表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
14/28

九週目

「ミルファちゃん、炎の剣をイメージするようにしてやるっていうのは、どうかしら」


「うーん。それはあまりうまくいきそうにないわ。属性魔法は、炎自体を呼び出すのではなくて、属性を付与するものなの。炎は、付与された属性から出てるだけで、魔術で炎が出てるわけではないわ」


 セリアとミルファが、よく分からない話をしながら唸っている。

 あれから、魔術の特訓は続いていた。

 反転作用の制御方法は少しずつつかめてきたようで、ニックの成功確率は上がっていた。

 しかし、セリアの反属性作用の方がうまくいかないらしい。

 それで、二人でいろいろ話しては唸っている。


「なあ、あんまりうまくいってないのか?」


「別にうまくいってないわけじゃないわよ!魔術の研究は、こうしていろいろ考えながら試行錯誤していくものなの。時間がかかるのは仕方ないわ」


「一人一人違う、みたいなこと前に言ってたけど、誰かほかにできる人の話を聞くとかできないのか?」


「そりゃあ、同じものを使える人の感覚を教えてもらえたら、進みは良くなるわ。でも、そんな人、私は知らないもの」


 なるほど。魔術って、派手なものだと勝手に思っていたけど、なんか研究は地味なものらしい。


「使える人って言えば、ミンダレイさんは使えなかったのか?」


「当然使えたわよ。だから、何か残ってないかと思って探してみたけど、属性魔法について書かれたものは何も見つからなかったの!」


 なんか、いつもより本が散らばってると思ってたら、そういうことだったか。

 でも、使えたのにこの魔術院にないっていうのはちょっと気になる。

 ミンダレイさんにとっては、大したことのない魔術だったってことなのかな。


 ミンダレイさんは、すごい魔術師だったということは分かったが、いろいろと謎が多い。

 知り合いらしいガルドさんのところへ行って聞いてみるか。

 というか俺、魔術の特訓中、基本的に何もすることないし。


 二週間ぶりにガルド流武術道場の本店に来た。

 ちゃんと看板は前の渋い看板に戻っていた。

 潰れてはいないようで安心だ。


 扉を叩くと、ガルドさんではなくて、また若い男が出てきた。

 弟子もちゃんと残っているらしい。これなら大丈夫だろう。


「あ、ガルドさんに会いに来たんだけど」


「ああ、魔術院の。いいけど、名前はもう勘弁してくれよ」


 ちょっと嫌そうな顔をされてしまった。

 確かに、ここに来てる人は師範代クラスって考えると、自分の道場を持っているんだろう。

 ガルドさんの指示とはいえ、あの名前をつけられて、かなり迷惑をかけたに違いない。

 嫌がられても仕方ないが、今回は別に名前を変えようって話じゃない。許してくれ。


「君か。一体今日はどうしたんだ?」


 ガルドさんのところに通されると、ガルドさんもちょっと警戒しているような感じだ。


「今日は別に頼み事じゃなくて、ただミンダレイさんの話を聞きたくて」


 そう言うと、一気に警戒の色が解けて、優しいおじいちゃんモードになった。


「それなら、私が知っていることなら何でも話そう」


「ミンダレイさんが昔使っていた魔術で、属性魔法のことを知りたいんだけど」


「剣に炎をつけたりするやつかい?私もかけてもらったことがあるよ。元の剣の何倍もの大きさの炎の剣になって、びっくりしたものだ」


 なんか、同じ種類の魔術を使っている気がしない。セリアのやつは、何回かたまたま成功したのを見たけど、普通に炎をまとってる、くらいだった。

 やっぱりミンダレイさんは規格外だったらしい。


「多分それです。それを今ミルファがやろうとしているんだけど、記録がなくて苦戦してるみたいで」


「私は使い方は分からないな。あの当時使っていた魔術なら、あの広い魔術院のどこかにはありそうなものだが」


「広い魔術院?」


 いつもミルファといる魔術院は、確かにミルファ一人で住むには広いが、そこまで広いというわけではない。

 部屋が数部屋あるが、ごちゃごちゃといろいろな物や本が置いてあって、寝室とかも含めたらかなり狭く感じる。


