エピローグはお話の後に
僕は実家に帰ってきていた。
……眠たいな。
僕は実家の庭にある縁台に座って、日向ぼっこをしていた。
「はっは、お疲れかい?」
それは僕の祖父だった。
「うん、さすがに少し疲れたかな。」
「ワシは北海道って行ったことないけど、きっとめちゃくちゃ寒いんだろうしなあ。」
「行ったことないのかよ。」
「なんで行ったことあると思ったんじゃ?」
「あれ?真白さんと知り合いだったんじゃないの?」
「ああ、ワシがイギリスに住んでいたときに出あったのじゃよ。」
「へえ、おじいちゃんってイギリスに住んでいたときあったんだ。」
「ああ、真白はその時に愛人関係を持った人じゃ。」
「突然、祖父の性事情を聞いてしまった。」
「詳しく教えてやろうか?」
「いや、いいです。」
「ワシのちんこがな、」
「ド下ネタじゃねえか。せめて出あった時とか話すべきだろ。なんで最初から主語がちんこなんだよ。もっとやんわりと話せよ。」
「ワシのソーセージがな、」
「そうじゃない。」
「ワシのマツイ棒がな、」
「古い!めちゃくちゃ懐かしい。マツイ棒で話を広げたい。祖父のちんこの話なんて広げたくない。」
「まあ、冗談じゃよ。」
「それにしても、おじいちゃん。」
「ん?」
「話し方変わってない?なんというか、衰えたっていうのかな。」
「違う違う、フォルムチェンジじゃ。」
「なるほど。」
「本当に納得したのかよ……。」
「いや、納得できてないけど。本当におじいちゃん?」
「ふふふ。」
前にいる人は含みを持った笑い方をしている。
「ま、まさか……。」
僕は話を合わせる。
「ふふふ。」
ベリベリベリ。
「なんと!本当は真白ちゃんだったのでした~。びっくりしました?」
「かわいい。」
「面と向かって言われると照れますね。」
「それで、」
僕は真白さんの方に体を向き直して言った。
「なんで真白さんが我が家にいるんですか?」
「おじいちゃんじゃなくて私だったことに、もっと驚いてくださいよ。」
「驚いてって言われても……。」
“祖父”って書いてある紙を顔に張り付けただけの人を、祖父だと信じる方が難しいだろう。風が吹くと紙がめくれてチラチラ顔が見えるし。
原理で言えばスケキヨと一緒である。犬神家の一族に出てくる白いアレ。
「で、スケキヨさん。」
「辞めてください!スケキヨさんって呼ばないでください。私だって女の子ですよ?」
「スキヤキさん。」
「スキヤキならいいですよ。」
「いいのかよ……。」
「すき焼きって高いですしね。」
「真白さんって、わたあめを入れるすき焼きがあるの知ってますか?」
「え?なんですかそれ?私、気になりますよ!」
「ギリギリセーフ。」
「なにがですか?」
「いや、なんでもないです。」
「じゃあ、そのすき焼きのお店に連れていってくださいよ。」
「いや、僕、お金ないですし。」
「金ならあります!」
ドサッ。
「ええ、札束。」
僕は絶句した。真白さんが着ているスーツのズボンのポケットから札束が出てきたのだ。
だからポケットがそんなに膨らんでいたのね。
「でも、移動手段がないですし。」
「まかせなさい!」
ブブブブブ。
「ええ、ヘリ。」
僕は絶句した。やけに僕の上空が騒がしいと思ったら、ヘリコプターが止まっていた。
「さあ、つかまってください!」
真白さんはヘリコプターから伸びているハシゴにつかまっている。
「マジでいくの?」
「さあ、はやく!」
僕はハシゴにつかまった。
「真白さん、これどうしたらいいんですか?」
「のぼってください。」
「ライジーーング!」
「なんですか、それ。」
「特に意味はないです。」
「めちゃくちゃ頭悪そうな発言でしたよ。」
「ショックだ。」
僕はギシギシとのぼった。
僕はハシゴをのぼってヘリコプターの中に入った。
「はあ、はあ、マジか、マジか。」
僕は疲れていたので何も言えなかった。“マジか”だけが辛うじて言える言葉だった。
「ジャスティスさん疲れているんですか?だらしないですねえ。」
