シグナルがやべえ
……。
誰だよ開拓編とか言ったやつ。
まるで開拓する気が起きていなかった。
飽き症の僕に根気のいる開拓とか無理に決まっていた。
せめて誰か監視してくれる人がいるならば少しは話が違ったかもしれない。あ!人に見られているからちゃんとしなきゃ!と思うかもしれない。
もう誰でもよかった。僕が心の底から嫌っている五十嵐君でもよかった。
1人は嫌じゃ!
いや、五十嵐君がこの惑星に来たら揉めていたかもしれない。うるせえな!帰れよ!とか怒鳴り散らしてうんこ漏らしていたかもしれない。
この惑星での一番の問題点は、うんこをしたときに拭くトイレットペーパーなにがしが存在していないことである
どうにも都合がいいようで、この惑星ではうんこおしっこをしたくなることはなかったが、うんこおしっこをしない状況では精神衛生的によろしくない。
なんか体に悪いものが溜まっていそうで心臓がズキズキと痛んでいる。
冷静に考えれば、食べ物飲み物を摂取していないのだからうんこおしっこが出ないのは当たり前なのかもしれないが、そんな冷静な判断ができる状態ではなかった。
せめて誰か来てくれれば話も進むのに……。
こんな宇宙に飛ばされて、たいそうな話題提起のわりには結果としては誰も得しないという奇跡の状況を達成してしまった。
僕も1人になって寂しいのでルーズだし、きっと真白さんも寂しいと感じているだろうからルーズ、それによってシンギュラリティさんも複雑な気持ちになってルーズ、作者も話の方向性を決められずにルーズ。
ルーズの世界大会があったら優勝はきっと僕だろう。準優勝はハルウララだ。というか、ハルウララという名前、久しぶりに聞いたな。
大体のこのブームの結末としてはよくある話なんだけど、話題になった時はヤンヤヤンヤと持ちあげておいて、いざテレビが取りあげなくなったら、自分の興味が飽きてしまったらその後をチェックせずに、そう、それこそまるでトイレットペーパーのように、使うだけ使ったら始末をせずに放置してしまうのだ。
とここまで話をしておいて、やはり気づいてしまう。
僕、たとえのセンス0だな……。
うんこおしっこの話に影響されてトイレットペーパーを例に出してしまった。じゃあトイレットペーパー以外の例が何か出てくるのか、と聞かれてしまえば僕は悩んだままで隠居生活に入ることだろう。
ああ、また前の話に影響されて隠居生活のたとえを出してしまった。
もう限界である。
もう誰か助けに来てくれー!
改めて自分1人ではおもしろい話の1つもできないことを感じてしまう。
誰か……頼むから誰か来てくれ。
僕は心から願った。
その時、その願いは惑星を越えて地球へと光化学オキシダントとして届けられた――って汚染物質じゃねえか!
しかもイマイチメジャーじゃない汚染物質であるOxって……。
そしてその汚染物質は地球へと届けられ、ある人物のみがそのシグナルを受け取った――ああ、結局シグナルなのね。
「……そうか」
その人物は空を見上げて、そして全てを読み取った。
「そういうことだったのか」
その人物はすぐに行動に移した。
転移能力をその人物はもっていた。それはその人物がこの物語でのキーパーソンであるからこそ持つことができた、唯一の能力である。
多くの人はそれをどんなにも欲しがっていた。しかしそれを手に入れることはできなかった。
それはその人物がありていにいって特別であったからだ。
この物語に限定したことではない。多くの世界線においても、おおよそ読者が今いる世界においてもこの人物はマジョリティーであり、それどころかオンリーワンであった。
しかしこの人物は多くを望まなかった。
ただ、平穏な生活を送ることのみを生きがいとしていて、自分が自分らしく生きれることをなによりも誇らしく思っていた。
ジャスティスのシグナルを受け取ってから、この人物はゆっくりと標準を合わせ始めた。
これほどの人物であっても長距離の転移を座標なしで進むのは非常に危険だった。
ゆっくりと右腕を伸ばしてシグナルの来た方向を探すように腕を右に左にと小刻みに動かす。この時に発生したわずか数ミリのズレがゆくゆくは大きなズレとなってターゲットにたどり着けない可能性もある。
さらに、受信したシグナルも大気中の有害物質などによって屈折し、偏角することによって実際とはズレて届くこともある。
それを加味して、シグナルの正しい方向を狙う。
「……」
その人物がシグナルを合わせている場所は、控えめにいっても人が少ない場所では無かった。ざわざわと周りの人が気にしだすのが本人にもわかった。
しかしその人物は辞めようとはしない。
なぜなら受信したシグナルから、事が重大であることが伝わってきたからだ。シグナルには送信者の強い思いも共に伝播される。
その人物はついにシグナルが由来している座標を見つけ、そして転移した。
転移、とはいってもすぐに目的の場所へと進めるわけではない。
やはり距離があるため、どうしても時間がかかってしまう。
しかしその人物は躊躇わない。何がその人物をそこまでさせるのか。誰も分からない。
その人物が考えていることはその人物だけが唯一わかりえるのだ。
「さて…どうしようか」
僕は途方にくれていた。地球へとシグナルを送ったものの――というかなんだか勝手に送らさってしまったが――はたしてどこの星の誰に届いたのかわかっていない。
今から誰が来るのかは分からないが、とりあえずこのままいたずらに日々を消化していくよりは何倍もいいだろう。
僕はグルグルと空を見回す。
「おそいな」
やはりさくさくと話は進むわけではなく、どうしても無駄な時間ができてしまう。
…………
まだかなあ。
まさか次回までのお預けなのか?このタイミングで僕はお預けをくらってしまうのか?
しかししかし、どうやら僕の予想はとことんはずれるようで、その時はいたずらにも飽きたので少し横になるか、と思い横になったタイミングでやってきた。
シュゥインシュウィンシュュュュン
シューーバタン
……そうね。
なるほどね、なーるほどなるほど。
はるばるやってきたのはチンパンジーだった。
めっちゃ懐かしいな。
えっーと、通例に従うならば本当は叫ぶべきなんだっけ。
まあ、そんなことは次回にしておくか。
続く。




