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三週目

「今週の竜は、クリムゾンヘリオスチートドラゴンよ!」


 お、今週はかっこいい。


 いや待て。

 なんかチート入ってたな。


 チート入れるなよ。

 チートがなければ間違いなくこっちだったぞ。


 くそ、分からん。

 おばあちゃんの方も聞いてから判断するか。


「ちなみに、おばあちゃんの方は?」


「暁に染める竜よ」


 くっ……!

 こっちもかっこいいな。


 そう考えると暁の方か?

 いやでも、チートがなければ正直クリムゾンヘリオスの方がかっこいい気がする。


 よし、俺はミルファを信じるぞ!


 早速ギルドに一人で行き、受付嬢の前に行く。


「あら、今週もお一人ですか? どの依頼を?」


「決まってるだろう」


 そこでいったん区切る。


 頼むぞミルファ。

 信じてるからな!


「クリムゾンヘリオスチートドラゴンを退治する!」


 また空気が固まった。


 くそぉぉぉぉぉ!

 暁だったか。

 暁の方だったのか!


 確かにかっこいいもんな、暁に染める竜。

 それも分かるよ。

 ギルドのセンスも悪くないよ。


 ざわめきが聞こえる。


 お、今週は合ってる?

 いや、なんかチートってついてなかった?

 チートって。

 クスクス。


 受付嬢も動き出す。


「えっと、クリムゾンヘリオスドラゴン、の依頼ですね」


 と言って、淡々と依頼書の事務処理をこなしてきた。


 おい!

 ちょっと待て。


 チート無し?

 チート無しなの?


 確かにそっちの方が俺もかっこいいと思うよ。

 でも、命名者を尊重しろよ。

 修正すんなよ!


 そのパターンもあるなら、俺はどうすればいいんだよ。


 くそ!

 難易度が高すぎる。


 だが、周りからこんな声も聞こえてきた。


 あれ、普通に受理されたぞ。

 さすがにチートは聞き間違いか。

 デカドラゴンの印象が強すぎたか。


 よし。

 大体合ってたからセーフか、これは?


 さっきは終わったと思ったが、セーフかもしれん。


 良かった。

 よし、徐々に名誉を回復しつつあるぞ。


 ちなみに、クリムゾンヘリオスチートドラゴンは、炎に身を包んだドラゴンで、先週のエンシェントよりはデカかったが瞬殺した。


 報酬をもらって魔術院に戻ると、またミルファが水晶玉を覗いている。

 そういえば、クリムゾンの戦闘力を聞いていなかったな。


「倒してきたぞ。ちなみに、今週の竜の戦闘力は?」


「百よ!」


 うん。

 デカドラゴンに比べたらしょぼかったし、エンシェントに比べたらデカかったから、妥当なところだな。


「まあ、平均に比べるとやっぱりそこそこ強いな」


「そうね。平均戦闘力は、四だもの」


 え?

 平均が四?


 高くないか。

 いや、俺の百万に比べたら低いけど、先週二だったよね?


「ちょっと待て。平均が上がりすぎてないか」


「そんなことないわ。先週が二、先々週は一だったんだから、普通よ」


「いやいや、確かに差は小さいけどさ、どんどん倍になってるだろ」


「それがどうかした?」


「最初一だったのに、急にどんどん倍になるなんて、増えすぎだろって!」


 ミルファは首をかしげて、俺が言うことが分からないらしい。


「誰が最初一なんて言ったの? たまたま先々週が一だっただけよ?」


 え、一が基準じゃないの、この数値。


「じゃあ、いくつから始まってるんだよ」


「知らないわ。ただ、初めてこの魔術を教わった時は、にのまいなすごひゃくにじゅうじょうっておばあちゃんが言ってたわ!」


 にのまいなすごひゃくにじゅうじょう?


 は?

 なんか魔法唱えた?

 水晶玉を覗きながらそんなこと言ったら、もう完全に詠唱だろ。


 こいつ魔術師って言ってたし、この世界の呪文詠唱か?

 もしかして水晶玉を動かす合言葉か?


 ちょっと待て。

 なんか聞いたことがあるような気がしてきた。


 にのまいなす……。

 二のマイナスってことか?


 ごひゃくにじゅうじょうって、二乗とか、三乗とかのあれか?

 マイナス乗とか、なんか見たことあるけど、もう覚えてないぞ。

 口で言われるのは初めてな気がするぞ。


 数字なのか呪文なのか、はっきりしてくれ。


「えっと、お前、それ意味分かって言ってるのか?」


「当然じゃない! 最初は分からなかったけど、今は分かるわ!」


「どういう意味?」


「五百二十回二倍したら、一になるってことよ」


「おお、すごいなお前」


「天才魔術師なんだから当然じゃない! おばあちゃんがいなくなってから、魔術の計算は自分でやってるのよ!」


 こいつ、ほんとに天才なのかもしれん。

 なんか悔しい。


 いや、そんなことはどうでもいい。


 ミルファが最初に見たときから、五百回以上二倍されて一になったってことは、ずっと毎週二倍になり続けてるってことじゃないか?


「もしかして、戦闘力って毎週二倍になるのが当たり前?」


「そうよ!」


「俺の戦闘力は?」


「百万よ!」


 自信満々に言うんじゃねぇ!


 なんか百万が一気にうれしくなくなってきた。

 周りは二倍になってるのに、俺だけ変わってないじゃん!


 今はまだ四とかだからいいけど、すぐ追いつかれるんじゃないか?


「ちなみに、この調子でいったら平均戦闘力が百万を超えるのは?」


「十八週後ね」


 計算早っ!

 やっぱ天才か?


 いや、そんなわけない。

 天才なら俺の百万の脆さに気付くはずだ。

 たまたまだ。


 くそ!

 せっかく最強になって、いずれは名誉挽回と思っていたのに、このままじゃいつの間にか最強どころか最弱になっちまうぞ。


「くそ、俺の戦闘力もなんとかして上げないと!」


「大丈夫よ! きっとなんとかなるわ!」


「何でそんなに自信満々なんだよ! なんか急に前より体が重くなってきたような気がしてきた」


「周りが四倍だから、それもあるかもしれないわね」


 周りが四倍って、世界自体が二倍の強さになるみたいな話なの?

 確かに、そうじゃなかったらマイナス五百とかの時に何もできなくなるか。


 世界がおかしいのは今はどうでもいい。

 とりあえず俺の最強を維持しないと。


「それを考えると、称号も考え直さないと!」


「え? 称号?」


 俺が問いかけるも、ミルファは無視して続ける。


「今のあなたは、伝説レジェンド最強チート強すぎ破滅ダークネスアルティメット破滅ゴッドハイパーインフィニティブレイブチート勇者よ!」


 うわぁぁぁぁぁぁ!

 破滅とチートが一個ずつ減った!!


 ダサいだけだと思ってたけど、なんか一気に弱くなった気がする!

 俺の破滅とチート、返してくれ!


【三週目の戦績】

ルインの戦闘力:1,000,000

世界の平均戦闘力:4

現在の称号:伝説レジェンド最強チート強すぎ破滅ダークネスアルティメット破滅ゴッドハイパーインフィニティブレイブチート勇者


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