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懐かしい弟コリンへ
お元気ですか。このごろ足の具合はどうですか。たくさん歩きまわっているとお母様からもお手紙で伺っています。頑張っていてえらいわ。コリンは私たちの誇りよ。
お父様の体調はいかがでしょう。かなり楽におなりだとは伺いました。領の気候やあなたのお手伝い、カシーの代理のお仕事ぶりが、お父様のお体をお助けしたのだと思います。本当にありがとう。
何もできない姉でごめんなさい。あなたとカシーと、お母様にばかり頼ってしまって。
コリンの手紙にあった書物はほとんど手に入りました。なかなか難しいものもあったのよ。そこは公爵様の伝手です。感謝してもらっていいわよ。
さて、カシーがそちらへ向かいました。かなり渋ったのに、あなたの苗木を無事送り届ける役目を押し付けて、やっと承知させました。カシーは頑固で責任感が強すぎるのが欠点ね。
前の手紙でも書いたし、公爵様や宰相様からのお知らせで、そちらでもご存じでしょうけれど、カシーの婚姻無効手続きが終わりました。これで晴れて独身。あのクズ婿とは赤の他人になりました。
私は自分の恋を実らせたけれど、カシーは恋どころか、条件に迫られて仕方なく選んだ結婚だったのに、よりによってあんなクズ婿を引いてしまうなんて。あれを婿候補に差しだして来た宰相府の選定眼が曇っていたとしか思えません。(王室の批判はできないから宰相府だけ悪口を書くけれど、姉は怒っています)
クズ婿は自分の衣装や女への贈り物も、カシーの分の予算から出させていたのよ。カシーがドレスも靴も買わないでいるのに、ちゃっかり自分たちばかり流行の物を買っていたの。許せないことです。たとえば、あなたが大事な書物を買おうと貯めていたお金で、私が勝手にネックレスを買ってしまったら、コリンは怒るでしょう。それくらい姉は怒っています。
これはカシーには話していません。だからコリンも気をつけて。もちろん、お父様とお母様はご存じよ。例の女従僕は、結婚以来ずっとカシーの飲み物に「避妊薬」を混ぜていたの。少量だったけど長く服用すれば子どもができない体になってしまう、おそろしい毒薬です。花街の人が使うものらしいけど、そんな毒を毎日カシーに飲ませていたのよ。あんな女縛り首で上等です。
クズ婿が気づいてやめさせたそうだけど、その条件がカシーと同衾しないことですって。偉そうに隠し妾の分際でよ。どうでもカシーとクズ婿の間に子どもができることを阻止したかったのだわ。
もっとも今になってみれば、子どもがいなくてよかった、とは思います。でも腹が立つのはかわりません。
カシーは外から見るよりずっと傷ついて疲れています。あなたも大変だとは思いますが、できるだけ労わってあげてほしい。どうか思い出してみて。あなたが学校の課題で困ったとき、必ずカシーは時間をとってくれたでしょう。忙しいからあとで、とか、やりたいことがあるから他の人に頼んで、とか、一度も断ったことがないはずよ。
昔から、お母様が飾り物を下さる時など、カシーは私が選ぶまで手を出さなかったの。私は最近まであの人が好きなのは青や緑だと思い込んでいたの。でもカシーは私がバラ色や赤が好きだからと、自分はいつも選ばなかった。ピンクのリボンも好きだったのに。
私たちはみんな、カシーが手伝ってくれるのが当たり前と思ってしまっていたの。困ったらカシーが手を貸してくれる。カシーに頼めば大丈夫、もう心配ない、て。それは少しずつの時間だと思うわよ。でも、みんながみんな、少しずつでもカシーにお願いしていたら、カシーが自分のために使う時間はどんどんなくなってしまうと思わない?
カシーが伯爵代理を務めるようになってから、みるみる顔色が悪くなって、やせていったの。毎日見ていたら気がつかなかったかもしれない。だから私はわざと「ローリーを見に来て。手伝って」ってお願いしたのよ。カシーが来てくれてお茶を飲むと、私は「ローリーを見てくる」と言って席をはずす。カシーはそのまま眠ってしまったわ。それほど疲れていたのね。セリカと共謀してわざと仕向けたのよ。眠ったカシーに掛物をかけて、二、三時間そのままにしておきました。
クズ婿をすぐに叩き出してやりたかったけど、王家の選定を疑う根拠がないうちはダメだったから。やっとやっと、カシーはゆっくり眠れるわ。私はそれがうれしい。
どうか、楽しい冬至祭をお祝いくださいね。
お父様お母様もご健勝を祈ります。もちろんコリンあなたもよ。頑張りすぎてはダメよ。
カシーをよろしく頼むわ。頼れる弟がいるって最高ね。
あなたの姉ミレディア




