弐話_お母様!! 何で私がそんなー!!
*蔵山邸・本宅、扇の間
「未央奈さん? あなた、蔵山のおじい様。もう身罷られて随分になりますが……。あの、陶窯さまの薫陶を受けたはずですよね?」
ぬむむ!! お母様呼び出された、わたしこと蔵山未央奈!! 20歳! 女子大生!!
「はい、確かに。わたしはおじい様を尊崇して居りましたし、今でもそうです」
「そうですね、当然です。資産家の名そのままの姓を持つ我が蔵山の。子女となれば当然のことですよ」
「はい」
「では問いますよ? 未央奈さん。富の積み方とは何ですか?」
「経営、そして運用」
「ふん。おバカな娘」
「えっ?」
「順番が逆です。運用の出来ない経営はあり得ません」
「……はい。申し訳ございません」
「謝るのは安さです。侘びは学びで為しなさい」
「はい!」
「では続けて問います。運用とは何ですか?」
「効率です」
「はい、55点」
「ええ?! そんなに駄目ですか?」
「いえ、上出来ですよ」
「上出来で55点という事なのですか?」
「はい。其処に至らぬものがほとんどですから」
「……欲を張ってもいいですか?」
「もちろん」
「わたくしは、私は。試験の類で80点を下回る成績を出したことが無いのです」
「でしょうね、筆記レベルでは」
「雪辱の機会を」
「未央奈さん? 再試験と云う物には。受験料が必要です。学びのおいての通貨はマネーではありません。何かわかりますか?」
「それはわかります。努力と勤勉、それに節制です」
「はい、よろしい。過不足ありません」
「……その参つを表す機会を。お与え頂けますか? お母様」
「よいですが……。格好のいいものではないですよ?」
「なりふりなど叩き捨てます」
「ウフフ。美しい向学心ですね、では……」
さて、お母さまは。私に一封の書簡を与えた。なんだろうこれ?
*ステーキハウスチェーン【くらやま】布留辺上条店。その前の交差点
あ!! 晴彦星人のメタリックブルーのスープラ発見!! ディスり甲斐があるイケメン野郎だ!! 成宮尊発進するぜ!!
「いくぞ!! デコチャリ『まつかぜ』!! 晴彦のスープラにハロゲンビームのバッシングぶち込んでやる!!」
「おまえは何をしているんだよ!! 尊ぉ!!」
どぶぐはっ!! 俺の後頭部に!! なんかたぶんセカンドバックか何かで殴られた衝撃がぁ!!
「おまええええええ?」
「おう! 焔ちゃんだぞ! 亜浦焔ちゃんだああああ!!」
「なぜ殴ったんだよお!?」
「尊が中学生みたいな挙動不審してたから」
なんていうかさ、焔って天然記念物。平成コギャルスタイルのリファインファッションで街うろつく変な女。挙動不審はお前の方だろ!!
「焔さ、なんでおまえがここに湧くんだよ? 下銀町方面だろ? お前の生活圏は!!」
「きょうはバスケの試合の帰りだよん」
「そのロング金髪でバスケしとんのかお前わあ?!」
「おうす! 三つ編みにしてやっているよ!!」
「レディース婦警かよおまえは!!」
「うぷぷぷぷー!!」
とか! 焔のセクシーゴリラと格闘してると!!
信号が青になって、スープラが発信!! しない?! 路肩に移動して、停まったぞ?
「焔、そのオタクに構うと。オタッキンキンが感染するぞ? しかも90年代のヤバいのがさ。あははははは!! よう、尊! 久しぶりだね! 何で電話無視するんよ?」
「軟体感情生物の電話に出るとオタクスピリッツが鈍るから」
「へえ? ステーキ食べたくないの?」
「なにい?!」
「僕さ、呼び出し食ったんだよ。このステーキハウス【くらやま】にね。まあ、おうち絡み関係だけど。焔もいるし、一緒に入るか?」
おわう!! むかつきヒート!! 晴彦は何でいつもこんなに余裕あんだよ!!
「おう! 焔ちゃんはたべるぞ!! 青ジャケットの晴彦野郎!!」
あ! コギャルに抜け駆けされた!! 尊くんだって!! 【くらやま】のロブスター&ステーキセット4800円は喰いたいぞー!!
*ステーキハウス【くらやま】店内
「お? あれ誰だ? スゲエお嬢様オーラ出てる。気がきつそうだけどな!!」
奥のVIPルームに晴彦に連れていかれて。そこにいた女の子を見て言った俺の頭に、晴彦がチョップ落としやがった! いてえーな!!
「言葉に気を付けないと危ないぞ、尊。あの子が今日の僕の待ち合わせの相手で。この布留辺市のナンバーワン資本家一族の、蔵山家の令嬢、未央奈さんだ」
「?!! えげ?! このまえ、うちの前の山道カーブにつけられたカーブミラーのポールに寄贈者として書いてあった、あの蔵山家だとお?」
「……なんだその地味なたとえ話は。だが、まあそうだ」
びっくりするぜ尊くんは!! なんということかー!!
2話 END




