ピカチュウはやべえ
「ピ~力~」
「待て待て待て待て待て!!!!!!」
ルフィにそっくりな少年がゴムゴムのイリュージョンで呼んだのは黄色くて耳がとがっている、特徴的な尻尾をもったネズミのような動物だった。
いやこれ……もろあれだろ。
ピカチュウだろ。
ルフィの次はピカチュウかよ。
なんでもありだった。
もう限界がきたからって人気キャラクターを次々に登場させておけばなんとかなるだろう的な発想だった。
もっと自分の実力でなんとかしろ。人気キャラクターでごまかすな。
しかし僕もこうして人気キャラクターと共演できるのは少しの嬉しさもあった。ポケモンは世代だったこともありワンピースよりは知識がある。
友好的な関係を築けそうだ。
しかしピカチュウに難色を示さなかった人も――というか僕以外の住民は僕を盾にするようにしてピカチュウと距離を置いている。
僕の後ろにチンパンジー、ハムスター、そして白い球体。ルフィ、じゃなくてゾロアはトナカイに乗ってどこかへ行ってしまったのでこの場にいるのはこれで全員だった。
白い球体は一応隠れているつもりらしいのだが、あいにく白い球体は僕の数百倍ほどの体積のため、もろに見えていた。というか白い球体が後ろにあるせいで僕達が陰になっていて、なんだか僕達を白い球体が隠しているようだった。
みんながピカチュウにこんなにも怯えるとは思ってもいなかったので僕は後ろで隠れているチンパンジーに問う。
「チンパンジーってピカチュウだめなの?」
「大吾郎です」
「ああ……ごめんな」
つい種族名で呼んでしまうのは人間の傲慢だ。
「それで大吾郎。もしかして君はピカチュウが苦手なのか?」
「はい。私は岩・格闘タイプなのでピカチュウのアイアンテールが効果抜群なのであまり近づきたくないです」
確かにアイアンテールが効果抜群ならあんまり近づきたくないよなあ。僕も大吾郎が瀕死になったら困る。この惑星にはポケモンセンターなんてオシャレなものはないから瀕死は死と変わらないのだ。というか地球にもポケモンセンターはないけどね。
僕も大吾郎が死んでしまったら僕のうっかりを訂正してくれる人がいないので、僕をサポートしてくれる人がいないので困ってしまう。
うっかりジャスティスだ。
「ハムスターもピカチュウ苦手なの?」
「ハムちゃんです」
「めんどくさ」
「ああああ!!!!!!今!今めんどくさいって言った!!!!!!!!!うわあああああああああ!!!!!!!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!!!!!!!!!!!!地獄に落ちろ!!!!!!!!!」
なんだこいつめっちゃキレてる……。
ヒステリックキャラの需要はないのでさっさとマトモに戻ってほしいが、マトモに戻れというと私はこれが普通だあああ!!!!!ってまた癇癪を起こすのでそっとしておこうと思う、が、そうすると無視するなああああ!!!!!とまたさらにヒステリックになるのがこういうタイプのめんどくさいところだ。
ヒステリックのハムスターとかどこにも需要ない。
「それでハムちゃん」
「なんですか」
「君ははんでピカチュウだめなの?」
「そうですね、タイプ的に見たら私はピカチュウと相性の悪いタイプではありません」
へえ、確かにデンキタイプかノーマル、ヒコウ、フェアリーとかのカワイイ系によくあるタイプ構成だとは思うけど。
「私は鋼・地面タイプなので」
「予想外だ!」
なんでそのタイプ構成なんだろうか。ハガネールとまったく同じタイプ構成だった。正直ハガネールも困惑するだろ。
「でも、タイプの話じゃないならなんで嫌いなの?」
「いや、べつに嫌いってわけではないんですけど……やっぱり私とピカチュウってあれじゃないですか」
「?」
「キャラがかぶるんですよね」
「ああ、ピカチュウの方がカワイイしね」
「うわああああああ!!!!!!!!!それをいうなああああああ!!!!!!!!自覚してるわ!!!!!自覚してるわ!!!!!!ハム太郎の人気がポケモンよりない時点で既に気づいてたわ!!!!!」
またヒステリックになってしまった。これは僕が悪いか。
反省。
再会。
「それで2人は分かったけど」
僕は白い球体の名前を思いだそうとするけど、思いだせない。白い球体だけは他の2人とは違って、無礼を働いたらその場でレーザービームをシュババババンと当てられて、もうこりごりだよぉ~と丸焦げになってしまう僕が容易に想像できてしまうのでなんとしてでも名前を思い出さなくてはならない。
しかし一度忘れてしまった人の名前を思いだすということは、富士山の山頂でやっているマグロの解体ショー中に無断で入っていき、すしざんまいの社長を殴って解体ショーを中断させるくらい不可能なことなのだ。
「わかりませ~ん」
「呼称はなんでも構いませんよ。ちなみに私の名前はJohnson-firstです。所有者は私のことをNo.0001と呼んでいます」
「ジョンソン!」
「はい」
「ジョンソン!」
「なんで君はピカチュウと距離を置いているの?」
「私は距離を置いているわけではありません。これ以上近づくとあなたにぶつかってしまうので進めないだけです。ちなみに、その目の前のはピカチュウではありません」
「え?」
「ピ力?」
僕の目の前のピカチュウもなにを言ってるんだろうか、この白い球体は。という意味のピカを発した。
「分かりませんか」
ジョンソンは僕にやさしく尋ねる。僕にやさしい、いいやつだ。
「わかりませ~ん」
しかし僕はジョンソンにやさしく返答しない。生意気に、それもとびっきりおかしなポーズをしながら答える。僕は相手がやさしいとどこまでも相手に依存してしまうタイプのゴミ人間だった。
「その黄色い生命体、ピカと鳴いていませんよ」
「まさか……」
「はい。“ぴちから”と言ってます」
僕は泣いた。
鳴くんじゃなくて、泣いた。
まあ、実際は泣いても鳴いてもいないんですけどね。ただただ、なんだこのオチは……というような顔をしていただけ。
「じゃあ、ピカチュウもどき。さっさと新しい登場人物を呼んでくれないか」
もはやこれは恒例行事のようなものになっていて、どうせまたピカチュウもどきが変な人間を呼ぶんだろうなあと察することができた。
しかし僕の期待とは少し違った返事が来たので、僕も少しなにかと違うことが起きるのだな、と感じざるをえなかった。
ピカチュウもどきはこういったのだった。
「では、ゾルア君を呼び戻してきてください」
「えーっと……」
ゾルアって誰だっけな……。もう最近は登場人物が増えすぎて誰が誰でどんな容姿だったか覚えていない。
「ゾルアはあれですよ。ルフィみたいな見た目のやつ」
「ああ」
というかこのピカチュウもどき、自分がピカチュウじゃないとばれたらスラスラと話すようになったな。ルフィみたいな見た目のやつは、ばれてからもルフィのキャラ設定を守っていたのでそれを見習って欲しい。
「いよいよ来週はフィナーレです!」
ピカチュウもどきは、なんかいきなり大声で叫んだのでマジでうるさくてビックリしたし、2回連続で有名キャラクターだと思ったらパチモンだったのでなんだかイライラしていた。有名人に会わせろ!
「フィ・ナーレ!」
チンパンジーも乗ってきた。
「フィナーレ!」
ハムスターも乗ってきた。なんだかみんなノリノリだった。カタカナ大好き人間かよ。白い球体にいたっては地面にレーザービームでfinaleとか書いちゃうから、雑草や地面が焼けてなんだか焦げ臭い。
というかフィナーレは最後の意味なのでまた最終回みたいだ。




