・13・尋問開始
「えーと、どういうことなのかな?これは。説明、してくれるよね?」
まーずい。ほんとにまずい。さっきスタンレーを倒したときの自信と達成感はどこかにバカンスに言ってしまって、今は恐怖と後悔がシフトに入ってる。さっき殺すんじゃなくて、気絶させるとか、腕欠損させて戦闘力奪うくらいにしておけばよかった。この船に乗ってからもう、何度も死を覚悟したつもりだったけど、全くそんな事なかった。ホントの死の恐怖っていうのは、こういうやつのことなんだ。これまでのは、死の恐怖の皮を被った自己陶酔とポエムで、僕はただのナルシストだった。
「いやー、あのー、これは別に僕だけが悪いわけではなくてですね・・」
耳のすぐ近くを太陽の50倍くらい暑い物体が通り過ぎて、後ろの壁に爆発的な現代アートを描いた。思わず耳を触った。良かった。まだある。自分の耳をゴミ箱に捨てるというある意味とても貴重な体験をしそこねたけれど。一瞬本当に耳がなくなったかと思った。
「僕は説明しろ、って言ったんだよ?言い訳しろなんて言ってない。」
やばい。目が全く笑ってない。顔は満面の笑みなのに。右の拳からまだ煙が上がってるし、何なら左からも上がってる。次の答えを間違えたら間違いなく左の攻撃が飛んでくる。
けど困った。うまい答えが見つからない。おかしいな。昔Twitterでずっとレスバトルしてつけたディベート力はどこ行ったんだ?自身と達成感と一緒にハワイにでも行ったのか?
「ここで喋れないっていうんなら、尋問室で話しても良い。僕が求めてない情報を聞くよりずっとマシだ。」
よし、そうしよう。そっち行ってもこんな感じの怖い人達ばっかりだったら意味ないけれど。でもここで喋るよりマシだ。
「尋問室でお願いします。」
「わかった」
また耳のそばを太陽の50倍くらいの熱が通り過ぎた。けどさっきと違うのは、通り過ぎた熱が後ろの壁に現代アートを描くんじゃなくて、僕の周りを覆ってるってことだ。
「あのー、なんですか?これ」
「このまま連れてく」
「え、あのー、僕、生きて帰れ、ます、よね?」
「問題ない」
「ついたぞ」
なんで今日だけで後も人生最高の恐怖を何度も味わなきゃいけないんだ。
「あ、ありがとうございます」
ふう。なんともちぐはぐな部屋だ。真ん中は僕が最初に居たフロアみたいな感じ。デスクはなくて、革張りの真っ黒な椅子。回転椅子じゃなくて、安楽椅子って呼ぶのがしっくり来る感じの椅子だ。後ろの本棚は、ハードカバーでギッチギチに埋まっていて、書名を見たところ、辞書がほとんど。でも時々ホームズとか、ハリーポッターなんかも置いてある。
左側は床からしておかしい。まるでクラブみたいなフェンスみたいな床になってる。椅子は高めの丸い回転椅子で、背もたれがない。しかも後ろにはバーカウンターまでついて、照明がギラつきすぎて目がチカチカする。
右側は床がまず石。機関室の一個上のフロアの床をそのまま持ってきた感じだ。椅子は・・、なんか木の幹を編んで作られたみたいな感じ。頭が当たるところは完全に木の葉だ。照明は、最初のフロアの一個下と同じく、天井を覆った木の葉の間から光が注いで、床に歪なドット模様を描いてる。
うん、なんか、すごく、気が抜けた。ありえないくらい怖い人達を想像してたけど、こんな感じの部屋で尋問しようっていう人たちにビビりまくってたなんて。自身が一足先にハワイから帰ってきたみたいだ。すぐに達成感とディベート力も帰ってくるだろう。
「ねえ。きみ、相当図太いね。こんな場面で部屋の内装に気が行くなんて。」
やば。この人いるの忘れてた。いまのを読まれてたのは流石にまずい。尋問始まる前に死ぬんじゃないか?これ。
「まあ安心しな。兄さんたち落ち着いてるから。僕みたいな単細胞じゃないよ。ふたりとも。」
この言葉を信じて良いのかわからない。でも心配しても意味ないよね。とりあえず自信にはハワイに帰ってもらおう。ディベート力への伝言を持たせて。
しばらく待ってたら、いきなりドアが空いた。バーンていう擬音がビッタリ来る音を立てながら。
「アル、何時間待たせれば気が済むんだ?ここで待機してた時間で紅茶が何杯飲めたと思ってるんだ」
予想以上にちっちゃい。アルミナントって人は180くらいだけど、この人は170くらいしかない。たしかに落ち着いてそうだ。
「ん?君?この船に不法侵入してきたネズミは。あ、ここにいる人間は全員心読めるよ。だから気をつけた方が良い。気をつけられるんならね」
訂正。落ち着いてなんかない。目が狂ってる。にらまれただけで小便が漏れた。比喩じゃない。ほんとに漏れた。
「ギュンター。アルから離れなさい。怒る気持ちはわかるけど、首にナイフ当てるのはだめ。」
え?まじか。さっきの話聞いてた限りだと。この三人は兄弟のはず。なのに何で殺し合いになりかけてるんだよ、、、、。
尋問じゃなくて拷問されないかな・・・・。




