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 「きみ、うちで働かない?」


は?え、いや、何を言って、は?


「あ、ありがとうございます?」


おお、なぜか反射的に感謝してしまった。やはり育ちの良さは隠せないものだな。


「ふんふん、君、随分と余裕、というかイラッと来る、あー、心の中だね」


右横に座っていた金髪碧眼、アメリカ訛りの男が話しかけてきた。表情も動きも馬鹿そのもの。ニューヨーカーの劣化版みたいな服をきて、椅子を横向きにして肘置きに状態を乗っけてこっちをみてる。もしかしてアウトローのニューヨーカーでも気取っているんだろうか。だとしたらあまりにもダサくて品がない。あと、心の中じゃなくて脳内じゃないだろうか。


「ジャミル、語彙力の無さが出てるよ。成長がないね、君は」


「そんな調子で商売してても誰も買ってくれないよ、レンジャース」


「素人は黙っていたほうが良いんじゃないかな、ジャミル。君は戦闘にしか能がないんだから、経済なんて高等なことには頭が追いつかないだろう?」


「アイデラハート、君はずっと金庫にこもって金数えてばっかりだから、ひねくれに磨きがかかったんじゃないかな」


囚人の前でいきなり喧嘩を始めるとは。この連中のレベルが低いのか、僕が舐められているのか。おそらく両方だろう。矢継ぎ早に喋るものだから、誰がどのセリフを言ったのか全くわからなかった。


「君の方はまた脳の一部が吹き飛びでもしたのかな?経理の仕事が金庫のッ」


いきなり言葉が途切れ、驚いて顔をあげると、さっき喋った三人が頭から煙を上げ、倒れていた。頭から煙が上がっている。その奥に目をやると、ギュスターヴが立っていて、その拳からも煙が上がっていた。どうやら三人を殴り倒したらしい。


「ルミ、良いよ、続けて」


一応人を何人か気絶させたんだからもう少し心の揺れがあってもいいと思う。けれどまったくない。目の揺れも、声の震えも、行きの乱れもまったくない。あれだけ屈強な男を数秒で気絶させるのは相当骨が折れるはずだが、汗の一つもかいていない



「ありがと、兄さん。じゃ話戻すよ。勿論ここで働くと言ったって、すぐに働くわけじゃない。君は情報を知らなさすぎるからね。これで幹部になんかしたら、狼の群れに放り込まれた子鹿よりも早く死んじゃうよ。流石にそんなことはしない。学園に一度入ってもらうことになる。それと・・」


そこで一旦言葉を切り、一度躊躇下王に見えた


「君が殺したスタンレーっていたでしょ?あいつ、末席ではあったけど、一応ここ、最高幹部の一角だったんだよね。それを君が殺しちゃったから、人材補充が目的ってのが一つ。あとは決闘してみてわかったけど、君は強い。僕らには対抗組織があるからね。強いやつは多くいればいるほどいい」


「えーと、つまり僕が強いやつを殺して、実際に戦ってみたら強かったから勧誘してる、ってことですか?」


僕の問にアルミナントは嬉しそうにうなずいた。


「そのとおり。わかりやすくていいでしょ?」


「ええ、まあ。後もう一つ質問があります」


「なんだい?できる限りのことは答えるよ」


よし、落ち着け。普通に聞いても敵認定されるのがオチだ。考えろ、何かいい方法を


「僕の妹を殺した事件の原因があなた達だと聞いたのですが、どういうことですか」


いきなり場の空気が凍りつき、全員のさっきとのあまりの落差に、まるで息ができなくなるような感覚に襲われた。もしかして口にする、いやほのめかすこともいけないほどのタヴーだったのだろうか。けれどもしそうだとしても、このことを聞かないわけにはいかない。妹を殺したかもしれない人間の下について金をもらい、悠々と暮らすことは僕にはできない。これで死んだら、自分は兄としての責務を果たしたと大声で言える。その方が幾分ましだ。

周りの人間、最高幹部らしいが、その視線が痛い。僕の前の方をずーっと、いや、違う。見られているのは僕じゃない。アルミナントだ。最高幹部たちは全員アルミナントを睨んでいる。もしかして事実なんだろうか。


「あー、イワンくん?それは、そんな簡単な話じゃなくてね、あーあれだよ、つまり、そのー」


赤毛の男が弁解しだしたけれど、目が泳ぎまくってるし、手はもんでるし、冷や汗はかいてるし、焦ってるのを知らせたいのかと疑ってしまう。幹部がポーカーフェイスもできないなんて、この連中のレベルも存外低いのかもしれない。


「サミュエル、いいよ、僕が説明する。」


やっと長兄が喋った。総帥ってこいつのことだよね。総帥の尋問だって聞かされてたのに、この様子じゃ僕がこの質問をしなければ喋る気は多分なかった。まったく。ふざけてる。


「えーと、ね。アルミナントが言ったことに関しては、半分合ってて半分間違ってる。たしかにアルはあの事件に関わってるけど、首謀者じゃないよ。あの事件はそもそもかなり複雑でね。神話だの聖書だの、色々関わりすぎて、話すのに6時間くらいかかる。」


「構いません。妹の死んだ原因がわかるんだったら、6時間でも100時間でも聞きますよ。」


「ちがうちがう。時間の問題じゃないんだよ。いや、それもあるんだけど、この話は僕らとはちがう、いくつかの他組織も絡んだ協定があるから部外者には教えられないんだ。」


「教えたらどうなるんです?」


「君を殺して隠蔽するから僕らには被害なしだよ。でもバレたら他の協定参加組織が総出で僕らを殺しにイギリスへやってくる。んで?どうする?妹の死の原因を知って、それを手土産に同じところに行く?それとも別の選択肢を選ぶ?」


「他の選択肢って。そんなモノあるんですか?」


「ふたつ、かな。一つはここでのことをすべて忘れてどこかに立ち去る。2つめ、個人的にはおすすめだけど、さっきの誘いに乗ることだ。君が今知りたがってる情報は、一年生の最初の授業で習う。しかも、君みたいな能力を持ってる生徒向けの授業もあるから、もっと強くなれる」


「つまり、妹のかたきが誰かわかった上、もっと強くなってそいつを殺せるってことですか?」


「そう。物わかりが良い若者は良いね。あ、あと学園は全寮制で一人部屋、学費無料、ネット完備だよ。幾ばくかの小遣いもでる。最高の条件だと思わない?」


「ネットが使えたところで意味ないと思いますけど。もうYOUTUBEもAMAZONもうごいてないでしょ。」


「あーたしかにね。でもそれを抜きにしても好条件だよ?ちゃんと利害も一致してる。君は妹の復讐ができて、僕達は強い式持ちを手に入れられる。」


ところどころよくわからない。他組織というのはどこにあって、どんな種族がやっているのか。式持ちとは何なのか。しかし、どうせ全部部外者には教えられないと言うんだろう。全部そうだ。なら、なってやろうじゃないか、関係者に。特に生きる目的もなかったからこの場を切り抜けたら死のうかと思っていたが、なるべく多くのことを知ってからでも良いんじゃないだろうか。その方が向こうでの印象もいいだろう。


「わかりました。その話、乗ります」






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