・23・やっと終わった
最初に見えたのは天井だった。なんの変哲もない、ただの天井。灰色で、コンクリートと配管がむき出しの、天井。視界の端に緑色の髪が写った。なにか見覚えがある。確か気絶する前にもみたはずだ。誰だったか。
「お目覚めになりましたか?」
「ああ、はい。あなたは?」
「ミシェル・ライオネルと申します」
ミシェル?・・・・ああ、ギュスターヴが言ってた強制魔力操作の奴か。
「どうですか?調子は。魔力が暴走しかけてたので、半分くらい吸い取ったんですけど、頭痛くなったりしてませんか?」
「あ、えっと、なってません。あのー魔力の暴走って、、、、なんです?」
「そのへんも含めて後で兄様から説明があるはずです。今はとにかく回復に務めてください。兄様は72時間以内にあなたと会談することを望んでいます。僕の任務はそれを叶えること。そのため、あなたをこれより眠らせます。全てのエネルギーを回復に使ってください」
え、なんて?もう声が出なかった。まるで金縛りにあったみたいに体の全部分が全く動かない。次の瞬間、目の前が暗くなった。
次に明るくなった時に目の前にあったのは、いつか尋問を受けたあの部屋だ。
つい数時間前に見た光景のはずなのに、随分と懐かしく思われる。気のせいだろうか。
「そうでもないよ。もう3日は前だからね。」
また心を読まれた。少しは制御できないものかな。しかも僕を焼き殺そうとした男に。
「ああーー、えーーと、教えてくれてありがとうございます。ところで、心を読む、いや読めてしまうのは、あー、制御できないものですか?アルミナントさん。」
「できるよ?」
じゃあ何でそうしないんだ。ここの連中にはプライバシーという概念はないのか。
「あるよ、一応というべきか勿論と言うべきかというところだけど。ただ、君は今虜囚だからね。」
ああ、なるほど、たしかに僕でもそうする。この人達でも少しはまともな行動理由があったんだな。
「じゃ、納得できたところで行こうか。」
「え、どこにですか?」
「甲板。尋問、というか裁判そこでやるから。いや、僕はここでやろうって言ったんだよ?だけど兄さんがすぐ処刑できるように甲板でやろうって。」
「えーと、どちらのお兄様がそうおっしゃったんです?」
「きみのこと殺そうとしたほう」
なるほど。随分と嫌われてるみたいだ。
「えーと、僕の判決ってまだ決まってませんよね?」
「公式にはね」
なるほど。裁判官それぞれのなかでは決まってるわけだ。僕を無罪放免してくれる確証がある人は0人なのに、死刑にしてくれる人が一人確定してるこの状況は、どう解釈すべきなんだろう。
「まあそんなに悲観すること無いって。僕は君のこと無罪放免にするつもりだから。安心してくれていいよ」
「どこかで、マイナスの感情を偽装するのは難しいけれど、プラスの感情は簡単に偽装できるって聞いたんですよね。どう思います」
「そんなことを言うガキは死刑にしてやろうって思うね」
「ご勘弁願います」
うん。不安だ、誰一人として味方が居ない。この様子で本当に生きて帰れるんだろうか。
「それじゃ、甲板行くよ。」
「どうやって行くんです?」
「え?歩いて」
「あ、そっか。普通は歩いていくんですもんね」
「え?なにいってんの?」
「いや、歩いて行ったこと無いんで」
「ああ、たしかに。じゃあ、案内がいるね」
「ええ、そうなんです」
「誰か案内してくれると良いね」
ん?ちょっと待て。今僕は道案内がないと甲板にたどり着けないと言った。そしてこの男は、誰か案内してくれると良いねといった。あれ?こいつが案内してくれるんじゃなかったのか?
「え?案内してくださらないんですか?」
「しないよ?じゃ、頑張って」
これまでにないスピード感で見放された。この様子じゃこの人も僕を無罪にはしてくれないと思う




