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九週目 ②

 部屋は、いろいろな目的がある部屋のようだった。

 なんか俺が知ってる教室みたいな部屋もあるかと思えば、本が大量にあり、謎の魔術道具がごちゃごちゃと置かれている部屋もある。

 かと思ったら、巨大な魔術道具がドカンと一つ置かれている部屋があり、ベッドが並んでいる部屋まであった。


 頑丈な建物で、ずっと閉ざされていたからか、中の様子は外から見たほどは荒れていない。


「すごいわ……宝の山ね」


「魔術を始めたばかりの僕でも、ここがすごいのは分かります」


 セリアとニックが感嘆の息を漏らしながら、つぶやくように言った。

 そんなにすごいのかこれ。俺はなんか脈絡のない部屋の並びだなぁとしか思わなかったぞ。


「おばあちゃんの作った魔術院なんだから、当然よ!」


「ちなみに、どの辺がすごいんだ、これ」


「これのすごさが分からないの?まず、魔術書なんて普通はなかなかお目にかかれるものじゃないのよ?それがこれだけ大量にあるし、魔具だって、一つ一つがどれだけ価値があるか……」


 そんなにすごいの?いつもの魔術院も本が普通に置かれてるし、全然そんなこと思ったこともなかった。


「ちなみに、アルトの宮殿とどっちが金かかってる?」


「あんなのと比較になるわけがないわ!断然こっちよ」


 興奮してるからか、セリアがアルトの宮殿をぶった切った。アルトの前では言ってやるなよ。

 でも、そのおかげでここのすごさが分かった。


「すごいのは分かったけど、部屋の順番はもっと考えなかったのかな。似たような部屋がいくつもあるような気がするのに、離れてる」


「何か、それにも理論があるのかもしれませんよ」


「違うわ!」


 ニックの言葉をミルファが否定する。さすがミルファ、何かこれの意味が分かってるらしい。


「一流の魔術師は、整理整頓ができないものなのよ!」


 おい。お前が整頓苦手なの、言い訳してるだけだろ。

 でも、一流魔術師みんながそうかは知らないが、ミンダレイさんに関しては合ってそうな気がしてきた。


「でもこれじゃ、属性魔術の本を探すのも一苦労だな」


「そうだったわね。いろいろ見て回りたいけど、まずはそれだわ」


「手分けして探しましょう」


 部屋が多すぎるので、四人で分かれて調べることになった。


 俺はとりあえず、奥の方に行ってみるか。

 部屋を横目に見ながらどんどん進む。

 意外と生活空間っぽい部屋も多い。街から少し離れているし、弟子たちはここで寝泊まりしていたのかもしれない。


 なんか、頑丈なはずなのになぜか穴が開きまくっている怖い部屋とかもあったが、それ以外は割と普通だ。

 奥の方に行くと、ほかの部屋とは違って、少し小さめの部屋があった。

 中は、机と本棚がいくつかと謎の道具、あとはベッドという感じだ。

 ほかは大部屋にベッドが並んでいたし、そっちが弟子用だと考えると、ここはミンダレイさんの部屋だったのかもしれない。


 本棚があるのに、机の上に一冊だけ、割ときれいな本が置いてある。

 ちょっと気になって、開いてみた。


 中を見ると、日記というか、実験記録みたいだった。

 日付と、調合十八種検討、二種成功、といったメモ書きみたいなものが書いてあったり、俺には理解できない謎の式みたいなものが書かれていたりしている。


 ぺらぺらとめくっていると、俺にも意味が分かる、気になるページがあった。

 紙は俺が知っているような薄い紙ではないのに、少し濡れてふやけたような跡があるページだった。


ミルドが最近、魔術に興味を示すようになった。

私が少し教えると、ずっと夢中で魔術で遊んでいる。

親馬鹿なのかもしれないが、のみ込みもすごく良い。


私はいつまでも、竜を倒し続けることはできない。

ミルドの時代は、この子たちが戦わなくてはいけないんだ。

ミルドに教えるついでに、多くの子供たちが魔術を学べる魔術院を作ろう。

そうしたら、ミルドももっと楽しく、魔術が学べるはずだ。


竜退治の方は、ガルドたちに任せておこう。

どうしても退治できない時だけ、私が行けばいい。

毎回私が出ていっても、ガルドたちの手柄を奪うだけだ。


どういう時に私を呼べばいいか、竜の強さがガルドたちにも分かるような、そんな道具も作る必要がありそうだ。


 ミルドっていうのは、多分ミンダレイさんの子供、ミルファの親のことだよな。

 魔術を嫌ってるってミルファは言ってたけど、これを見る感じ、そんなことはなさそうだ。

 ちょっと日記を盗み見るようで気が引けるが、なぜ息子が継がずに、魔術院が寂れたのかは気になる。

 続きが書いていないか、ページをめくる。


 魔術院を作るまでのお金の話とか、そのあたりも書いてあったが、そこは飛ばす。

 しばらくページをめくると、また息子についての記述を見つけた。


やっぱり私の目に狂いはなかった。

ミルドは、どう見ても魔術の才能がある。私が同じくらいの年の時よりも優秀だ。

私は一人でやっていたけれど、魔術院のほかの弟子と一緒にできる環境も良いのかもしれない。


ほかの子たちも、優秀な子がたくさんいる。

