ナチュラルな獅子
話が進まないですね。
僕は延々と続く砂漠の中で、汗水流して、脳汁垂れ流して、自転車を漕いでいた。自転車の荷台には女の子が乗っていた。
名前を、真白白というらしい。“ましろはく”である。どれだけ白さを強調したいのだろうか。
自分で名乗っていた井上ジェスティンというのは、その場で適当に考えた名前らしい。アメリカ人でもなかなか居ないんじゃないか。ジェスティンって。
「遅いですよジャスティスさん。」
自転車の荷台に乗っている真白さんは僕を急かす。
「いや、これ、重いですよ。」
僕は息も途絶え途絶えになりながら自転車を漕ぎ続ける。地面が砂地なので、コンクリートよりも何倍も進まない。そして滑る。スケート連盟の会長がここにいたら間違いなく滑っているだろう。
「言い訳しない。」
真白さんは若干のテンションの上がりを抑えきれずに、言う。
「いや、そんな、」
ちょっと上手い一言でも言おうと思ったが、そんな体力は残っていなかった。もはや頭も正常に働いていない。
「どうしたんです?じゃんじゃん話してくださいよ。」
真白さんは、もはやテンションを隠すつもりもなく、ノリノリで話す。僕はゲロゲロに疲れている。ゲロを吐きそうだ。
「ゲロ、吐いていいですか。」
「ゲロ野郎め。」
自転車を漕いでいるのは僕なのに、なぜゲロ野郎と罵られなければいけないのだろうか。じゃあ、真白さんが漕いでくれよ。と、思わなくもないが、そもそも女性に漕がせることはどうなのだろうか。という思いに駆られて、理性が働いて、その言葉を前歯がストップさせる。
「これ、いつになったら着くんですか。」
僕は真白さんに話しかける。
「いや、まだ全然進んでないですよ。後ろ見てみてくださいよ。」
僕は言われたとおりに、自転車を漕いでいた足を地面におろして、昔の自分がいた場所を見る。
わりと近いところに駅が見えた。距離的には数キロであろうか。
「ええ。」
僕は絶句する。
「ほらほら!誰が止まっていいって言ったんですか。漕いでくださいよ。漕いでくださいよ。いそいそと急いで!」
もちろん、僕の体力がないのも当然なのだが、少し言い訳をしたい。
まず、今日は雲1つない快晴である。さらに、周りには影という影がなにもなく、自分の影で自分の体を休めるしか方法がない。
唯一の救いとしては、湿度が低いところだろうか。周りに水と呼べるものがなに1つとしてないため、僕は気温よりも涼しく感じるのだろうか。
しかし、水がない。ということは、同様に、給水ポイントがない。ということである。僕はもう喉が渇いていて、なにか液体を口の中に入れたい気分だ。
「これ、いつになったら着くんです?」
僕は真白さんに聞く。
「次章になったら着いてますよ。」
「じゃあ、もうこの章終わり!」
「いや、終わりませんよ。全ての決定権は私が持っていますから。」
「鬼。」
「そんなこと言うと、延々と自転車を漕ぎ続けさせますよ。」
「神。」
「よろしい。」
「じゃあ、早く終わらしてくださいよ。」
「終わり!」
「やったぜ。」