「なんで真白さんは疲れていないんですか。」
「そりゃあ、日常茶飯事ですし。」
「真白さんが異常なだけで、普通は日常的にヘリコプターに乗らないですよ。」
「いや、私は消防士なんで訓練でのぼるんですよ。」
「真白さんって消防士だったんですね。ビックリです。」
「嘘ですよ。」
「嘘か。」
「実は本当です。」
「本当かよ。」
「私の本当の職業は秘密です。」
「あっそ。」
「冷たい。」
そうこうしているとヘリコプターが下降してきた。
「真白さん、ヘリコプターが下降しているんですけど。」
「もう着きましたからね。」
「なるほど。」
ヘリコプターがヘリポートに着陸した。
「なんか、あれですよね。」
僕は真白さんに話す。
「どうしたんですか?」
「飛行機とかもそうですけど、勢いよく下る時に、ちんこが変な感じになりますよね。」
「それ私に言うんですか?ついてないですよ。」
「安心しました。」
「時事ネタですか。」
「いや、僕は真白さんの性別を分かりかねてたんですよ。」
「え」
「いや、別に大した話じゃなくて、男なのか女なのかっていう話ですよ。」
「は」
「どうしたんですか、歯切れが悪いですよ。」
「まさか男か女かのレベルで謎な存在だとは思いませんでしたよ。私って少し前に下着姿になってませんでしたっけ?」
「なってますけど、言ってしまえば下着までしか見てないですしね。」
「裸になれと?」
「冗談ですよ。」
「安心しました。」
「それで真白さん。」
「なんですか?」
「このヘリコプターの扉ってどうやって開けるんですか?」
「ああ、この天井のボタンで開きますよ。」
ポチッ。
う、うぃーん。
「なんだその構造。レアキャラかよ。」
「え?」
「いや、気にしないでください真白さん。」
僕と真白さんはヘリコプターから降りた。
「さて、いきましょうか。」
真白さんは僕の手を取って歩き始めた。
歩く。
すき焼きのお店についた。
「真白です。」
「お待ちしておりました。こちらにどうぞ。」
スーツ姿の店員は僕達を個室へと案内する。
自分だけスーツじゃないのが恥ずかしい。僕だけサルエルだ。
「真白さん。」
「どうしたんですか?」
僕は席に着くなり真白さんに聞く。
「僕、こんな服装だったんですけど。」
「気にしないでください!」
「真白さんは気にしなくても、僕が気にしますよ。」
「なんでですか?」
「店員さんに見られたら恥ずかしいですよ。」
「人の目なんて気にしないでください。私だけを信じて。」
「かっこいい。」
「じゃあ、食べましょうか。」
「食べましょうかって、まだ出てきてないですよ。」
「違いますよ。そこの入口で待ってるんですよ」
ガラガラガラ。
木製の扉はガラガラと音をたてて動く。
「失礼いたします。」
「ほらね?」
真白さんがドヤ顔で言う。
「すげえ。」
僕は驚く。
「ふふふ。」
店員さんは笑う。
「それにしてもジャスティスさん。」
「はい?」
「どこでわたあめの話を聞いたんですか?」
「えっ、テレビです。」
「あっはっは。」
「笑うことないじゃないですか。」
「下級国民の話は聞いてるだけでおもしろいですね。」
「ひどい。否定できないけどひどい。」
「いや、嘘ですよ。食べましょう。」
「ってこれ、わたあめ無しじゃないですか。」
「私的には、わたあめ無い方が好きです。」
「そうですか。」
僕は食べる。
「おいしい。」
「でしょう?」
真白さんはドヤ顔である。
これはドヤ顔してしまう美味しさだ。
「えーじゃあ、ジャスティスさん。」
出されたすき焼きをモリモリと食べている時、真白さんは突然話し始めた。
「なんですか?」
「次の行き先を発表します。」
「行き先?」
「はい、最初はジャスティスさんの祖父さんから説明されたと思うんですが、次は私が発表する順番です。」
「それ真白さんが言うやつなのね。」
「はい。ジャスティスさんの祖父さんから、おおまかな全体の説明は受けてますから。」
