ツーマンセルは荒野にてある
次々回ぐらいには話が進むと思うんですけどねえ。
「では、付いてきてください。」
「え?」
その突然の話に僕はついていけなかった。
「駅前のままでは何も進まないので、とりあえず私の家に行きましょう。」
「え?」
「じゃあ、付いてきてください。」
僕の目の前にいた女の子は自転車を押して歩き始める。
この距離を歩くの?
この地平線まで、建物どころか、30cm以上あるものすら何も見えない土地のなかで、僕は歩いて地平線の彼方まで行かなくてはいけないのか。
「あの、」
僕は話しかける。
「なんですか?」
「ちなみに1つ聞きたいんですけど、ここから目的地まで何キロぐらいあります?」
「うーん、正確に測ったことはないんで分からないですけど、たぶん30キロくらいじゃないですかね。」
絶句。
僕は絶句する。
その瞬間だけ、僕は一切の言葉を発する方法を忘れた。足の動かし方を忘れた。瞬きの仕方を忘れた。ただ、ただ心臓が動いているだけだった。
「歩いていくんですか?」
「足の速さに自信あります?」
……それは、あれか。
走れってことか。
さすがに30キロも走り続けることが出来るならば、もうとっくに自力で自分の道を切り開いていただろうが、そもそも、始めて来た北海道でこんな色々な体験を一度にしてしまったので、そんな体力はどこを探してもなかった。濡れたパンツと共に駅のゴミ箱に捨ててきた。
「バスとかってないんですか。」
「ありますよ。」
じゃあ、それでいいじゃないか。なぜ自転車で来たのだ。
「朝と夜の一本ずつですけど。」
そりゃ無理だ。
「じゃあ、私が自転車の荷台に乗るんで、ジャスティスさんが自転車を漕いでください。」
「わかりました。」
僕は自転車のサドルにまたがる。僕の後ろには女の子が荷台に乗っている。
「あ、1ついいですか。」
僕は話しかける。
「なんですか?」
「名前を教えてもらっていいですか。」
「ジェスティンです。」
「ジェスティン。」
「はい、ジェスティンです。井上ジェスティン。」
「本名はなんですか?」
「え?」
「僕のジャスティスの名前の由来からすると、きっと本名じゃないですよね。」
「それは……。」
ずいぶんと、もったいぶるようにして話す。僕の目を鋭く見つめている。その瞳は決して睨んでいるわけではないが、目からは力強さが伝わってくる。
「それは……?」
「次章でお願いします。」
「今までの経験から思ったんですけど、けっこう章のつながりを理解するタイプの人なんですね。」
「うるせいやい!」
「キャラ崩れてますよ。」
続く




