表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/37

・15・逃亡未遂

さてどうしようか。

戦ったら確実に死ぬ。手加減してもらったとしてもだ。それを避けるんなら逃げるしかない。幸い目の前にいて動けるのは10歳くらいのガキだけ。他のふたりはさっきのダメージから回復しきってない。逃げるか。


椅子からたってドアに手をかける。左右のふたりはまだうずくまってるし、いつの間にか部屋にいた少年(多分ハーバート)も何も言ってこない。

そのまま廊下に出て、走り始める。


どこに行こう。考えながら走り出す。単純に外に出たいなら。上に行けば良い。けど、さっきのやつは飛行甲板で待ってる言ってた。上に行くのは危険だ。

よく考えよう。外観を思い出して、外に出られそうなところはなかったか?一番上の甲板以外で、横とか、下の方とか。確か横の、甲板のすぐ下辺りに大きめの穴が空いていた。あそこから出ようか。いや、だめだ。見たところ海面から20メートルはあった。飛び込んだとしても、どこかしら骨折して、泳ぐことはできないだろう。じゃあどこにする?ちなみに考えている間も立ち止まっては居られないから、ここまでの思考はすべて走りながら0.2秒で行った。とりあえず、走り続けよう。止まっているよりはましだ。


 思った以上に走りやすい。ずっとやってたフリーランニングの練習場より、いつか忍び込んだ廃墟の図書館より、ずっと。軍艦だから戦うと気のことを想定しているのだろうか。通路は真っ平らで段差がほぼなくて、壁の出っ張りも少ない。もう三分も走り続けてるけど、角すら見えない。どうせまた適当な不思議パワーだろう。僕の心はすっかり異次元色に染まってしまったらしい。


 また3分くらい走ると、最初の角が見えた。普通に曲がっても良いんだけど、どうせなら技を使いたい。助走を生かして、角に差し掛かったところで前に飛ぶ垂直の壁を蹴って、助走の勢いを横方向に捻じ曲げる。勢いを殺さずにそのまま壁を走って、床に降りる。練習以外で初めて技を使った。大した技じゃない。技ですらなかったかもしれない。けど良い。楽しければ。


 そろそろ体力の限界が見えたころ、壁に居あいた大穴が見えてきた、標識を見ると、排水口と書いてある。ここだ。逃げられるとしたらここだ。ハワイに追い払っていた自信と虚勢とその他諸々を呼び戻して、排水口に飛び込んだ。


 滑り降りたら、以外にも平たくて、広いスペースが広がっていた。しかも障害物が多い。早速一メートル四方暗いの箱を跳び箱の要領で飛び越える。足は開かず、揃えたまま。モンキーヴォルトと言うらしい。続いて地面を埋め尽くすパイプを天井のバーを掴んで飛び越える。海の水の匂いがしてきた。出口は近い。余裕という小人が力を発揮し始めて、後ろに架空の追跡者を作り出した。半人半狼の追跡者。僕は速さにまさる敵を知能で妨害する。天井からぶら下がってたパイプを揺らして、頭に当てる、天井の配管を掴んで飛び上がり、追跡者が行き過ぎたところで、頭に飛び降りる。ずっと天井や壁を移動して、上の方に集中させて、箱に足を引っ掛けて転ばせる。そんなことを続けていたら、見えない追跡者は居なくなっていた。


 波の音が聞こえ、排水溝の終点が見えた。いい具合に水面の上に出ている。蹴り破ろうとしたその時、後ろから声が聞こえた。


「やめたほうが良いですよ。」


 さっきのハーバートとかいう少年だ。ここへは僕が来たルート以外では来れないはず。なら僕をずっと追い駆けていた?いや、何度も後ろは確認した。誰も居なかった。ならなぜここにいる?恐怖が汗となって背中を伝い、湿った床に斑を描く。恐怖の波紋は体の震えとなり、カチカチという歪な音楽を奏でた。


 恐怖色に染まりきった体を奮い立たせ、意志力のすべてを使って少年の視線を無視し、金網を蹴破って外に出る。海に飛び込もうとした僕の体は、指先も触れずに、海と真逆の方向に飛ばされた。


 背中のあたりに圧を感じて振り向くと、巨大な鷹が僕の腕を掴んでた。見ているうちに頭が人間に変わって、話しかけてきた。


「おまえ、何であんなとこから出てきたんだ?」


 答えられるわけがない。しかもどんどん上昇してる。このままだと、、


「あれ、イアンくん。何してるの?ローズフィールドに捕まってるってことは、逃げようとしたってこと?」


 さっき空っぽになったと思ったら汗のツボがひっくり返され、残ってたのが全部飛び出してきた。精神力のサーバーは押しても叩いてもなんとも言わない。真の絶望を味わうという幸福を味わいながら、ぼくは地獄の亡者の悲鳴を聞いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