ストーリーブレーンは残酷に
「ここがヘリポートです!」
「すげえ!なんもない!」
「そりゃあヘリポートですしね。ショッピングモールとかあったらウケますよ」
ヘリコプターの運転手はウケないだろう。降りづらさに涙を流すだろう。
「じゃあ、もうそろそろヘリコプターが来る予定なので近くの小屋で待ちましょうか」
僕と真白さんは時速50キロのゴーカートで我が家の中にあるヘリポートへと来ていた。
郊外にガツンと作った我が家は何平米あるのか分からないほどに大きかったが、どうやらヘリポートもあったらしい。きっとこの勢いでいけば空港とかショッピングセンターもありそうな気がする。ショッピングモールとショッピングセンターの違いは知らない。
「近くの小屋ってどこです?」
「あそこです」
真白さんが指さした先にはなにもない草原が広がっていた。
「小屋なんてないですよ?頭がおかしくなったんですか?」
「ふふふ」
僕の罵倒も気にせず真白さんは不敵に笑う。
「ど、どうしたんですか?」
少し動揺する。
「まあ、あっちまで行きましょうか」
真白さんは僕の返事も待たずに指さした方向へと歩き始める。
僕もその後に続いて歩く。
僕達はしばらく歩き続けたが、真白さんはほどなくして何もない草原の上で立ち止まった。
「どうしたんですか?」
僕は真白さんに聞く。聞いてばっかりだった。
聞いてばっかり人間だった。またの名をどうしたんですか星人。
ちょんちょんと真白さんは黙ったままで下を指さす。
僕は真白さんが指さした地面をヒョッコリと覗いてみる。
「これは……」
そこにはマンホールがあった。
「これがただのマンホールだと思いますか?ダーリン」
「ダ、ダーリン!!」
まさかこの状況で初めてダーリンと呼ばれるとは思わなかった。ずっとジャスティスさん呼びだったから、名前ですらもなかった。
「もう一度ダーリンって読んでもらえませんか?」
「ダージリン」
「悪い癖が出た!」
真白さんはすーぐそうやってボケる。悪い癖だ。
新婚のウハウハとかそういうの、今まで一切ないんだけど。
せめて一緒にお風呂に入りたい。
いや、それよりもまずは新婚旅行だろう。
まだ入籍と同棲しかしていない。
我が家にメイドとかいるし寝室は夫婦で別だし。
家庭内別居かよ。
「さて、そんなことはおいといて、マンホールの中に入りましょうか」
僕的にはそんなことで流すことが出来るような話ではないので、もっとじっくりと話しあうべきなのではないかとも思うが、それはまたの機会にしよう。
真白さんはマンホールの扉をググッと開けて、そのまま中に入った。
僕は突然の急展開に呆然とする。
「どうしたんですかー早く来てくださーい」
真白さんはマンホールの中で叫んだのだろう。何重にも反響して僕の耳の中に入ってくる。
僕は覚悟を決めてマンホールの中に入ろうとする。
マンホールの中をのぞいてみると、てっきり梯子のようなものが続いていると思ったのだが、実際は階段が続いていた。
「無駄に近代的だなあ」
普通のマンホールって梯子だよなあと思いながらも階段を進む。
階段はすぐに終わって、進んだ先にはしっかりとした部屋があった。
地下にあるためかライトが付いていたが、間接照明のためだろうか、雰囲気的にはバーのようだった。というよりもバーだった。
カウンターとかあった。
ボトルが壁に並んでいる。
カウンターの向かい側にはチンパンジーなどではない、ちゃんとした人間がいた。その人は長い髪を2本に分けて肩のあたりで縛っていて、それがバーで働く人としては適切なのかどうかを僕は図り損ねていた。
「やあ、いらっしゃい」
その人は僕と真白さんに挨拶をする。
「いたんですね、シンギュラリティさん」
真白さんはその人と話す。僕はその後ろで軽く会釈だけをした。
「まあ、ちょっと暇だったからね。今日は仕事も休みだし」
そういいながらその人は右手に持っていた弓のようなものをカウンターの上に置く。
「あれ?今日はシンギュラリティさんじゃないんですか?」
「うん、今日は新人のカーツウォルトが操縦しているはずだよ」
「そうなんですか」
そういいながら真白さんは一番手前にある右端の席に腰をおろす。
僕はどうしたらいいかわからずに突っ立っていると真白さんは僕のことを思い出したように、
「こちらはシンギュラリティさんです。この家のメイドとか操縦士とかをやっています。ちなみに独身です」
「操縦士?そもそもこの家にメイドっていたんですね」
「はい、私は家事をしないタイプの人なんです。だって家がお金持ちだから!」
「お金持ち最高!」
「それジャスティスさんが言うんですか……自分の奥さんが家事をしない宣言をしているんだからもっと咎めるべきだと思うんですけどね」
「僕は真白さんが大好きだから家事をしなくたってなんだって僕は絶対に愛し続けるし、真白さんが大好きなことは揺るぎないよ。僕は真白さんがそこにいてくれれば何も困ったことはないし、真白さんが不倫しようが犯罪をしようが僕は真白さんが大好きだよ。たとえ真白さんが貧乏だとしても僕は真白さんと結婚していたね」
「かっこいい」
「なんだこの夫婦……」
シンギュラリティさんは僕達のくだらない会話に呆れたようにコメントをだした。
「夫婦漫才のようなものですよ」
真白さんはレスポンスをする。
「なるほど、めおとって読むんですね」
感心したように手を打ちながらシンギュラリティさんは驚きのような表情をする。
「シンギュラリティさんは外国の紛争地帯で育ったので教養がないんですよ」
「教養がないって……もっと別の言い方にした方がいいんじゃないんですか。さすがに失礼ですよ」
僕はコソコソと小さな声で真白さんに話す。
「大丈夫ですよ。シンギュラリティさんは教養っていう言葉の意味を知らないんですから。認識できない悪口は悪口じゃないんですよ」
なんでそんな社会風刺みたいなことを言うのだろうか。正直、そういう難しいことは辞めてほしかった。もっと、うんこちんちんおしっこみたいなことばかりで話を構成してほしかった。ギャグを崩さないでほしかった。
「まあ、悪口というのは嘘だとしても、」
真白さんは話を修正するように言葉を選びながら、
「シンギュラリティは生まれこそ外国ですけど、日本語はペラペラペ~ラだから気軽に話しかけていいですよ。普段は私達に会わないように過ごしているんで、こうやって話す機会はあまりないんですけどね」
真白さんが話し終わった後に、シンギュラリティさんは僕に向かって手を差し出しながら、挨拶をしてくる。
「そうだぞ、金玉野郎」
僕は返事をすることができずに真白さんの方を向いて、そっと話す。
「ペラペラ?」
初対面の相手のことを金玉野郎なんて言う人が本当に日本語ペラペラなのか?