「ん?ミンダレイ魔術院にいるんだろう?あの、王都から出て少し離れたところにある、あの大きな」


 なんか話がかみ合っていないような気がする。俺とミルファが住んでいる魔術院は、王都の街の中にあるし。


「もしかして、昔と場所が違うとか?」


「今は違うのかい?確かにあそこに弟子も取らずにいたら広すぎるから、弟子がいなくなってからは移動したのかもしれない」


 なるほど。だったら、昔の魔術院に行けば、記録があるかもしれないな。


「昔の場所、分かりますか?」


「ああ、地図に書いてあげよう。昔は弟子をたくさん取っていて、広いのに賑やかだった。一度その頃に訪ねていったら、魔術師でもない私が宣伝に使われていて参ったよ」


「宣伝に?どういうこと?」


「私もいまだに分からんよ。確かにミンダレイさんにはいろいろ教わったし、頭が上がらなかったが、魔術師ではないのにな」


 そう言ってガルドさんは笑っていた。宣伝の話はよく分からなかったが、ありがたく地図を受け取って、武術道場を後にした。


「おい、ミルファ。いい話があるぞ」


 魔術院に戻ると、二人は唸り続けて疲れたのか、ぐったりしている。

 ニックが二人にお茶を入れてあげている。本当に弟子みたいだ。


「何よ?」


 ミルファの返事にいつもの勢いがあまりない。


「お前、ミンダレイさんの昔の魔術院って行ったことあるか?」


「昔の?ここ以外にも、魔術院があるの?」


「ああ、ガルドさんに聞いたら、昔は王都の外に広いのがあったらしい」


「本当!?知らなかったわ!」


「昔、ミンダレイさんが使っていた魔術の記録は、そっちにあるかもしれないってわけね」


「そういうことだ。属性魔法も、もしかしたらあるかもしれない」


「ルイン!よくやったわ!早速行くわよ!」


 ミルファは一気に元気を取り戻したようだ。

 すぐに支度をして、四人で古い魔術院に向かった。


 ガルドさんが書いてくれた地図に従って、魔術院に着いた。


 確かに、めちゃくちゃ広かった。ミンダレイ魔術院と書かれた門があり、その向こうに大きな庭があり、庭の向こうにたくさんの建物が建っている。

 ずっと放置されていたみたいで、建物は石造りの頑丈そうな建物だが、ツタが絡まっており、庭は雑草だらけだ。

 門は錆だらけで、ミンダレイ魔術院と書かれた札も、錆びていてギリギリ読める程度だった。

 噴水とか花壇とかがないし、建物の見た目が宮殿っぽくないけど、広さだけならうらやま宮殿よりもずっと広い。

 宮殿というより、学校という感じだ。それも大学。

 元の世界なら、古いヨーロッパの大学にありそうだなと思うような、趣のある建物だ。

 まあ、ヨーロッパの大学とか見たことないから、勝手に雰囲気で言ってるだけだけど。

 よく考えたら、弟子を大勢取っていたというんだから、大学みたいな広さが必要になるわけか。


「門が閉じてますが、入ってもいいんでしょうか?」


 真面目なニックが聞いてきた。


「もう明らかに放置されてるし、というか、ミンダレイさんの魔術院なら、今はミルファのものなんじゃ?だったらミルファがいいと言えば大丈夫だ」


 不真面目な俺が適当に答えた。


「そうね!今は私の魔術院なんだから、入っていいに決まってるわ!ルイン、門を壊して!」


 オーナー(多分)の許可も出たことだし、門を壊して中に入った。


 建物の近くに来ると、無理やり引きちぎられたような垂れ幕が落ちているのが見えた。

 書いてある文字が見える。


 魔術師ミンダレイの直接指導

 あなたの知識が、毎週二倍広がっていく。

 勇者ガルドを輩出!


 あの道場の予備校風垂れ幕、ミンダレイさんが発祥かよ。

 宣伝に使われて参ったって言ってたの、これか。自分も真似してるじゃねぇか。


 建物の入り口は、特に鍵がかかっておらず、そのまま普通に開くことができた。

 入り口はホールみたいになっていて、よく分からない魔術に使うものが置いてあるだけで、がらんとしていた。

 中には廊下が続き、左右に部屋がたくさんあった。

 これだけあれば、何かヒントが見つかるだろう。俺たちは部屋の中を見て回ることにした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