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光の距離  作者: 鈴音サラ
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6/12

6美化委員

 翌日、怜は一見普通に見えた。

 挨拶も変わらず返してくれるし、雑談にものってくれる。ただそれが本当に昨日の続きを引きずっていないからなのか、そうしているだけなのか、俺には分からなかった。 

 いつも通り一緒に昼を食べる。弁当を食べるのに集中している怜に、ゴールデンウィークの予定を聞いてみた。


「もうすぐ休みだな~怜んちはどこか行くの?」

「北海道の保養所に行く予定だよ」


 弁当のハンバーグを割りながら答えた。


「まじかよ、すごいな」

「陽介の方は?」

「うちは兄ちゃん受験でピリピリしてるから行かないなぁ」


 去年も姉ちゃんが受験だったから、どこにも行かなかった。俺も旅行行きたいな。


「そっか。帰ってきたら撮ってきた写真見てよ」

「おう、俺もなんか撮りに出かけてみようかな」


 一人でちょっと遠出してみるのはありかもしれない。俺ももう大人みたいなもんだし。

 学校での面倒くさいできごとが忘れられる休みが楽しみだ。俺は休みの予定が決まり満足したので、止めていた手を動かしおかずを食べ始める。

 本当に忘れられるかどうかは、考えないことにした。


 

 

 気がつけばジャケット着なくても平気な日が増えてきた。じんわりと暑く、汗をかきながら俺たち美化委員は、花壇の手入れをしていた。ゴールデンウィーク中にそこかしこ雑草が伸びてきており、休み明けの仕事は総出だ。


「結構足に来ますね」


 俺は近くにいる津田先輩に話しかけた。


「だから筋トレになるんだけどね~」


 素早い動きでどんどん引き抜いて行く。俺も負けじと素早く取っては投げた。

 雑草を抜きながら、向かいの花壇の草取りをしている怜と中村先輩を眺める。相性悪そうに見えて、二人とも普通に会話をしながら作業をしていた。

 おまけに、怜の代わりに散らかった雑草を集めて、袋に入れてやってるし。


「中村部長って、怜に甘いと思いません?」


 俺の言葉を聞くと、津田先輩も向かいの二人を見た。 中村先輩がなにか言ったのか、怜が笑いながらうなずいている。

 特に津田先輩は何も感じないようで、すぐに視線を戻してまた草をむしり始めた。


「中村って下に小学生の弟いるから、世話したくなるんじゃない?」


 そういうものなのか?俺は下に兄弟はいないからいまいちよく分からない。


「北河原くんって見てるとなんか心配になるよね」

「それは確かに」


 俺と津田先輩は顔を見合わせた。



 

 引き抜いて散らばった雑草達をほうきと塵取りで集めていく。怜はゴミ袋を縛ってくれている。


「いたっ」


 怜が突然声を上げた。


「どした?」


 俺が覗き込むと、怜の軍手から血が滲んでいた。ゴミ袋を見ると小枝がいくつか突き出ている。


「うわあ!なんか刺さったのか?」

「多分……」


 血を見て怯んでしまう。それを尻目に中村部長が「先生、怪我したんで保健室いきます!」と声を上げた。


「北河原保健室わかる?分からないなら一緒にきて」

「ありがとうございます」


 怜はすごすごと中村部長について行っていく。まさか怪我するなんてなぁ。


「硬いの混じってるから加藤も注意してね」


 津田先輩がアドバイスをくれたが、最初から言っておいてほしかった。



 

 怜たちが戻ってくる前に、委員会の方は解散になった。だいぶ血が出ていたし、怜はそのまま帰ったのだろうか。中村部長が戻ってきたら様子を聞きたかったのだが、なかなか帰って来ない。

 校舎の外周を走り込みしていると、裏門の近くに部長がいるのが見えた。女の子と話していたようだか、軽く手を上げて別れる。俺が立ち止まっていたので、部長と目があった。


「何やってんだ?走り込みはどうした?」

「すみません。あの、怜って大丈夫でした?」


 今聞くことではないとわかっていたが、どうしても気になり中村部長に確認をしてみる。


「ああ、出血は多かったけど傷は浅いって」

「良かった」

「お前はビビりすぎ」


 先輩は俺の腹にパンチを食らわせた。冗談なのにかなり痛い。

 

「北河原はなんか抜けてるんだよなぁ。可愛いから許されるんだろうけど」


 少し呆れたような、困った感じで部長は呟いた。意外な風に見ていたんだな。もっと普通に可愛がってるのだとばかり思っていた。


「先輩もそう思うんすか?」

「そりゃあまあ……話してると女子といるみたいな気分になるし」


 女子……また変な括りにされている。とはいえ、西岡みたいに攻撃してくるよりはいいよな。多分、その方が楽だろう。


「あ、あれからうるさいヤツらきた?」


 思いだしたかのように、以前来た女子軍の話題を振られる。


「ないです。ただ……」


 西岡の件がよぎった。


「なんかあったのか?」

「その……部長の言うように、みんなが見た目で許してくれればいいんすけどね」


 部長は俺の言葉に瞬きを繰り返し顎をさすった。


「同じクラスだったらウザイかもなぁ。自分より下だから可愛いで許せるみたいな」


 部長の言葉に納得する。俺からするとそのズレた感じが面白いんだけど、同い年だと嫌な奴もいるよな。怜の抱えている問題は根深そうだ。


「いっけね」


 部長が突然はっとする。


「長話してる場合じゃないぞ、早く戻れ!」


 部長は慌てて急ぎ走り出した。


「はい!」 


 グラウンドに戻る部長に煽られて、俺も後ろを走り出した。これは後でもっと怒られるかもな。

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