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十三週目 ④

 ブリザードドラゴンを倒して三人と別れた後、俺は一人でガルドさんのところにまた来ていた。

 今回はドラゴンの討伐のことではない。

 神器のことを聞いてみるためだ。


 ドラゴンとの戦いでかなり疲れていそうだった三人には、ガルドさんへの報告は俺がしておくから、ゆっくり休むようにと言っておいた。


「おお、ルイン君か。どうだった、アルトは?」


 俺が訪ねると、ガルドさんが出てきてくれた。


「ええ、ガルドさんの言う通り、三人の力と、ついでにミルファの薬の力も合わせたら、何とか倒せました」


「そうかそうか、それは良かった。ミルファちゃんの力も加わっていたなら、当然かな?」


 ガルドさんが少し冗談めかして言う。


「そんなことを言ったら、またあいつは調子に乗るから、三人の力ということで」


「ははは、そうだな」


「それで、今日は、もう一つ聞きたいことがあって」


 俺がそう切り出すと、笑っていたガルドさんの顔が真剣になる。


「ガルドさんは、神器って知ってますか?ミンダレイさんが魔術に使っていたものが、今も残っているはずで、それを探していて」


「神器?そんな話は聞いたことがないな」


「神器自体は聞いたことがなくても、前のあの板みたいに、何かを預かっているとか、そういうことは?」


「いや、私はあれ以外は何も預かっていないよ」


 ガルドさんのところにもなかったか。

 だとすると、本当にもう当てがない。どうしよう。


 俺が一人で悩んでいると、ガルドさんがまた口を開いた。


「神器が何かは分からない。だが、名前からして、何か大切なものなんだろう?」


「はい、そうです。ミンダレイさんが遺した魔術の、核になるものらしくて、ドラゴン退治のために、それを探しているんです」


 細かい説明をする自信がない。これで伝わってくれるだろうか。


「なるほど。竜退治のためのものなんだな。そして、それはミルファちゃんも知らないと」


「はい」


「もし誰かにそれが託されているのだとしたら、私ではないよ。ミンダレイさんが託すなら、一人しかいない」


「じゃあ一体?」


「息子のミルド君だよ」


 ミルドさんが?確かにミンダレイさんの息子だし、あり得る話だけど、ミルドさんは魔術を嫌っていたし、あれだけ後悔していたミンダレイさんが、魔術の道具をまた渡すだろうか。


「ミルドさんは、魔術を嫌っていたんじゃ?」


「知ってるのかい。その通りだ。だが、彼はまた、彼なりの方法で竜と戦い続けている」


 彼なりの方法で?どういうことだろう。

 ミンダレイさんを継いで魔術師にならなかったんだから、ガルドさんのように武術の道に進んだということかな。

 ガルドさんも自分は魔術師ではないって前に言ってたし。


「魔術師ではなくて、ガルドさんのように武術で戦うことにしたってことですか?」


「そうではない。彼は、考古学者になったんだ。あの竜が、どうして毎週現れるのか、それを止めることはできないのか、その根幹を探ろうとしているらしい」


 考古学者……。全く想像していない答えだった。

 この世界に来てから、毎週ドラゴンが現れるのは、この世界はそういうものだ、と納得してしまっていた。

 もし、それが当たり前ではないのなら、ドラゴンを止められるなら、確かにそもそもドラゴンと戦う必要自体がなくなる。

 一番の解決策だ。


「彼がミンダレイさんの魔術院を去ってから十年ほどした時かな、たまたま会ってね。その時に、こう話していた」


 ガルドさんはそう続けると、その時にミルドさんが言った言葉をしみじみと思い出すようにして、語ってくれた。


僕は、重荷に耐え切れず、自分のわがままで竜と戦う魔術師になる道から逃げました。

その代わりに、母にその重荷を背負わせ続けてしまった。

今更、もう一度、その道に戻って竜と戦う力はありません。


その道に戻ることはできませんが、別の方法で、竜との決着をつけたいと思っています。

古代の文献を見ると、その時代には、竜は現れていなかったみたいなんです。

竜がいつからか現れ始まったなら、必ず原因があるはずです。

僕は、それを突き止めて、竜を止めたい。

そうすれば、母もあの重荷から、解放されるはずです。


 俺は、ミルドさんがわがままだとは思わない。

 誰だって、小さいころから命がけで竜退治をしろなんて言われたら、絶対に嫌だ。

 もし俺がその立場だったら、もっと早く逃げ出すだろう。

 でも、この世界では、その役目を誰かが担わなければならない。

 ミルドさんは、自分が逃げたからその役目を母親に負わせたと悔やんでいたようだ。

 それで、別の戦い方の道を。確かにミンダレイさんと道は違うが、同じ覚悟を感じた。


「そのことは、ミンダレイさんも知っていたのですか?」


「それは分からない。だが、あれだけ賢かったミンダレイさんが、仮に直接は言われなかったとしても、息子が生涯をかけて取り組むと決めた道を知らなかったとは思えない」


 それに、ミルドさんは、自分の娘のミルファを、魔術を教えてやってくれと言って、ミンダレイさんに預けているんだ。

 本当に心の底から母親を、魔術を疎み続けていたなら、そんなことはあり得ない。


 ミルドさんが実際に神器を受け取ったのかどうかは分からない。ただ、聞いてみる価値は間違いなくある。


「ありがとうございます。ミルドさんに、連絡を取ってみます」


「ルイン君は、ミルド君とも交流があるのか?本当に君は、すごい人だな」


 ガルドさんはそう言ったが、俺は、ただその時の思いつきで動いているだけだ。

 ミルドさんに連絡を取ったのも、ミルファに黙って勝手に手紙を送っただけだし。


 ガルドさんの道場を後にすると、早速魔術院に戻ってから、手紙を書いた。


 突然神器のことを聞くことになってしまうし、説明もちゃんとできる自信がないが、この際仕方ない。何とか頑張って内容を考えた。

 内容は、こんな感じだ。


『ミルド様、


先日に引き続き、突然また、変なことをお聞きするご無礼をお許しください。

特に今回の内容は、何もご存じなければ、そのままご放念ください。


この世界は今、毎週全ての強さが二倍になる、特別な現象が起こっています。

それは、ミンダレイ様の魔術によるものだと読みました。

そして、その魔術を発動するために、神器と呼ばれる、特別な何かが使われています。


この魔術は、ミンダレイ様がドラゴン退治を続けられるように、発動した魔術です。

しかし、私は今、この魔術を止めたいと考えています。

今の私の状況では、この魔術が逆にドラゴン退治を続ける障害となってしまっています。

特別な事情で、私だけこの二倍強くなる恩恵が受けられず、一方でドラゴンが強くなってしまうためです。


魔術を止めるためには、神器を見つける必要がありますが、私には、どこにあるのか、その当てがありません。

もしかしたらミルド様が何かご存じではないかと、お手紙を書きました。


何か神器について知っておりましたら、教えてほしいです。

ルイン』


【十三週目の戦績】

ルインの戦闘力:1,000,164

世界の平均戦闘力:4,096

現在の称号:卍黒銀の最強勇者卍

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