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光の距離  作者: 鈴音サラ
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5/12

5かばう

 先日の女子先輩達の襲来から三日がすぎた。

 また同じことが起きるんじゃないかと、怜と二人で落ち着きなく過ごした。幸い、特に何もなかったが。

 ただ警戒しだしたからか、怜のことを遠巻きに見ている視線があることに気がついた。

 怜もこのことに気づいているのだろうか?ふと、気になって怜にも確認してみる。


「なぁ、お前ってなんかいつも見られてない?」


 怜は体を強張らせると、辺りを見回した。


「そうなのかな……?」


 今この場の話ではないので、そんな視線はもちろんない。次は体育で、みんなせわしなさそうに準備をはじめている。


「ごめんごめん!俺の気のせいだわ」


 怜があまりにも不安そうにするのでこの話はやめにする。それより俺たちも、早く着替えて準備しなければいけない。


「急ごうぜ」


 俺の言葉に怜はうなずくと着替えはじめたので、俺も机に置いた体操着を引っ掴み、さっさと袖を通した。

 体育は今バスケをやっている。最初は柔軟、次にドリブルやシュートの練習だ。

 俺は運動神経に自信があるので、バスケだろうと結構シュート率は高い。華麗にボールが入ると、俺は怜にドヤ顔をした。それに対して、面白くなさそうに不貞腐れた顔をする。

 続いて怜もドリブルをするが、どうも体の動きが固くぎこちない。ボールをシュートする時も変な間をあけてから投げた。そして大幅に逸れて落ちる。


「うーん……」


 もう何回も練習しているのに、一向に上達している感じがしない。どう声をかけていいのか分からず、怜はかなりの運動音痴なんだと実感した。

 今日はこの後ミニ試合をすることになっているのだが……。


 

 試合の結果はというと、俺のいたチームが勝ち、怜のいたチームが負けた。 

 試合自体はなかなか白熱して、両チーム最後まで付かず離れず同点で拮抗。相手チームにはバスケ部が二人もいたのにかなりの健闘ぶりだった。ところが試合終了間際、なんと怜にボールが渡った場面でミスをしてしまい、俺のチームが1点差で勝利。

 俺は勝てて嬉しかったのだが、怜はそれが相当堪えたらしく終わってから顔色が悪かった。

 教室に戻る道すがら、肩を落とす怜を元気づける。

 

「まあ、今日は仕方ないって。また練習頑張ろうぜ」


 なんとか慰めるが怜は俯いたままだ。俺は困って頭を掻いた。その時、横から声をかけられた。


「北河原のせいで負けたんだよなー」

「ホント使えねー」


 バスケ部の西岡と高橋の二人だった。


「ちょっと女子にモテるからって調子乗ってんじゃないの?」


 西岡がそういうと、高橋がゲラゲラ笑いだす。

 突然の暴言に、頭に血が上るのがわかった。


「上から目線で偉そうに」


 どいつもこいつも、人の事勝手に評価しやがって腹が立つ。俺は手を握りしめた。


「お前らバスケ部なんだから、初心者のせいにすんなよ」


 俺は我慢できずに強めに言い返した。


「はあ?加藤は勝ったくせに何いってんだ」


 西岡も眉間に皺を寄せ、勢いよく俺に詰め寄ってきた。俺も負けずに睨み返す。

 それに気づいた怜はさすがに慌てて、聞いたことのない大きな声を出した。


「陽介黙って!西岡くんも高橋くんも本当にごめん、今度から気をつけるから、怒らないで」


 さすがに怜の大声にみんな驚いて動きを止めたが、西岡はそれでもまだ文句を言う。


「次足引っ張たら許さねーからな」

「うん、ごめんね」


 必死に謝る怜を見て、余計なことをしたと落ち込む。俺がムキにならなければ、怜は謝らずに済んだのに。

 急に黙って動かなくなった俺が心配になったのか、怜が覗き込んできた。


「陽介もごめん…僕、怒鳴ったりして」

「いやいや、怜は悪くないって。俺が悪いんだからこっちこそごめんな」


 お互い謝りあったが、気まずい空気になって教室に戻る間も無言になってしまった。

 帰り際に俺が「また明日」と言うと、怜も「うん」と返し何か言いたそうな雰囲気だったが、結局その日はそのまま話さないで別れた。



 

 平穏な放課後がやってきた。先日は怜が女子に囲まれて大変だったし今日は西岡に絡まれるし、落ち着かない毎日が続いている。

 俺がそんなことを考えていると、ジャージを着た西岡と高橋が歩いてきた。グラウンドの俺には気づかずだべっている。


「あいつは前から女子とばっかつるんでてウザイんだよ」

「西岡ってほんと北河原嫌いだよね」


 二人は怜への文句をネタにして愚痴大会をしている。怜は前から西岡となにかあったのかもしれない。

 俺は適当に話を聞き流すと、筋トレペアの吉田に最近のクラスのことを聞いてみた。


「なぁ、怜って浮いてる?」

「北河原?俺は気にならないけど、西岡はなんか裏で言ってるっぽいよね」

「だな」

「北河原は女子人気があるから気に食わないんじゃない?」

「西岡は女子にもてたいのか?」

「さあ?」


 吉田は軽く首を傾ける。

 確かに、怜が同じ学校から来た女子とはたまに話しているのを見る。でも、別にうちのクラスでモテてる感じは全くない。実際はこの前の先輩達みたいに、周りから色々言われているのだろうか。とはいえ、怜にしてあげられることは、結局俺には思い浮かばなかった。

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