この子たちなら、次の代は大丈夫だ。必ず、どんな竜も退治できるようになる。

そのためにももっともっと魔術院を大きくして、たくさんの弟子を集めよう。

多くの人の知恵が集まれば、より魔術も発展するだろう。

その分ミルドも強くなり、竜退治の時にも役に立つ。


ミルドにも、もっともっといろいろな魔術を教えよう。

将来のこの世界は、あの子にかかってるのだから。


 息子は、かなりの才能の持ち主だったらしい。

 ミンダレイさん以上って、相当だな。

 それに、やっぱりこの時代も竜がずっと出ていたんだな。

 才能がある息子に、自分の後を継いで竜退治もさせようと思っていたようだ。

 あんな化け物みたいな竜が出てくる世界だ。才能があったら期待するのも当然か。

 倒せる人がいなかったら、何週間もかけて倒さないといけないんだもんな。


 気になってさらにページをめくる。


ミルドが最近、つまらない魔術に凝っている。

噂話で聞くと、女の子にプレゼントするための薬を作っているらしい。

何の薬か知らないが、あの子は自分の立場を分かっているのだろうか。

竜退治に使わない魔術にうつつを抜かすなんて。


 うんうん。分かるぞ、ミンダレイさん。

 ミルファのやつ、俺が戦闘力を上げようと頑張ってるのに変な薬作ってやがったからな。

 ほんと危機感がないやつは困る。


 しばらくは、メモ書きのようなページばかりだった。


 最後の方に、また続きがあった。


ミルドが突然、杖を折って、もう魔術なんてやらないと言った。

原因は、私だ。

あの子は、僕は竜退治の道具じゃない、竜退治のための魔術なんて、もう嫌だと言っていた。


ミルドの言う通りだ。

ミルドのことは何も考えずに、世界のため、竜退治のためと言って無理やり戦闘の魔術を教え続けた。

あの子はまだ、十八なのに。

私はその頃、ただ好きで魔術をやっていたし、最初の竜を倒したのも、魔術の腕試しをしたかったからだ。

それなのに。


最初はあの子が魔術を楽しく学べるように、この魔術院を作ったのに。

日記を読み返すまで、そんなことも忘れていた。

なんて愚かなんだろう。


こんな私に、人に魔術を教える資格なんてない。もう弟子を取るのはやめよう。

後進の育成こそ、ガルドたちに任せよう。


私はまだまだ戦える。

ミルドにやらせるなんて考えずに、私がずっと竜退治を続ければ良かったんだ。


 ミンダレイさんが弟子を取るのをやめた理由が分かった。

 息子に竜退治の期待をかけすぎて、息子は魔術が嫌になったらしい。

 それで、魔術が嫌いになったら帰ってきてもいいと、ずっと手紙に書いていたのか。


 こんな世界で、竜退治の力があると、期待をかけてしまう気持ちも分かるから、難しいな。

 さっき俺も、完全にミンダレイさんに同意してたし。


 この理由は、ミルファが自分で見つけるまでは、俺からは言わない方が良さそうだ。

 本は元の位置に戻した。


 その後は、属性魔術の本を探した。

 街から遠いからあまり探す時間が取れないのと、魔術の分からない俺以外はよく脱線するせいで、数日かけてやっと見つけた。


 セリアとニックとも別れ、ミルファと街の方の魔術院に戻っていた。


「あ、そういえば気になってたんだけど」


「何?」


「お前、反転作用は基礎だって言ってたのに、戦闘力即倍薬のあれ、明らかに反転作用じゃないか?」


「う……!そうよ。よく分かったわね」


「じゃああれは基礎ができてない?」


「基礎だから簡単ってわけじゃないの!効果が強くなるほど、抑えるのは難しいんだから!あの薬は一日戦闘力が倍になるっていう効果が強すぎて、どうしても抑えられなかったの!」


 なるほど。何でも簡単にはうまくいかないものだな。

 ということは、もっと簡単な効果にすればできるってことなのかもしれない。


「なあ、例えば、効果が一日じゃなくて、一時間とか、もっと短かったらできるのか?ドラゴンと戦うのに、一日は必要ないだろ」


 俺が思いつきで口にすると、ミルファが衝撃を受けたような顔をしている。


「あなた、実は魔術の才能があるんじゃない?確かにそうよ。それならできるかもしれないわ!」


 そう言うと、ミルファが急にごちゃごちゃやり始めた。

 そこで、この前見たミンダレイさんの日記を思い出す。

 戦闘に役立つものを作ってほしいと前は思っていたけど、それでミルファまで魔術が嫌いになるのは、ミンダレイさんも望んでいないだろう。


「なあ、ミルファ。別に無理して戦闘力即倍薬をやらなくてもいいぞ」


「無理って何よ無理って!天才の私ができないわけないでしょ!絶対反転作用を抑えた薬にしてみせるわ!!」


 なんか、火に油を注いだような……。

 本人がやる気満々みたいだから、大丈夫だろう。きっと。


【九週目の戦績】

ルインの戦闘力:1,000,164

世界の平均戦闘力:256

現在の称号:伝説レジェンド最強ダークネスアルティメットゴッドハイパーインフィニティブレイブ勇者

※ミルファが戦闘力即倍薬に夢中で称号変更なし


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