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十週目

「今週の竜は、暁を喰らい千の雷を従え白銀の翼で天を覆い終焉の静寂をもたらす邪眼を持つチートドラゴンよ!」


 くそ!最近このくだりなくなったと思ったのに!

 って、あれ、なんか名前の作風、だいぶ変わってない?

 途中までなんか知的だしかっこいいぞ。邪眼で怪しくなって最後チートに戻ったけど。

 黒歴史の方向性が、小学生から中学生に進歩したのか?


「どうしたミルファ、何かあったのか?」


「何かって何よ!おばあちゃんの魔術書をいろいろ読んでいたら、いい名前が浮かんだのよ!」


 持ち帰ってきた魔術書をずっと見てると思ったら、名前考えてたのかよ!

 確かに、前半はミンダレイさんと同じ感じがする。長さ以外は。

 というか、この長さだと結構強そうだな。


「ちなみに、戦闘力は?」


「五万よ!」


 は?五万?五万って言った?万って俺専用の単位だったはずじゃん。

 あのデカドラゴンでも、三百だったはずじゃん。


 そういえば、全部弱すぎてあんまり気にしてなかったけど、竜は二倍にならないって言ってなかったっけ。


「あのさ、前、竜は戦闘力変わらないって言ってなかったか?」


「もう、話を聞いてないのね!竜が現れた後は変わらないって言ったのよ。現れる時は、世界に合った戦闘力になるわ!多分あなたも、今召喚されたらもっと戦闘力が高かったはずよ!」


 確かに一度現れた竜って言ってたような気がしてきた。俺も異世界から来たから、竜と同じ扱いってことか。


「ちなみに、今呼び出されたらどのくらいだったの?」


「五億くらいね!」


 億!?また俺専用の単位になるじゃん!もう一回転生やり直したい!


「もっと遅く呼び出されれば良かったな」


「周りも同じだけ変わってるんだから、いつ呼び出されても同じよ?数字が違うだけじゃない」


 ん?確かに?

 えっと、そこからまた周りが倍になっていくとなると、結局呼び出されてから周りに抜かされるまでの時間は変わらないのか。

 よく考えると分かったが、ミルファが当たり前のように分かってたのが悔しいな。

 こいつ、こんななのに魔術モードの時は本当にすごいから腹が立つ。


 とにかく、五万のドラゴンを倒しに行かないといけないな。

 ちょっと気になってることがあったのに、そっちが先だ。


「じゃあ、俺は行ってくる」


「いってらっしゃい!私は戦闘力即倍薬を作るわ!」


 おお、やる気はずっと続いているのか。

 セリアとニックも毎日来て修業してるし、本当にまともな魔術院に見えてきた。


 もうすっかりおなじみになったギルドへ行き、受付嬢のところへ向かう。


「今週も、いつもの?」


「ああ、頼む」


 もう、カフェの常連みたいなやり取りだけで、ドラゴン退治の依頼の手続きが終わるようになってきた。


 それにしても、このギルドは何度来ても飽きずにざわざわしている。


 おい、またルインが来たぞ。

 もう八週連続で一人で討伐してるだろ。そんなのいつ以来だ?

 あのミンダレイ以来じゃないか?

 淡々と依頼を受けて退治に行くの、かっこいいわ。

 伝説の再来だな。


 ごちゃごちゃ何か言っているが、俺は忙しいんだ。いちいち聞いている暇はない。

 最初の頃の余裕が懐かしいが、状況が変わってしまえば仕方ない。


 邪眼チートドラゴンのところに来ると、だいぶ前に見たセイクリッドと同じくらいの大きさだ。

 デカドラゴンに比べると小さいが、かなり大きい部類。

 ま、俺から見たら全部雑魚なのは変わりないがな。


 いつものように、剣も抜かずにグーパンチで瞬殺しようと、とりあえず殴る。

 足を殴ると、邪眼チートドラゴンの大きな足がはじかれてよろけたが、また体勢を取り戻した。


 え?ワンパンじゃない?あれ?

 そのままドラゴンは、唸り声を上げながら後ろ脚だけで立つと、大量の雷を生み出し、俺に向かって放ってきた。


 視界が雷で真っ白になる。

 そして、ちょっと静電気でビリビリしたような痛みを感じる。

 え、いたたたた。痛いんだけど。ドラゴンの攻撃が、俺に効いてる!?

 戦闘力五万、相当強いぞこれ。


 ちゃんと本気で戦わないと、これはまずいぞ。

 俺は剣を抜き、道場で習った通りに構える。

 ドラゴンがもう一度雷を放ってきたので、ジャンプして避けて、そのまま体を思い切り斬りつけた。

 斬ったところが大きく切れて、血が噴き出す。


 ドラゴンは苦しんでのたうち回るが、また体勢を立て直した。

 斬った反動で後ろに飛んで着地し、剣を構える。

 ドラゴンが今度は黒い眼を光らせて、口から何か光の球のようなものを吐き出してきた。

 避けるのは間に合わなそうだったので、剣を振って弾き飛ばす。

 剣に弾かれた球は、元の速度よりもだいぶ速い速度でドラゴンの方に飛んでいき、思い切りドラゴンにぶち当たった。


 球がドラゴンに当たると爆発を起こし、そのままドラゴンは倒れて動かなくなった。

 しばらくすると、巨体は光に包まれて消えていった。


「はぁ、はぁ」


 俺は、本気で動いて上がった息を整えた。

 まずいぞ。そんなに苦戦したってほどではないけど、普通に戦闘になってる。

 あの、適当に剣を振ったらバラバラとか、グーパンしたら瞬殺とか、そういう感じじゃない。

 余裕で倒せる強さではあるけど、これから倍になっていくんだよな。

 そう考えると、全然余裕がない。

 あと何週間、耐えられるんだ?

 早く俺を強化しないと。


 ギルドで報酬を受け取って魔術院にそれを置いた後、俺はガルドさんの道場へ向かった。

 魔術のことは何も分からないし、この前ミンダレイさんの日記を見て気になったことがあったからだ。

 あの時は魔術院のことばかり考えていたが、最初の方に、ガルドさん向けに道具を作るという、気になる一節があった。


 竜の強さが分かるような道具って書いてたし、あの水晶玉と同じようなものなのかもしれない。

 だとしたら、ガルドさんは戦闘力のこととか、この二倍になっていく世界のことも、いろいろ知っている可能性がある。

 何かヒントが得られるかもしれない。


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