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十一週目

「今日は、魔術院全員で、成果発表会をやるわよ!」


 なんかミルファが言い出した。

 俺は、最近ずっと古い魔術院に通っていたが、ミンダレイさんの日記の続きは得られていない。

 二倍になる世界のことを知るために、早く続きを探さないといけないのに。


 でも、これを無視したら面倒そうだ。


「成果発表会って一体なんだよ」


「おばあちゃんの魔術院でやっていたものよ!定期的に、弟子全員が研究成果を発表し、院長自らそれに対して指導するの。最後には、院長の新魔術の披露もあったそうよ!」


「院長?」


「今の院長は、私に決まってるじゃない!」


 くそ、こいつ、絶対おばあちゃんがやってたことをやってみたくなっただけだ。

 セリアとニックも魔術院の庭に集められて、偉そうに腕を組むミルファの前に三人並んだ。


「まずは、ルインからよ!」


「え、俺?」


「あなたが一番最初の弟子なんだから、当然じゃない!」


 え、俺、弟子入りした覚えないんだけど。召喚されただけで。

 セリアたちが弟子入りする話の時、初めての弟子って言ってなかったか。

 そんな理屈は通用しないか。


「えっと、何すればいいの?」


「成果発表会なんだから、魔術の成果を発表すればいいのよ!」


 そんなもん何もないわ!お前、俺が魔術のことを何かしてるところ見たことあるのかよ。


「いや、俺、魔術なんて何もないけど」


「何を言っているのよ!」


 ミルファが下からにらんできた。


「あなたは、最高の召喚術の成果なのよ!ここにいるだけですごいの!もっと存在を誇りなさい!次そんなこと言ったら、許さないわ!」


 おお、なんか予想外の方向から怒られた。存在そのものが肯定されて、なんかうれしい。

 でも、召喚の成果って俺じゃなくてミルファの成果のような気もする。


「召喚って?」


 俺たちのやり取りを見たセリアに疑問を持たれてしまった。


「何でもない。いつものミルファの勢いだよ」


 謎の言い訳をしたら、なんか納得された。勢いで何でも納得されるミルファ、逆にすごい。


「じゃあ次は、ニックね!」


「はい、分かりました!」


 ニックは本当の弟子のようにミルファに対して答えると、杖を取り出す。


「ルインにかけてみなさい」


 ニックが呪文を唱え、俺の体が光る。

 ミルファは、水晶玉の方ではなく、板の方を覗いて呪文を唱えている。


「うまくいってるわね!一・二倍よ。この感じなら、反転作用はもう大丈夫じゃないかしら」


 おお、ちゃんと倍率で俺の戦闘力が上がっているのか。ということは俺は今、百二十万か。

 修業しても全然上がらなかったことを考えると、大きいぞ。


「でも、連続とかセリアの魔法との重ねがけを考える時は、それだけじゃ駄目よ。複数の補助を重ねようとすると、魔法同士が反発して打ち消し合っちゃう、反発作用が起こるわ。特に、連続してかけた時は反転作用と同じように見えるけど、全然違う作用だから、またそれを抑える研究が必要ね」


「分かりました!ありがとうございます」


「反転作用について書かれた魔術書は、この家にもあったはずよ。後で読むといいわ」


 ニックが、ミルファに言われたことを真剣に聞いている。

 何これ、普通にまともな師弟に見えてきた。


「次はセリアね!」


「分かったわ」


 俺にかけられた補助魔法が解かれた後、声をかけられたセリアは、俺が剣を構えると、それに向けて詠唱をする。


 剣が軽く炎をまとう。でも、最初にアルトにかけた時の氷よりも、小さいような気がする。


「反属性作用を抑えるために、炎の大きさはあまりこだわらないようにしてみたの。どうかしら」


「いい考えね!まずは成功を優先して、そこから威力を高めていくのは、感覚をつかむのに重要よ。ただ、次は炎の威力を高めるんじゃなくて、違う属性をやって幅を増やした方がいいかもしれないわ。属性ごとに感覚が違うと本にあったから、一つの属性ばかりやっていると、癖がついちゃうかもしれないわ」


「なるほど、そうね。次は何がいいかしら」


 なんか、こっちもまともすぎる。俺の発表との落差がひどい。


「そうだ、一番強い竜ってどれなんだ?」


「今分かってる中では、常闇をもたらす竜だけど、どうしたの急に」


「それの弱点属性を覚えたら、一番強い敵に使えていいかなって」


 俺が思いつきを口にする。


「確かに実戦を考えたら、一番それが良さそうね!だったら聖属性よ!」


「あれ、名前にホーリー入ってなかったっけ」


「毛の一部が白いだけで、聖属性はないから大丈夫よ!」


 せっかく名前が意外と体をなしていると、あの時感心したのに、色だけだったのかよ。


「さて、最後は私ね!」


 ミルファが胸を張って言った。ああ、これは最後が一番やりたかったやつだな。


「私は戦闘力即倍薬の効果を一時間に短縮することに成功したわ!」


 高らかに宣言する。おお!あの薬が完成したのか!


