて追いかける。
「ちょっと先輩、待ってくださいって」
「何?ああ、君の着替えならもう車両に積んでもらってるよ。」
「ああ、ありがとうございます、いや、そういうことじゃなくて」
イアンが頭を抱えていると、いつの間にか客室についていた。
「あ、ここだ、座ろう」
客室の戸を開けると、なんてことない、かもなく負荷もない個室席だった。
「各駅停車にしては良い設備ですね」
「そりゃあね。各駅停車といっても この路線は駅数少ないから。特急みたいなもんだよ」
ああ、なら良かった。納得仕掛けてイアンは気づく。問題はそこじゃない。
「いや、おかしいでしょ。そもそもなんで僕、こんな列車に乗って湖水地方まで行くんですか?」
「うーん。そのへんは説明めんどいから今までしてなかったんだけどね。丁度いいや。今話そう」
その後聞いた説明は次のようなものだった。
現状、少なくともヨーロッパは”女王の楽団”と呼ばれる、人外&人外レヴェルの人間の組織が支配してる。そして僕らが今いるイギリスは、”農業神の提琴師”アンリエット・ライオネルが統治している。そして、その組織の未来の構成員を育てるのが、僕達の学園の役目。ただ何分、人材不足が激しい。特に戦闘員はそれが顕著で、その穴を埋めるため、有望な学生を集めて
”廃坑のアナグマ”という武装組織が設立された。
「ここまではOK?」
「はい。つまり僕はその組織に強制的にぶち込まれたということですね」
「そ。あ、校長から聞いたんだけど、君色々やらかしてるから拒否権はないってさ。」
「心当たりがありすぎてどれのことかわかりませんね。」
脱獄未遂に幹部の殺害。確かに生かしてもらえてるだけで大喜びすべきだろう。だからといって全6で恩返ししないといけないわけじゃない。
「それ、取り消されたりは?」
「無いって。総帥命令だからむりなんだって。」
諦めるしか無いのか。イアンがそう思ってため息をつくと、ジョヴァンニが慰めてきた。
「まあ悪いことばかりじゃないよ、唯一1人部屋がもらえるし、給料もでる。しかもテストはいくつか免除されるし。あと、君が納得しなくても何も変わらないから。諦めることをおすすめする。」
そう言ってジョヴァンニは目を閉じてしまった。




