・26・学園へ
車の窓から見える景色はもう二時間は変わっていない。ずっと畑と牧草地がひがる田園風景で、時々見える羊の白と牧羊犬の黒以外、全て緑ばかりが目に入る。動くものもなく、車が速度を上げると、のっぺりとした緑色が、後ろに流れていくばかりとなった。
いい加減に単色の景色にも飽きた頃、一つの墓が見えてきた。周りには協会も、墓地らしきものもなく、ただただ、墓標がたった一つポツンと建っていた。
よく見ると、黒い小さな粒のようなものが無数に湧き出て、僕らが進む方向に向かって流れていた。
また暫く進むと、前方から、白い小さな粒のようなものが、先程のそれと同じように流れてきて、ちょうど一本の木の上で混じり合い、次々と混じり合っては消えていた。そのすぐ先にまた同じような墓標があり、そこから白い粒が流れ出ていた。黒い粒を吐き出していたそれとの違いは色のみで、こちらは白、向こうは黒と、完璧なモノクロを形成していた。
「あれ、なんです?」
「ああ、未訓練であれが見えるのか。有望だな」
どうゆうことかを聞こうとしたが、すぐに彼はスピードを上げ、ちょうどでこぼこ道に入って車が盛んに飛び跳ねだしたので、聞けずじまいになってしまった。
9時ぐらいにポーツマスを出たはずがもう真っ暗になっている。速度を考えれば、そろそろイングランドを出た頃だ。
「どこにむかっているんです?」
舌を噛まぬよう、なるべく口を閉じて聞いた。
「ウェールズ。もう少しで着くよ」
「ウェールズ?国境を超えるのに車を使ったんですか?」
「ああ。ヘリなんかもあるが、航空燃料はなにしろ貴重でね。君に使うわけにもいかんのだよ。」
「僕は結構なVIP待遇だと思ってたんですけど。」
「贅沢言うな。アカデミー校長の僕でさえ緊急時じゃないと使わせてもらえないんだから。そう簡単に使えやしないんだ」
「え?でも例のアレから一週間くらいしか経ってませんよね?各地の空港回ればいくらでもあるんじゃあ・・・」
「あることにはある。けれど追加生産ののぞみが現状まったくない。なるべく使わないに越したことはないからね。そんなことより、ほら。着いたぞ」
そう言ってホワイトリーが示した先には、大きな岩の裂け目が広がっていた。
「ただの洞窟じゃないですか。もしかしてペンは筆で、制服は毛皮で、ノートは石版だったりします?だったらすぐ帰りたいんですけど。」
そう言ってホワイトリーを見たが、全く反応しない。ドアを開けるぞぶりも見せず、近付いてきた門番らしき男に窓越しに書類を見せると、アクセルを踏み込んだ。
「え?降りないんですか?」
「まあみてなさい。」
そのまま車は岩の裂け目に突っ込んだ。数秒後、目の前に砂色の無人都市が広がった。




