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・16・捕まった

 「何で逃げようとしたの?怒んないから言ってごらん?」


 なんかこの人と話すと調子狂うな。今だって、まるで小学校の先生みたいな口調で来てる。正直むかつく。


「戦っても負ける、と思ったので。」


「何で?僕手加減するって言ったじゃん」


 手加減されたとしても、意味がない。けどこの人には伝わらないだろう。


「一つ、昔話をしましょう。僕が格闘技を始めた頃の話です。その頃は、相手に故意に怪我をさせたらたとえ試合中であっても、犯罪になるルールでした。

ある日、ジムで4歳上の人と試合することになったんです。その人は手加減する、って言って、僕はそれを信じました。結果は僕が鼻を折って、負けました。問題はそのあとです。怪我をさせたのが、故意かどうか、揉めたんです。何度話し合っても結論が出ないので、警察に行って、嘘発見器で調べてもらったんです。結果はシロ。相手は本当に手加減していた、しているつもりだったんです」



「ええと、つまり何が言いたいの?」


 やっぱり、強すぎる人間というやつは、頭のネジが数本外れてる。


「面白くないし、語りも下手だし、必要性に疑問が残る話だね」


  泣いている人にペンキをぶっかけてそうな声が響いた。イラッとして声の方をみると、アルミナントが居た。そのちょっと後ろには、黒ずくめの低身長、確かギュスターヴとかいうやつがいた。


「あ、アルにギュンター!どこ行ってたの?」


「よく言うよ。兄さんがいきなり叫ぶせいでこっちはまだ鼓膜の上でタップダンス踊られてる気分だよ」


「こっちは耳の中でオーケストラ飼ってるみたいです。あと、ギュンターって呼ばないでって何回行ったら聞いてくれるんですか?兄様」


 この兄弟は長兄が一番地位が低いんだな。うちと同じだ。


「で?君は何を言いたいの?」


 ん?あ、僕に言ってたのか。いきなり話しかける対象を変えないでほしい。人の喋りに文句言う暇があるんだったら、それ以前問題はしっかりくりあしてほしい。


「なに?逃げようとして捕まっちゃつがそれ言う?僕は君の味方してたのに。」


 どこがだよ。何も喋らなかっただけじゃないか。


「え、あの、僕だけ取り残されちゃってるんだけど。結局君は何を言いたかったの?」


「兄さんレベルの強さの人は手加減しても感覚が違いすぎるから意味がないって言ってるんだよ。」


「ああ、なるほど。つまり君は僕とは戦いたくないんだね?」


 いくつかのステップをすっ飛ばしたけど、なんとか正解にたどり着いてくれたみたいだ。このまま行けばなんとか無罪放免になるかな?希望の器に少し水がたされた気がする。


「そういうことです。そもそも何で戦おうってことになったんですか?」


「いやーきみが殺したスタンレーってやつがさ?ここで10番目くらいに強かったんだよ。簡単に言うと。幹部だったの。結構上の方のね。だからその穴を君に埋めてもらおうと思って。その入団試験みたいな事しようと思って。」


 ああ、なるほど。じゃあこれで勝ったら僕はここでNo.10になれるわけだ。一応リスクに見合ったリターンは用意されてるわけだ。


「でも僕とは戦いたくないんでしょう?ならローズフィールドとやるか。殺されるかだねぇ。」


「え?戦わずに無罪放免はないんですか?」


「ばかいってんじゃねぇよ。お前一応この船に無断侵入してんだからな。良いか?うちみたいにいろんな人外のボスやってんのはここだけじゃねぇんだよ。不法侵入者無罪放免したなんて噂流れたら、俺らのメンツ丸つぶれだろうが!!そんくらいそのちっさい頭で考えろや!」