「それじゃ、反転作用もなくなったんだな」


「反転作用はそのままよ!時間を短くすることに成功したの!」


 え、意味ないじゃん。戦闘力が半分になるのを避けるために、時間を短くしたのに。


「すごいわ。魔術の効果を意図した通りにするのって、ものすごく難しいのに」


「院長発表にふさわしい成果ですね!僕ももっと頑張らないと」


 なんか弟子たちが褒めたたえてる。俺の方が感覚おかしいの?


「反転作用を抑えるために時間を短くしたのに、ただ短くなっただけじゃ意味がないんじゃ」


「何言ってるの。反転作用を抑えるための方法と、元の効果を変える話は別なの。元の効果を短くしてから、反転作用を抑える順番にすれば、それがやりやすくなるって、魔術の基礎の勉強が足りてないんじゃない?」


 なんかセリアに怒られてしまった。

 ごめん。でも俺、勝手に弟子になってただけで、魔術の勉強してないから。許して。


 とにかく、ミルファの成果は結構すごいらしいということは分かった。

 この分なら、戦闘力即倍薬もできて、属性魔法と補助魔法で俺の力がかなり高まりそうだな。

 なんか希望が持てて、意外と良い成果発表会だったぞ。

 普通に魔術院としてまともだったし。


 成果発表会が終わり、セリアとニックが帰った後、俺はミルファに薬のことを改めて聞いてみた。


「それで、時間が短くなったから、反転作用の方も抑えられる見込みはあるのか?」


「全然ないわ!だいぶ時間がかかりそうね!」


 え、それは困る。時間はそんなにないんだぞ。あんまり追い詰めたくはないが、危機感はやっぱり持ってほしい。

 竜を倒せなくなったら、お前も困るはずだろう。


「じゃあ属性魔法と同じように、本を探すとか」


「それが、前に属性魔法の本を探した時に一緒に探してたんだけど、錬金の本は全然なかったのよ」


「え、ミンダレイさん、錬金はそんなにやってなかったとか?」


「違うわ!正しく言うと、なかったというより、もう運んだ後だったのよ!ここにあるので全部だったの。多分私が錬金が好きそうなのを見て、おばあちゃんが運んでおいてくれたんだわ!」


 なるほど、そりゃあミンダレイさん本人なら、どこに本があるのも知ってただろうし、持ってくることも簡単か。

 好きそうな本を何も言わずに持ってくるだけってあたりが、ミルドさんの時との違いを感じる。


「おばあちゃんの本はないし、私よりも錬金に詳しい人なんて知らないし、ヒントがないから時間がかかりそうなのよ」


 ミルファはそう言ったが、俺は、錬金に詳しいかもしれない人を一人、思い当たってしまった。

 ミルファより詳しいかどうかは分からないが、夢中で薬を作っていた人。ミルドさんだ。


 魔術を嫌っているミルドさんが協力してくれるかどうかは分からないし、ミルファに言ったら怒るだろう。

 それでも、この世界の状況は、ミルファが一人で薬を作るのを待ってはくれない。


 俺は、こっそりとミルファの手紙で宛名を見て手紙を書き、ニックに手紙の出し方を聞いて、手紙を出した。

 手紙の内容は、こんな感じだ。この文と俺が分かる範囲で薬のことを書いた。

 手紙なんて苦手だが、とりあえずやってみて損はないだろう。

 後でミルファに怒られるくらいだ。


『ミルド様


突然のご連絡の無礼をお許しください。

ミルファさんと魔術院で暮らしている、ルインと言います。


実は今、ミルファが戦闘力即倍薬という薬を作っていて、その反転作用を抑えるのに苦戦しています。

ミルド様が魔術について考えたくないのは、話で伺っています。

でも、何か分かることがあれば、知恵を貸してもらえませんか?


ルイン』


【十一週目の戦績】

ルインの戦闘力:1,000,164

世界の平均戦闘力:1,024

現在の称号:†漆黒の異世界より出し邪眼を持つ最強伝説の勇者†


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