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多言失言遺言  作者: シャバゲナイト老婆
first season
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16/49

ツーマンセルは荒野にてある

次々回ぐらいには話が進むと思うんですけどねえ。

「では、付いてきてください。」

「え?」

 その突然の話に僕はついていけなかった。

「駅前のままでは何も進まないので、とりあえず私の家に行きましょう。」

「え?」

「じゃあ、付いてきてください。」

 僕の目の前にいた女の子は自転車を押して歩き始める。

 この距離を歩くの?

 この地平線まで、建物どころか、30cm以上あるものすら何も見えない土地のなかで、僕は歩いて地平線の彼方まで行かなくてはいけないのか。

「あの、」

 僕は話しかける。

「なんですか?」

「ちなみに1つ聞きたいんですけど、ここから目的地まで何キロぐらいあります?」

「うーん、正確に測ったことはないんで分からないですけど、たぶん30キロくらいじゃないですかね。」

 絶句。

 僕は絶句する。

 その瞬間だけ、僕は一切の言葉を発する方法を忘れた。足の動かし方を忘れた。瞬きの仕方を忘れた。ただ、ただ心臓が動いているだけだった。

「歩いていくんですか?」

「足の速さに自信あります?」

 ……それは、あれか。

 走れってことか。

 さすがに30キロも走り続けることが出来るならば、もうとっくに自力で自分の道を切り開いていただろうが、そもそも、始めて来た北海道でこんな色々な体験を一度にしてしまったので、そんな体力はどこを探してもなかった。濡れたパンツと共に駅のゴミ箱に捨ててきた。

「バスとかってないんですか。」

「ありますよ。」

 じゃあ、それでいいじゃないか。なぜ自転車で来たのだ。

「朝と夜の一本ずつですけど。」

そりゃ無理だ。

「じゃあ、私が自転車の荷台に乗るんで、ジャスティスさんが自転車を漕いでください。」

「わかりました。」

 僕は自転車のサドルにまたがる。僕の後ろには女の子が荷台に乗っている。

「あ、1ついいですか。」

 僕は話しかける。

「なんですか?」

「名前を教えてもらっていいですか。」

「ジェスティンです。」

「ジェスティン。」

「はい、ジェスティンです。井上ジェスティン。」

「本名はなんですか?」

「え?」

「僕のジャスティスの名前の由来からすると、きっと本名じゃないですよね。」

「それは……。」

 ずいぶんと、もったいぶるようにして話す。僕の目を鋭く見つめている。その瞳は決して睨んでいるわけではないが、目からは力強さが伝わってくる。

「それは……?」

「次章でお願いします。」

「今までの経験から思ったんですけど、けっこう章のつながりを理解するタイプの人なんですね。」

「うるせいやい!」

「キャラ崩れてますよ。」





続く

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