?
真白さんは何か不満があったのか?というような表情で僕に弁明のようなものをしはじめる。
「片言の外国人が金玉野郎なんて言えると思いますか?」
「否定できないですね」
「でしょう」
「さっきの金玉野郎は冗談ですよ。この部屋でメイドをしています、シンギュライ・シンギュラリティといいます。おもに航空機などの移動機の操縦や護衛などをメインとしています。飛行機にヘリコプター、車に戦車となんでもいけます」
シンギュライ・シンギュラリティさんは僕達の会話に入ってきて弁明をしてくれた。僕も自己紹介をする。
「僕は聖堂義人っていいます。真白さんと結婚しています」
「よろしくね、ジャスティス君」
「ジャスティスって名乗ってないのにジャスティス呼びになってる……」
おおかた、真白さんから話を聞いていたため、そのままジャスティス呼びになってしまったのだろう。よくある話だ。
「じゃあ、挨拶として孔雀がよくやる求愛のダンスをするわ」
そう言ってシンギュラリティさんは両腕をバサバサとしながらよくわからないダンスをしていた。それを呆然として見守る僕。
「それいいですね、私もやります」
シンギュラリティさんの横で真白さんも両腕をバサバサとさせている。
困った。
困ったから僕も真白さんとシンギュラリティさんと並び、見よう見真似で両腕をバサバサとさせてみる。
「中途半端な気持ちでやるな!」
シンギュラリティさんはぶちぎれて僕をおもいっきり殴った。カウンターから乗りだして殴ったため、シンギュラリティさんはカウンターに強くお腹を打ち付けて僕と同じようにダメージを受けて悶絶する。そこには床に這いつくばるようにしている僕とシンギュラリティさんの2人がいた。
「ううう……うううう……」
真白さんは床に仰向けになっている僕に覆いかぶさるような姿勢をとり、そして、僕にキスをした。
僕は不意にキスをされて息ができない。真白さんは唇をこじ開けるようにして僕の口の中に舌を入れてくる。
まずい、このままでは官能的な表現をせざるをえない。
こんな、なんちゃって冗談小説で官能的な表現などあってはならない。早いところ決着をつけなくてはいけない。どうにかしてオチをつけなければならない。そう思った僕は真白さんが離れないように強く掴んだ。
舌、ペェロペロペロペロォ~~~ジュボジュボジュボジュボ。
僕は真白さんの舌を自分の口の中へと軽く引き、真白さんの歯の裏をジュボジュボと舐める。
「いやぁあ……やめっ……」
真白さんは僕から逃げようとするが、僕は真白さんを強く掴んで逃がさない。僕が口を占拠しているため、真白さんは思うように言葉を発することが出来ない。
真白さんはトロトロになっていた。
僕は真白さんを床に仰向けに寝かしつけて、僕と真白さんは体勢が入れ替わる。
上着の中からソッっと手を入れる。
乳、モ~ミモミモミモミィ~。
揉んだ。
「いや……こんな場所でっ……んっ……」
真白さんは悶絶している。
僕は真白さんのスカートを下げて、真っ黒なパンツもくるぶしまで下げた。
僕もズボンとパンツを脱いで、団子でいうところの串刺しをした。
「もう……」
真白さんは両手を後ろに回しながら僕に抱きついて、そっと僕にキスをした。
ピュッピュッピュッ~~。
終了。
僕はなにやら気配を感じていたので、ひしひしと背中に当たっていた視線の方向を向くと、そこにはお腹の痛みから復活していたシンギュラリティさんがいた。
僕は破顔して、なにも言えなくなった。
そんな僕から目をそらさずに、シンギュラリティさんは言った。
「まあ、さっき求愛のダンスをしたから仕方ないのかも知れないわね……」
苦し紛れのセリフとしては、百点満点だった。