「あ、そういう感じなのね。」
「はい、たぶん次の人も、その次の人も聞いていると思いますよ。」
「なるほど。」
「今から発表するんで、ドキドキしてください。」
「ドキドキ。」
「次回からジャスティスさんが向かう場所は。」
「ドンドコドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド」
「辞めてください。そのヘタクソなドラムロール辞めてください。」
「あ、辞めます。」
「じゃあ、発表します。」
「ドキドキ。」
「次回からジャスティスさんが向かう場所は。」
「ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ」
「辞めてください辞めてください!」
「なんでですか?」
「うるさいですよ。ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキって!!!!」
「わかりました。辞めます。」
「気を取り直して、発表します。」
「はい。」
「次回からジャスティスさんが向かう場所は。」
「ドキドキ。」
「なんと!」
「お?」
「ななんと!」
「おお?」
「北広島市です。」
「広島かあ。中国地方は行ったことないなあ。」
「違います。」
「え?」
「広島じゃなくて、北海道です。」
「は?」
「北海道に北広島市っていう名前の市があるんです。」
「へえ、ためになる。」
「という訳で、次回から北広島市に入ってもらいます。」
「あーわかりました。」
「あと、飛行機の話いらないですからね。最初の章に飛行機の話を入れたから、私の出る量が減ったんですよ。自覚してます?」
「してませんでした。」
「ですよね?なにが”おしっこ漏らした。”ですか。そんな漏らした話をされた私の身にもなってくださいよ。」
「はい。」
「もう、終わったことは仕方ないんですが、次回からの人に迷惑がかかりますからね。」
「はい。」
「反省してくださいよ。」
「はい。」
「じゃあ、焼肉食べましょうか。」
「焼肉。」
「はい、すき焼き飽きたんで。」
「飽きたのか。」
ガラガラガラ。
「失礼します。」
スッ。
スッ。
目の前には肉を焼く高い七輪みたいなやつが出てきた。
「おいしい!」
「ですよね!」
ドヤ顔をされる。
されるだけの美味しさは十分にあった。
モリモリ食べた。
「デザートです。」
「おいしい!」
「ですよね!」
ドヤ顔。
分かる。
モリモリ食べた。
「ごちそうさまでした。」
「いやいや、遠慮しないで良いですよ。次はどこに行きましょうかね。」
「さらにどこか行くんですか。」
「はい。」
「まだ昼ぐらいですよ。」
「気にしないでください。」
「そうですか。」
最後にウーロン茶を飲んだ。
お会計。
「キャッシュで。」
ブラックカードだ!
すげえ!
僕達はお店を出た。
「ヘリコプターに乗ってください。」
乗る。
ブブブブブ。
「次は海にいきましょうか。」
「海。」
「プライベートビーチですよ。」
「すげえ。」
「決まりましたね。」
ヘリコプターは動いた。
ブブブブブーン。
「着きましたね。」
テンションが上がっている真白さん。
「そうですね。」
「どうしたんですか?ジャスティスさん。」
「予想していたより広かったんで驚きました。」
「そうですか。私からしたら普通なんですけどね。」
「それで、真白さん。」
「どうしたんですか。」
「水着ないんですけど。」
「ここはプライベートビーチですよ?」
「まさか……。」
スッポーン。
「裸で泳げばいいんですよ。」
僕の鼻血がブァァァァァァァァァ。
砂浜に鼻血がビチャアアアアァァァァァ。
服に鼻血ベトオオオオオォォォォォォォォォォォ。
ビィチャビチャビチャビチャアアアアアアァァァァァ。
ドドドドドバッドバッドババババババババババババババババ。
ヒューン。
バタリ。
「あー!ジャスティスさんが倒れた!」
おわり。