 はは、すっげぇ。いきなりゴリゴリの下町訛になって凄んできやがった。ひとの仮面剥がれるの見るのも結構良いもんだな。


「そんなに苛ついてんなら兄さんがやったら?兄様より弱いし、僕よりも弱いし。ローズフィールドと大して変わんないでしょ。」


「は、お前目腐ってんのか。固有式多いからって俺より強いとか思ってんの?弾数多くても当たんなきゃ意味ねぇだろ。」


「はいはい。喧嘩しないの。じゃあ、港で十五分戦って、相手に相手に多く攻撃当てたほうが勝ちね。対戦カードはイアンくん対アル。10分後にスタート。もう入っていいよ。」


 アルミナントはすぐ翼を出して港に飛んでいった。馬鹿だな。手の内晒しまくってるじゃないか。ちょっと時間があるから幾つか質問しとこう。


「あのーこれって攻撃たくさん当てたほうが価値なんですか?」


「いや?違うよ?当てた魔力量が多いほうが勝ち。」


 は?魔力量?どの世界線の話をしてるんだ?


「あのー僕魔力とかよくわからないんですけど・・・」


「あーそっか。まあ、大丈夫だよ。気絶させれば勝ちだから。あ、あとあいつ火炎使いで、火使って式神出してくるから気をつけてね。」


 とか言って船の中に入ってしまった。まあいいや。とりあえず生き残れるよう頑張ろう。


 さっきの排水溝から水に入って、港に戻ってきた。あの広い艦内でよくまた見つけられたなと自分でも思う。さて、どうしようか。一応勝ち筋を考えないといけない。圧倒的に向こうが強いのは確かだから、搦手を使うしかない。例えば、だけど、ギリギリまで隠れて、最後の最後で一撃入れるとか。でも多分一撃も入んないよな。とりあえず、隠れてなかったら多分開始3秒でやられる。でも相手は火炎使いらしいから、建物の中だと、全部燃やされて終わりだ。其処もクリアできる隠れ場所を探そう。


 いいところを見つけた。けど臭い。そう、排水溝だ。ここなら地上を燃やされても生き残れるし、出入り口も複数ある。かなりベストな隠れ場所だと思う。開始まであと3分くらい。とりあえず何もなかったらずっとここにいよう。


 3.2.1。今丁度始まった。と言っても隠れているだけだから、たいしてやることはない。


 爆音して、 マンホールの蓋が弾け飛んだ。内側に。其処から、太陽のみたいな色をした炎の舌が入ってきた。比喩じゃない。その後すぐに火でできた蛇が排水溝に飛び込んできた。なるほど。こういうことか。逃げながら勝手に納得した。


 地上に出ないといけない。でもマンホールを開けてる余裕はない。しかも相手は蛇とはいえ、炎で出来てるわけだから伸縮自在。さっき使った、天井にぶら下がるやつも、排水溝の直径いっぱいに広がられたら意味がない。しかたない。あんまりやりたくないけど、排水溝の終点から海に飛び込もう。


 排水溝の内部は、大した障害物もなく走りやすい。けど、床にはヘドロが溜まって、ぬめりながら、スラムの百倍はひどい匂いを放ってる。最初の丁字路に来た。汚水の匂いに混じって、かすかに潮の匂いがした方へ突き進む。普通に曲がったらすっ転ぶから、壁を蹴って方向を変える。幸いなことに、すぐに金網と、円形に切り取られた地平線が見えた。走った勢いのまま突っ込んで、海に飛び込む。すぐ上を光熱の生きた縄が通過して、肉が焼けるような音を残して消えた。少し安心して、空を見上げた。2秒前に感じた安心は吹き飛んで、不安と恐怖に交替した。アルミナントの火の羽は一度見たからあまり驚くことじゃない。問題は周りにいるやつだ。さっきの蛇と同じく、火の体の生き物が浮いている。

5日のワニの怪物の十倍くらいあるドラゴンと、大鷲。見掛け倒しかもしれないけれど、僕の戦意を奪うには十分だった。

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